セダンユーザーに「VIPの定義とは?」と聞けば、きっと様々な答えが返ってくるだろう。しかしどんなに流行が移り変わるとはいっても、創成期から大事にされてきた「ワイド&ロー」は決して外すことはできない。このトヨタ18型マジェスタもワイド感とイカツさを身に纏い、絵に描いたようなVIPらしい姿に仕上がっている。
■VIPらしくあるための、ワイド&ロー
オリジナルのゴールドで塗っていた前仕様も、イベント会場で非常に目立つ存在だった。ナチュラルなブリスターフェンダーに19インチのSSR・プロフェッサーSP3(ホイール)をリムガードツラで決めたスタイリングは、紛れもなくVIPの風格だった。
しかし現在の最新仕様を見ると、「VIPらしさ」に一層磨きがかかった感じがする。ボディは以前よりもワイド化しているにもかかわらず、グッと渋さが増している。
「僕の中では、VIP=ワイド&ローというイメージ。シンプルでイカツく、そしてカッコいい。それがセダンに相応しいスタイルだと思い、今回は外装を作り直しました」とオーナーの秋山サン。
今年2月に開催された大阪オートメッセ2015出展に向けて挑んだ、大幅なイメージチェンジ。ただ当初は外装を変えず、内装の張り替えだけを考えていた。もともとエクステリアの完成度が高かっただけに、内装も仕上げたらトータルバランスが格段に上がる。その計画を変更してまで外装をやり直したのは、ちゃんとした狙いがある。
「内装をイジっても、まず外装がカッコ良くなければイベントで足を止めてもらえない。それなら外装をやった方が目立つと思いました」。
渋さを生み出すキモは、ゴールドから黒への全塗装。周囲の景色がキレイに映り込むほど艶やかで、メッキの輝きも冴える。この色で、イカツさと重厚感の双方を手にした。
「任侠映画で黒塗りのセダンを見て以来、ずっと憧れていた色です。イベントで目立たないかもしれないという不安もありましたが、威圧感が出て結果的には大成功でした」。
漆黒ボディとグラマラスなブリスター
この2つこそ、「VIP」を主張するカギ
2作目となるワンオフのブリスターフェンダーも、最新仕様を語る上で外せない。
以前履いていたホイールは19インチ。今回は1インチアップし、20インチのワーク・ジスタンスW10Mをチョイス。僅かなインチ(ホイール径)の違いでもフェンダーのアーチ形状に大きな差が出るため、まさにイチから作り直しである。
「1インチアップするだけでも、見た目の印象がかなり違う。足元に迫力が欲しくて、この20インチに合わせてフェンダーを作りました」と秋山サンは語る。
以前の出幅(ワイド化)はフロント3cm、リヤ4cm。「いかにも」という形状ではなく、純正のスタイルを崩さないように滑らかなアーチを描いていた。
今回のフェンダーはフロント8cm、リヤ13cmと、出幅の数値は以前の倍以上。広範囲に渡ってワークス風に膨らませているが、スソをしっかりと絞り込んでいるためボテっとした印象は感じない。
「理想は青森の木村サンの15マジェ(トヨタ15型マジェスタ)。出すところは出して、絞るところは絞る。タイヤを見せて、ドッシリ感のあるフェンダーにしたかったんです」。
また、今回もプレスラインをアレンジ。以前のフェンダーはラインの先端を、フロントとフェンダーのアーチ辺りで落としていた。今回はそのラインを消し、リアのドアノブ下辺りで落としてからハネ上げた。
「最初はデザイン性のあるフェンダーを作ろうと思いましたが、コンセプトとかけ離れてしまう。そこでラインで遊び心を持たせました」。
実はこのライン、純正よりも深く刻んでクッキリさせている。ボディカラーが暗めになるとラインがぼやけてしまいがちなので、それを解消するためのアイデアなのである。
フェンダーは出すだけではなく、絞りも重要
色やフェンダー以外にも、見るべき点が満載のエクステリア。エアロは以前から組んでいたJユニットを加工。特に著しく変化したのがフロント。アルテッツァ用のフォグからデイライトに変更し、ユーロテイストを底上げ。その下には鋭いフィンを足して、洗練された顔つきに仕上げた。中央部はさり気なく尖らせ、ボトムも少々張り出しを加えてVIPらしい威圧感の演出も抜かりがない。
「以前よりも細部の角を立たせることで、イカツさを強調しました」。
小技も充実。ドアミラーはスポーティなガナドール。ボンネットのダクトはW221ベンツSクラス。そしてマフラーは、チタン4本出し。それぞれ個性のあるパーツだが、極端に目立っていないのが不思議。
「パーツを選ぶ際は事前に下調べをして、合うか合わないかをイメージしてから買うようにしています」と秋山サンはいう。
見切り発車ではない。細部に至るまで、しっかりバランスを考えている。だからカッコいいのである。