ハコスカGT-Rの現役時代、素晴らしく速かった
初代のKPGC10型スカイラインGT-R、2代目のBNR32型スカイラインGT-R、そして現行モデルR35型GT-R。
3世代のGT-Rを前に、歴史に名を残す元レーシングドライバー長谷見昌弘が語る。
長谷見昌弘は、19歳で日産・大森のワークスドライバーとなり、ブルーバードでのデビュー戦で優勝。のちに日産・追浜のワークスドライバーとなり、レースカーのみならずラリー車の開発にも携わるなど、天才と称される日本屈指のレーシングドライバーだ。全日本選手権4冠王の金字塔が、その溢れる才能を如実に表している。
3世代のGT-Rが勢揃いした様を見て、長谷見は、懐かしそうに表情を和らげ、思わず歩み寄った。
「スカイラインやGT-Rは、レースで一番長く乗ったクルマじゃないかな。僕にとってスカイラインとGT-Rは、レーシングカーなんですよ」。
そして、順に運転席に座っていく。
「時代を感じますね。まず、KPGC10(初代スカイラインGT-R:ハコスカGT-R)はハンドルが細い。僕は、ハンドルは握るのではなく掌で押すようにして持つんです。細いと握らなければならないので、レース仕様ではハンドルを太くしてもらっていました。もちろん、当時はパワーステアリングなんてありませんから、径は大きいままですけれどね」。
ハコスカGT-Rの試乗を終え、「パワーがないね」と、笑った。
R32以降のGT-Rはすべてターボエンジンだから、今日の感覚からすれば、パワーが無いと感じるのは当然だろう。
「それでもハコスカGT-Rは、当時は速かったですよ。他が、1200ccとか1600ccのエンジンでしたから。ターボエンジンではないから、やはりトルク感が違いますけれど、味はありますね。音もいい。ヒール&トーでシフトダウンしたときの音がね。R32でもヒール&トーはするけれど、ターボエンジンだからいい音はしないですよ」。