オーナー自身の、チームの「集大成」
北海道・札幌拠点のチーム「レ・ヴィジョン」のメンバー、宇生未来サンの乗る日産ティーダ。メイキングコンセプトはユーロスポーツ。
ただし、そこは常に「革新」を掲げることがモットーなチーム「レ・ヴィジョン」の一員。ありきたりではない何かにこだわり抜いて、じっくりと時間をかけ、構想を練り込んだという。
例えば、ボンネット。くっきりとした立体ラインを描きつつ、根元部分へダクトではなく、ステン風プレートを添えるという発想。このプレートはバンパー開口部にも踏襲され、まるで戦闘機の吸気口のような精悍さも生んだ。
フロントフェンダー後方やDピラー部にあしらった立体フィンも、独特。ヘッドライト側面のレザー張りプレートにカプチーノ用のフェンダーダクト、フェラーリF458風のリヤバンパーと全身を個性で埋め尽くした洗練の装い。あえてのアウトリップも、絶妙だ。
「PCで画像をイジって提案し、レ・ヴィジョンの武者サンと意見を出し合って創るっていうのが僕のやり方。だからレ・ヴィジョンらしさも意識したし、チームの集大成な一面も。でもやっぱり自分らしさも強く意識した。負けずギライで人とはちがうモノが好き、そんな自分らしさは出せたかな」と宇生サン。
北海道は札幌に拠点を置くチーム、レ・ヴィジョンは本州へも度々遠征するなど、すでに3台もの街ワゴ車を輩出する名門だ。そんなチームだからこそ、宇生/ティーダは計り知れないほどの大きな影響を受けている。
だが宇生未来は、あえて彼らの真似には走らない。狙うはレ・ヴィジョン流儀を踏まえつつ、さらに進化させた次世代のユーロスポーツ。これが北海道の、未来だ。
アクシデントによって深まったメンバーの絆
そもそもクルマは大好きだった。学生時代には映画、ワイルドスピードに影響され、スカイラインに憧れていた。18歳で発表されたばかりのティーダを手にしたときも、車高調やホイールでライトにドレスアップを楽しんでいた。
そんな宇生未来が本格的なカスタムを目にしたのは、オーナーズクラブに参加してから。
そのときに衝撃を受けたトヨタ・イストのオーナーが引き合わせてくれたのが、レ・ヴィジョンのメンバーである大柄サン。そこから彼とレ・ヴィジョンのメンバーとの交流は始まった。
とはいえ本格的なカスタムは念頭になく、結婚を控えていたこともあり、イジりはあくまで軽いモノ。でもせっかくやったのだから最初で最後の記念に、イベントに出てみようとなった。
が、出発当日。ティーダは車上荒らしに遭ってしまう。準備していた愛車もココロも、ボロボロに。あきらめることをメンバーに伝えた数分後、電話が鳴った。「とりあえず、札幌に来い」。
メンバーの基地であるDボックスに到着すると、メンバーが総出で必死になり、宇生/ティーダの修復にとりかかる。
鉄板を皆でチカラを合わせて引っ張り、雨の中で手を泥だらけにして「いっしょに行こう」と声をかけた。
「そのころ自分はメンバーでもないし、それほど仲が良かったわけでもない。それなのにみんな、必死で助けてくれて。すごくアツいものを感じました、感動しました。この人たちみたいになりたいと、ココロから思いました」。
この人生初イベントから宇生未来は、憧れの先駆者たちの背中を追いかけ続けている。彼の原動力は、勝ちたいではなく、この人たちといっしょにやりたいという想い。その真っ直ぐで純なココロはこれからもずっと続く。どこまでも伸びていく、北の大地のように。
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