最先端を取り入れることは、目立つための近道。その一方で、流行に左右されず自分好みの仕様を追求する人も多い。小林クンも、その1人である。日産Y33型グロリアを購入したばかりの頃に人気だった仕様を目指し、独自の解釈で上品かつ重厚感溢れるフォルムを作り上げた。彼が描く「王道」は、見れば見るほど味わい深い。
諸説あるにせよ、「VIP」の名を冠したドレスアップ雑誌が創刊した年を起点とすれば、VIPというジャンルがこの世に誕生して20年が経とうとしている。その長い歴史の中で、様々なイジり方が生まれた。シンプルやハデ、ユーロにスポーツなど、目まぐるしく変わるスタイル。高級セダンをベースにしたドレスアップは、この20年で様々なアプローチがあることを実証できたと言えよう。
では、「王道」と呼ばれるスタイルとは一体何か。人によって価値観が異なると思うので明言は避けるが、Y33型グロリアに乗る小林クンの考えを聞くと、ひとつの答えが見えてくる。
「僕が約7年前に33グロ(Y33型グロリア)を購入し、VIPスタイルを読み始めた時に誌面で見た数多くのユーザーカー。その時に流行っていた仕様が僕にとって『王道』のスタイルであり、今でもカッコいいと思っています」。
恐らく誰もが、VIPに興味を持ち始めた頃の仕様に強く影響を受けているはず。だから「王道」は、世代によって異なるのではないだろうか。ただ小林クンにとっての王道は、スポーティ仕様が流行る前に一世を風靡した、シンプルさも残ったワイド&ロースタイル。その前にブレイクした純正然のシンプル仕様では物足りなくなったユーザーたちが広め、浸透していったスタイルである。
「車高は低く、オバフェンに深リムのホイールをツラで合わせ、でもゴチャゴチャしていない。誰が見てもVIPと思える仕様が理想です」。
流行りは追わず、自分の好きな路線を徹底的に突き詰める意向だ。
ワイド&ロー、それでいてシンプル
自分の信念を曲げずに高みを目指す
昔から過激なワザは避け、キレイ目にイジっていた33グロ。それでも歳を重ねるごとに好みも少しずつ変わっていき、よりシンプルなスタイリングを求めるようになった。
「後付け感のあるパーツを外したり、カタチを修正したり、その都度バランスを考えて煮詰め直しています」。
まず最新作のフロントバンパーは、エイムゲインとKブレイク34セドグロ用のニコイチ。オーナーにとって、Kブレイクは王道仕様を作る上で欠かせないパーツメーカーだ。
「Kブレイクは僕がセダンに乗り始めた時からすでに人気で、その頃多く見かけたのがコンプリートのエアロ。当時の雰囲気を再現したくて、コンプリートを選びました」。
ちなみに以前のバンパーは、同社のVラグ32セドグロ用をニコイチしたもの。こちらの方がシンプルだが、33グロに乗り始めた頃の時代背景を優先した。好みに合わせて付け替えできるように、そのVラグニコイチバンパーは今も持っている。
また純正意識で滑らかに膨らませたオバフェンでワイド感を与え、緊迫感漂う四輪ツラで疾走する迫力の足元メイクは小林33グロのトレードマーク。今回は自慢のツラやキャンバーを極力変えず、ホイールをパナスポーツG7に変更。ひと昔前にセダン界で注目を集めた逸品だ。
「鍛造で高価だから、履いている人が少ない。この仕様に履かせたら、絶対にカッコいいと思いました」。
「気に入っている仕様を変えてまで
イベントで目立とうとは思わない」
これまで何度もリメイクを重ねているが、自分が満足している部分は例え誰がどう言おうとも絶対変えない。それもオーナーのポリシー。
「イベントで勝つには、以前の印象を大幅に変えないといけないという先入観を持つ人も多いと思う。でも僕は、気に入っている仕様を変えてまで目立とうとは思わないです」。
例えばボディカラー。渋さを生み出し、ラインをクッキリと浮かび上がらせる6コートのオリジナルシルバーは、5年前に塗ってから変えていない。フェンダーも納得が行くカタチに仕上がったので、それ以上は求めない。また誰もが触りたくなるボンネットやドアノブ、ドアミラーなどはあえて手を加えず、純正の良さを残すことも密かなこだわり。
「自分のクルマの良い所はそのまま生かし、しばらく乗ってみて気付いた部分だけを変える。これからもそのスタンスで行くつもりです」。
やみくもに仕様変更しない、すなわち好きなスタイルを貫き通しているから飽きが来ずに長く乗れる。
「この王道スタイルは、廃れることはないと思う。キレイさを保ちながら、ずっと乗り続けたいです」。
<レポート:VIP STYLE編集部>
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