チューニングや使い方で変わるGT-Rのタイヤ選び
GT-Rを始めとする高性能車オーナーの要求に応える、『ヨコハマタイヤ』のグローバル・フラッグシップタイヤ「ADVAN Sport V105」。ポルシェやメルセデス・ベンツ、ベントレーなど欧州のプレミアムブランドが純正タイヤに採用する、名実共に同社を代表する旗艦モデルである。
「一言で言えば、GT-Rのチューニング度合いによってチョイスしていただいて良いと考えます」と語るのは、ADVAN Sport V105をはじめ、市販タイヤ開発のリーダーを務める横浜ゴムタイヤ第一設計部 設計1グループの川瀬博也氏。
「R32、R33(スカイラインGT-R)あたりですと、純正装着タイヤのグリップレベル並の性能はADVAN dBでも持ち合わせています。ですが、サーキットもたまに走るような使い方をされるのでしたら、ADVAN Sport V105をお薦めします。チューニングしているならば、ADVAN NEOVA AD08Rでしょう」。
モータースポーツでの技術をフィードバック
そんなウルトラC難度の開発を成し遂げた「切り札」は、モータースポーツテクノロジーとの融合にあったのだ。「例えば、ADVAN Sport V105に採用されているマトリックス・ボディ・プライというタイヤ構造。これはレーシングスリックタイヤでは100%使用されているスタンダードな技術なんです」。
現在スーパーGTをはじめとしたモータースポーツのタイヤなどの設計開発を行うグループリーダー、藤代秀一氏(ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル開発部 開発1グループグループリーダー)は語る。同構造を採用したことにより、トラクションに加え、制動性能までもが大幅に向上した。「剛性が上がったことで、前作V103で採用していたサイド剛性を確保するための補強層が省略でき、軽量化に貢献しています」。
モータースポーツタイヤという実戦に身を置く藤代氏は、市販に活かせそうな技術はないか、常に目を光らせているという。「いろいろな開発をしているのですが、単に勝ち負けだけでなく、会社に技術で貢献することもわれわれの使命だと思っています」。
欧州メーカーの純正装着タイヤとして登場したアドバンスポーツシリーズ。R32〜34型スカイラインGT-RとなるV105は快適性能と運動性能を両立
マトリックス・ボディ・プライカーカスコードに角度をつけることで回転方向に高い剛性を確保。トラクション性能や制動性能が前モデルのV103と比べて約1.5倍に向上。マウンド・プロファイル5列リブのひとつ一つに僅かなアール形状を施すことで、路面への接地時に面厚が均一となるように最適化。高速安定性をアップした。オレンジオイル配合コンパウンドゴムがしなやかになるオレンジオイルを配合することでミクロレベルで路面追従性を高めている。今シリーズではV105が初採用となる
GT-R&NSXが国産タイヤの性能アップに大きく貢献
ちなみにタイヤ開発者として、スカイラインGT-Rはどのような存在なのだろうか? もしGT-Rが登場していなかったら、タイヤの進化も遅れていたのだろうか? 川瀬氏は先陣の奮闘を回顧する。
「恐らくそうでしょう。スカイラインGT-Rと、ホンダのNSX。両雄が国産車のパフォーマンスを引き上げたという事実はあるでしょうね。当時、わたしはまだ入社していないのですが、R32スカイラインの登場により弊社内では盛り上がったと聞いています。GTS-4の純正装着タイヤを開発していたとき、次第に全社的なプロジェクトとなり、新型スカイラインに見合う性能にするんだ、と力を入れていたようです」。
一方、藤代氏もこう語っている。
「やはりクルマ好きにとってスポーツカー向けのタイヤ開発は楽しいんです。開発中は本当に身も心もつらい。夜遅く家に帰り、へとへとな翌朝でも『あなた楽しそうに出掛けていくから納得がいかない』なんて嫁さんに言われたり」。
ADVAN Sport V105は、前述のように熱い開発陣により生み出されたフラッグシップタイヤである。欧州車メーカーお墨付きのパフォーマンスは、必ずやGT-Rオーナーも満足させてくれるだろう。