一般公道では速すぎるR35GT-R
BNR32は、レースでは苦労はあったが、「一般道で乗るには、悪いところがなかったですよ。ブレーキもそんなに使わないしね。だから、レース仕様については、事前にもうちょっとわれわれに意見を聞きに来てくれたらよかったですね。そうすれば、ホモロゲーションを取るニスモ仕様の500台では、もっとやれることがあったんじゃないでしょうか」。
R35型GT-Rには、長谷見が実際にレースで乗ることはなく、現在は監督として若手ドライバーのGT3の活躍を支える。
「R35は、3年ほど普段使っていました。R35の前に、水野和敏さんが関わったV35スカイラインがあって、これに大径タイヤというのを装着していたでしょう。あれは良かった。R32のレースで使ったハイトの高いタイヤのように、包容力のあるグリップで、あのよさは、レースを経験した人にしかわかりにくかったかもしれませんね。
一般公道でR35は、速過ぎて、危ない(笑)。パドルシフトは、ほとんど使わなかったですね。ATでの変速がよくできているし。一度パドルシフフトを道志のワインディング(神奈川県から山梨県へ抜ける国道413号)で試したけれど、2〜3速でグワーッとコーナーを立ち上がっていくとき、タコメーターを見てなきゃいけないんだけど、次のコーナーがすぐ迫って、メーターを見ている余裕がない。
ボクでもそうなんだから、一般の人はね。それでも、一般の方はレーシングカーのようなパドル操作をするのがうれしいんでしょうが……」。
次のGT-Rは「スカイラインGT-R」を!
長谷見にとって、理想的な将来のGT-Rとは、どんなクルマ像なのだろう?
「もう、レースと直接的にメカニズム上の関係はないのですから、直列6気筒のツインターボエンジンで、二駆を造ってくれないかなぁ。
R35のあのエンジンを、Zに載せて二駆で走ったら、たぶん後輪がスライドしてゾクゾクすると思うんですよ。ワクワクではなく、ゾクゾクがないとクルマは飽きちゃう。R35は、2〜3速でコーナーを立ち上がっても全然滑らないですからね。そういう意味で、R35は世界で一番安全に、速く走れるクルマです」。
加えて、長谷見が望むのは、スカイラインGT-Rの名称復活だ。
「R35は、世界的にはニッサンGT-Rだとしても、日本国内ではスカイラインGT-Rにしてくれたらよかったと思います。スカイラインやGT-Rのファンは、根強いし、熱いですよ。
1982年にグループ5のトミカスカイラインRSターボを作ったとき、プリンス自販の宣伝部とトミカがお金を出してくれたんですが、それでも足りず、全国の日産プリンスのディーラーにカンパをお願いしたんです。それが、車体に描かれているPDCのロゴなんです。プリンスやスカイラインが好きで入社した人が多かったから、そういう支援も得られたんですね」。
3世代のGT-Rが勢揃いしたことで、長谷見昌弘の、スカイラインとゾクゾクする走り味への深い思いが、一気に迸る一日となった。
(文中:敬称略)
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