トヨタ210型クラウンアスリートをドレスアップ
現行モデルをドレスアップするのは難しい。前例がないし、社外パーツも少ない。だからこそ、誰よりも先にドレスアップができればイベントなどで目立てることは間違いない。それを味わえるのが、現行型モデルをドレスアップする魅力だろう。
現行モデルであるこのトヨタ210型クラウン アスリートは、躊躇なくフェンダーを切り刻み、純正でも質感が高い内装を総張り替えが行われている。
現行モデルをドレスアップする。それはなかなか簡単にできることではない。
その理由は、まずはクルマを買うことから始めなければならないのだが、新車で買うにしても車輌価格は高い。中古車市場における現行車の流通量は少なく、価格が高いのが一般的だ。
さらにアフターパーツも、他のクルマと比べたら少ない。それゆえ難易度は高いかもしれないが、もしドレスアップのお手本になるクルマを作ることができたらどうか。もしかしたら現在、そして未来の同車種のオーナーに、「こんなにカッコ良くなるんだ!」と希望を与えることができるはず。
そんな思いを胸に秘め、細部までイジり倒したトヨタ30型セルシオ後期を手放して、現行型の210型クラウンアスリートに乗り換えたのが杉本さんだ。
「まだそんなに多くないですが、210系(クラウンアスリート)に乗ってイベントに出る若い人もいる。だからその先駆者になりたいというか、誰よりも先にイジりたかった。若い人たちに現行車をイジるステータス性を伝え、それで台数がもっと増えたら、セダン界がさらに盛り上がると思ったんです」。
既存のクラウンのイメージを打ち破った独創的なグリル形状に惚れ、迷うことなく210アスリートを選択。しかも中古ではなく、直接ディーラーに出向いて新車買い。オプションはサンルーフのみ、フロアマットなど必要ない装備はすべて省いた。
「最初からコテコテにイジることを想定していたので、今後ディーラーに出入りできないことは覚悟の上。後で交換したり、故障したら修理に困る装備は付けませんでした」と杉本さんは語る。
セダン業界の発展のため、この210クラウンで時代を動かしたい
もちろんその仕様はただの序章に過ぎず、9月にはオーバーフェンダーを製作するべく純正フェンダーを切り刻んでしまう。ツメを加工する程度ならまだ許せた。でもカッターが入り、フェンダーが少しずつめくれ上がっていくクラウンを見て、さすがに戸惑いを隠すことはできなかったそうだ。
「自分で『切ってくれ』と言っておきながら、少し複雑な気持ちになりました。でも現行車で自分のスタイルを確立したかったので、まずは切らなきゃ始まらなかった」。
理想の形状は、新しめの車種では珍しいクッキリ系。ナチュラルに作る人が多いから、その逆を行く。定番のミミ(フェンダーの縁の部分)もあえて作らなかった。
「ツライチはミミの厚みで多少調整ができる。でも僕は、あえてごまかしが効かないミミなしで作りました。カタチとしては賛否両論ありますが、インパクトは出せたと思います」。
フェンダーを製作したことで緊張の糸がほどけたのか、そこからは勢いが加速。艶やかな純正ブラックのボディはオリジナルのミッドナイトパープルで塗り直し、ライト&テールもフル加工。わずか半年で、ベースとなるスタイルを完成させた。
「自分らしくいきたいから、切らないと始まらない」
外装の製作と同時進行で、内装の張り替えにも挑戦。ボディメイクはオーナーが営むショップが手がけたが、内装はその道のスペシャリストであるエルティードに依頼した。
「部分的に張り替えて純正の良さを残すことも考えましたが、内装でも自分らしさを主張したかったので、妥協せずフルで張り替えました」。
メインカラーはボディと同じ紫、そして生地はレザーだけでなくアルカンターラも使うこと。そう指定した以外は、すべてエルティードMAYUMIサンのセンスに託した。
「数々のクルマの内装に携わっているお店なので、そこはプロに任せたい。もちろん仕上がりは大満足。クラウンが持つ高級感を残したまま、ヤンチャな雰囲気を出せました」。
納車されて1年少々。ハイペースで進化を遂げてきたが、これで終わりではない。旬の車種だけに、むしろ戦いは始まったばかりである。
(VIP STYLE編集部)