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35年ぶりに復活した幻の3.2リットル直6エンジンとは

NAで400ps以上を発揮するS20型を超えるL型エンジン

1980年に日産のL28型エンジン(2.8リットル直6SOHCカウンターフローエンジン)にオリジナルのツインカム4バルブヘッドを組み合わせ、わずか9基のみ生産された幻のエンジンがあった。それがOS技研の「TC24–B1」だ。そう、クラッチ、LSDといった駆動系パーツメーカーとして有名な「OS技研」は、エンジンビルダーでもあったのだ。

そんな幻のエンジンが、35年の時を経て、さらにバージョンアップして復活することになった。
オリジナルの「TC24–B1」は、ツインカムといえば2バルブが主流の時代に4バルブを採用。325ps/33kg–mというスペックは当時としては群を抜く性能を誇っていた。

ハコスカR(KPGC10型スカイラインGT-R)は時代を牽引する旧車界の王者。羨望される理由の一つがS20型2リットル直6DOHCエンジンであり、ツインカム4バルブは憧れの存在であった。そのS20に負けない存在感を放つ特別なL型が、『OS技研』の手によって、現代の技術で今甦る

今回復活を果たした新エンジン「TC24–B1Z」は、かつての「TC24–B1」を現代技術で甦らせたもので、スペックも当然進化。NA3.2リットルで400ps以上を見越している。そういう意味では、復刻版というよりも、改良進化版といった方が正しいだろう。

ベースエンジンはL型なので、ハコスカ(C10型スカイライン)にも当然搭載可能。DOHC4バルブといえばGT–Rの専売特許であるが、TC24を組み込めば本家を超えるGT–Rが完成する。

ピストン、コンロッドは鍛造で、クランクはフルカウンターを 採用。高出力に対応してよじれ止めプレートも開発

スキッシュエリアを持ったペントルーフ型の燃焼室形状は今のエンジンと大きな差はない。
20度の作用角は1気筒あたり排気量500㏄と13の圧縮比から燃焼室の容積を考え、最適な燃焼を考えてピストンをフラットにすることから導きだした数値。バルブ径は闇雲に大きくするのではなく、ポートに流れ込む空気の速さ、エンジン特性を考えて考慮。左がFJ20型エンジンで右がTC24-B1Zエンジン。TC24はヘッドの大きさもコンパクトで、作用角も小さい。それでいてバルブ径は小さめだ。

高い精度で組み上げられ生まれ変わった名機

「元祖TC24を発売したとき、その出力に耐えられるクラッチやLSDは存在しませんでした。エンジンを発売した責任からそれに耐えられる駆動系パーツの開発も行いました。それが現在のOS技研の礎となったのは確かです」と語るのはOS技研の岡崎正治会長。

当時は現在のような充実の設備はなく、岡崎会長独自の理論に基づく図面を元に、技術者が勘とテクニックで試行錯誤を重ねて出来上がったものだ。現在のレベルからみると精度は劣るが、基本的なポテンシャルは高く、実力は計り知れない。

「当時L28(エンジン)をベースに選んだのは強化部品が多く、耐久性の面で優れていたからです。復刻版もL28ブロックベースは変わりませんが、RB26のエンジンパーツ開発で培った技術を生かし、ピストン/クランク/コンロッド・ブロックのよじれ止めの補強プレートなどは自社製としています。各パーツには窒化処理が施され、これによって、信頼耐久性は大幅に向上しています」

多くのパーツはコンピュータシミュレーションを使って最適な形状を導きだしているが、カムのプロフィールだけは今でも岡崎会長が自身で鋳物を削り決めている。新しいTC24のカムのリフト量は330度とかなり大きく、これが高回転まで突き抜けるフィーリングの肝になる。

かつてのTC24に比べ、加工精度が上がり、カムホルダーを一体式からキャップ式に、バルブ調整もネジ式からシム式にするなど、各部のロスを減らしながらコンパクト化。カムギヤトレインはオプション設定だ

TC24の開発にアドバイザーとして参画する兵庫県姫路市の『プロショップナカガワ』の中川英明代表は、「現在は開発もほぼ終了し、あとはセッティングを施すだけの段階にきました。新世代のTC24なのでインジェクションで仕上げています。ずっとL型ばかりいじってきましたが、同じNAのフルチューンと比較してもパワーは軽く50㎰以上違います。高回転の伸びはもちろん、燃焼効率も良く、レスポンスも鋭い。熱くなるものがありますね」と語る。

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