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今だから語れる日産R32GT-R開発秘話

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日産の基準値以上でもGT-Rだから許された

性能目標は、当時としては驚くほど高く設定。目標を達成するために発足したのが901連絡会である。また、性能評価ドライバーの訓練も徹底して行った。

R32スカイラインの開発を担当した加藤博義氏。 「部署名こそ異なりますが、一緒に仕事していました。BNR32は部署の垣根を越えて集まり議論していました」と長倉氏は語る

R32スカイラインの開発を担当した加藤博義氏。
「部署名こそ異なりますが、一緒に仕事していました。BNR32は部署の垣根を越えて集まり議論していました」と長倉氏は語る

「R32(スカイライン)の開発が始まったとき、商品主管の伊藤修令さんが栃木の実験部に来たんです。テストコースの前にある小さな部屋で、私や加藤博義さんなどの実験ドライバーとエンジニアを前に、開発の指揮を執ると挨拶しました。そのとき言われたことが今でも印象に残っていますね。『設計は設計で頑張ってもらうんだけど、実験のドライバーが乗って、これ、何かおかしいね、この数値で本当にいいのか、と思ったり感じたら、すぐに俺に伝えてくれ』と言ったのです。
開発者も実験の人たちも、一緒になっていいクルマを作っていくのだから『垣根を越えて率直な意見を』と言われたときはうれしかったですね。心底、伊藤さんが喜んでくれるクルマを作りたい、と思うようになりました」と長倉。8

シャーシ性能、走りの性能において世界ナンバーワンを目指す。これが伊藤修令(R32スカイライン開発責任者)の掲げるR32の開発方針だったので、日産の実験基準、生産基準にそぐわないことも多かったと長倉は述懐する。
「GT–Rを開発していくと、どうしても社内基準に当てはまらないところが出てくるんです。例えばクラッチの踏力ですが、あのパワーとトルクに耐えるために基準値の12㎏をはるかに超えてしまいました。普通は数値だけ見てこれはダメと言われてしまうんです。が『GT–Rだからいいだろう』と報告書にサインしたのが渡邉(衡三)さんでした。
旋回しているときにGがかかり、燃料が息つぎを起こしてしまうトラブルも出ました。厚木の日産テクニカルセンターの実験担当では埒が明かないので、その上司に連絡したのです。栃木の商品性評価路を一緒に走ってもらい、納得した上で対策部品を作ってもらいました。こういったことが多かったですね」と、開発時のエピソードを語った。

実験ドライバーが造形担当のエンジニアに意見を述べることはほとんどない。が、スカイラインに関しては口出ししたという。GT-R

そのひとつがステアリングとシフトノブの形状だ。ステアリングは、前後に縦長の形状、それに合わせたシフトノブの形状などに徹底した拘りを見せている。とにかく機能に関わるものは、見た目だけでなく、握り具合や手触り感も大事だから木型を削って重要性を説いた。また、ペダル類の形状にも強い拘りを見せている。

「アクセルもブレーキ、クラッチといった三つのペダルやステアリングのフィンガーレストなどは、実験部の人間がイラストを描き、デザイナーに提案しました。このフィンガーレストは、GT–Rが初採用だったように思います。また、シートも拘り抜きました。R32のシートはスマートなんですが、サポートがいいんです。私は大柄ですが、加藤さんはちょっと小柄なので、両方の体格の人が満足できるシートを設計担当者にお願いしました。薄くてもきれいに面で支えるシートを提案しました。あの感触は今でも覚えています」 と、苦労話を語ってくれた。

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