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「46万km」走行のスカイラインGT-Rが秘めた驚愕の事実

「操」を守り続けるエンジンとミッション

平成3(1991)年式・日産R32型スカイラインGT-R。今から25年前に新車で購入したオーナーが刻んだ走行距離は46万km。しかし、走行距離だけなら、もっとたくさん走っているR32型スカイラインGT-Rは存在する。今回取り上げるGT-Rが凄いのは、新車搭載時のエンジンやミッションといったパワーユニットを今なお、乗せ替えることなく使い続けていることだ。R32型スカイラインGT-Rでは、このような例はかなりレアなケース。このくらいの距離を走行している個体は、ほとんどがエンジン、ミッションを新しいユニットに乗せ替えている。

では、一つのユニットをここまで使い続けることができる秘訣はなんであろうか? ここでは、そのあたりも含め、オーナーとこのクルマとの付き合い方を紹介しよう。

このスカイラインGT-R(BNR32型)のオーナーである奈良県在住の浅田友昭さんと編集スタッフが出会ったのは、今から3年前のこと。大阪府門真市の「田中オートサービス」というショップの田中代表からの紹介だった。当時の走行距離は43万1000km。22年間の平均年間走行距離は2万kmだった(それ以前に乗っていたクルマは年間2万8000kmを走行)。とにかく、この浅田さんという人物は、クルマに乗っている時間が長い。通勤に使っていたとはいえ、とても一般的なサラリーマンでは、ここまでの距離はなかなか走れない。
ただ、ここ数年は、お子さんの電車通学に付き合い、お仕事などの関係で、めっきり走行距離は伸びなくなっている。
それでも、3年間で3万kmを走行。保存モード(クルマが傷まないように乗らない)に入るR32型スカイラインGT-Rオーナーが多い中、今でも年間1万kmを刻んでいるGT-Rオーナーは珍しい部類にはいるだろう。

自動車博物館に飾られているクルマはかわいそう

「自動車博物館とかでピカピカに磨き上げられて飾られているクルマを見ると、『かわいそうに。動かしてもらえないで』と思ってしまうのです。どんなクルマも走るために誕生したわけだけら、床の間に飾っておくものではないと考えています」と浅田さん。

以前は、通勤はもちろん、GT-Rを走らせたいから帰宅するときは遠回り。さらに家族旅行はすべてクルマ(GT-R)。公共機関を使った記憶がないというほどで、家族でスキーに行くときもGT-Rにスタッドレスタイヤを装着して行ってしまう。
通常のGT-Rオーナーなら錆の原因となる融雪剤(塩化カルシウム)の捲かれている雪道なんて、絶対に行かないはずだ(帰宅後はどんなに疲れていても下まわりを洗車する)。

また、北海道へ家族旅行したときも、GT-Rで行ったそうだ。しかも、奈良から青森まで自走!
ちなみに奥さまは、AT限定免許のためGT-Rは運転できない。奥さん用にV36型スカイラインを所有しているのだから、それで行けば運転時間をシェアできて楽なはず。
それをしないのは、浅田さんにとってGT-Rを運転することは、移動時間ではなく自分が楽しめる大切な時間だからなのである。

オイル漏れが多発!2度目のオーバーホールか

「浅田さんのGT-Rのスゴイところは、エンジンは20万kmのときニスモでオーバーホールしていますが、ミッションやデフはオイル交換以外、まったく手が入っていないことです。これは普段からの乗り方(暖機運転)が丁寧で、停まっている時間が少ないからでしょうね。クルマはオイルが回っている時間が長いほど傷みにくいという好例です。とはいえ、すでにオーバーホールから26万km。タービンは最近替えたようですが(といってもオーバホール時も含め2回目)、ミッションやデフなどのオイル漏れはすごい状態。近いうちにしっかり手を入れないとダメでしょう」と田中オートサービスの田中代表。

46万kmも走れば、新しいパワーユニットを導入して気分一新というのは凡人の考えなのだろうか? 浅田さんは、現在のパワーユニットをオーバーホールしても、少しでも多くのパーツを残していきたいという。

その想いは、走行20万kmのときニスモ(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル/オーバーホール時は東京にあり、現在は神奈川県)でオーバーホールしたときも同じで、「とにかく交換するパーツは最小限にしてほしい」と頼んだそうだ。その結果、ピストンとコンロッドを交換しただけで、エンジンブロックはホーニングのみだったという。これはある意味、エンジンブロックはまだボーリングできる余地を残している。エンジンブロックにヒビが入るなどの不具合がなければ、継続使用できる可能性を秘めているわけだ。
もちろん、46万kmも走行していれば、ピストンやコンロッドの交換は間違いなく、クランクシャフトやカムシャフトなども摩耗していることだろう。しかし、エンジンブロックなど大物はもちろん、ネジ1本まで新車時のものを使い続けたいと浅田さんはいう。それほど、このGT-Rのすべてに愛着があるのだ。

季節によってルートまで替えて走行暖機運転

そこで浅田さんにクルマを長持ちさせる秘けつを聞いてみると
「いたって普通ですよ。水温計の針が動き出すまでは、クルマを走らせません。そのあとは、エンジンオイルや足まわりが暖まるまでは流れの速い幹線道路には出ないように気を付けています。冬は、とくに駆動系が暖まりにくいので、通勤ルートを変えて暖機運転をしていました」と語る。

「結局はダラダラとしか走らない人なんでしょ」と思われるかもしれない。
ところが、浅田さんと併走したことがあるが、とにかくメリハリのある走りをする。ただ、その走り方は、クルマへの負荷をかけず、じつにスムース。見るからに走り慣れていると感じさせられる。これも圧倒的な走行距離を経験した浅田さんならではと思う。

「クルマは走しらせてナンボ」という言葉をよく聞くが、浅田さんのようにスカイラインGT-Rと出会い、半生を共にした今なお「GT-Rで走ることが楽しい」と笑顔で応えられることはじつに素敵なことだと思う。次回、このスカイラインGT-Rを見たとき、オドメーターが何kmを刻んでいるのだろうか?

走行40万kmは各部に、その痕跡を残している。ボディにも錆が出ているが、そのたびに修理。
すでに発表から28年目を迎えようとしているR32型スカイラインGT-R(BNR32)は、さまざまなパーツの価格が高騰し、製造中止されているものも少なくない。長く乗り続けるためには、手に入るパーツはできるだけストックする必要があるそうだ。

※文中に出てくる写真で、46万kmのメーター以外は3年前に撮影したものです。

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