ただ柔らかいだけは長距離走行に適していない
雪が降るかもしれない気象状況で、大きな荷物を積んで東京〜大阪往復1200kmを走行しなければならないとき、もし「好きなクルマで行って良い」と言われたら、どんな基準でクルマを選びますか?
荷物を積むためるワゴンかミニバン。これはマストな項目。では、次に燃費? 乗り心地? パワー? さらに悪天候も考えると4WD? などなど。
そこで編集スタッフが導き出した答えは「BMW320i xDrive ツーリングスポーツ」。
このクルマを選んだ理由(言い訳?)をつらつらと書いてみるが、クルマ選びの一つの指標になるかもしれないのでお付き合い願いたい。
まず、運転してくれる人がいるなら後席でゆっくりできて荷物も積めるミニバンという選択肢もある。だが、今回は往路は2人だが復路は1人。そうなると上屋の大きいクルマよりドライバーズカーであるワゴンのほうが有利だ。
さらに余裕あるパワーと天候の影響を受けにくい4WDシステム、そしてドイツ車ならではの長距離移動の快適さが最大のポイントだ。
ミニバンのように柔らかいサスペンション(ダンピング)やシートは、チョイ乗りなら快適そうに感じるが、じつは走行距離に比例して身体の疲労がどんどん溜まってくるもの。
BMW320i xDrive ツーリングスポーツのボディサイズは、全幅こそ1.8mと3ナンバー枠となるが、全長は4.65mと5ナンバーサイズ。幅さえ克服できれば、ハンドルの切れ角も大きいこともあり、市街地などでの取り回しは、コンパクトカーと大きな違いは感じない。
場合によっては、5ナンバーの国産FF車がUターンできないところで、BMW320i xDrive ツーリングスポーツが一発で決められることもある。
1350rpmから最大トルクを発揮する2リットル直4ターボ
BMW320i xDrive ツーリングスポーツの搭載エンジンは2リットル直列4気筒ターボ。最高出力は184ps。最大トルクは27.5kgmで1350〜4600rpmという低回転域から発生する。これは追い越しする際の加速などでもの凄く心強い。トランスミッションは8速AT。変速ショックは少なく、シームレスな加速感を得ることができる。
じつは今回の東京〜大阪の移動は、非常にスケジュールがタイト。休憩時間もそこそこに走行することになってしまった。
高速道をメインにした走行であったこともあり、結論から言ってしまえばBMW320i xDrive ツーリングスポーツを選んだことが間違いではなかった。
降雪の可能性もあったので、試乗車にはスタッドレスタイヤ(ブリヂストンのランフラットタイヤ)を装着。サマータイヤに比べるとトレッドのブロック剛性は低いが、それでもフラットライドな乗り心地や安定した直進性は確保されている。
もちろん、メルセデスベンツの「鬼の直進安定性」に比べるとBMW320i xDrive ツーリングスポーツはやや薄い感じ。これはハンドリングカーを優先するBMWなのだから仕方ないところだが、ステアリング操作に対して敏感すぎずなおかつ正確なところは、国産車では得られないリニア感がある。
シフトレバー横にあるスイッチでは、走行モード(エコプロ/コンフォート/スポーツ/スポーツ+)を切り替えが可能。コンフォートなゆったりとした乗り味からスポーティな仕様まで足まわりやエンジンの設定までがトータルで変化する。
ステアリングの手応えは、スポーツモードが適度な重さがあって高速道路ではちょうど良い。だが、100km/h走行時のエンジン回転数はコンフォートなら8速ギア1400rpmだが、スポーツにすると7速にシフトダウンして1800rpm。スポーツモードで8速にシフトアップするには、速度を高めるしかない。日本の高速道路の法定速度とドイツで作られたクルマの設計思想の違いを感じる部分だ。
燃費は、往路が荷物満載の2名乗車で10.8km/L。交通の流れが良い「新名神」が事故で渋滞していたので、アップダウンのある従来の名神高速道路を利用したことや向かい風など厳しい気象条件もあり、思ったほど燃費が延びなかった。
しかし、復路は1名乗車で荷物がやや減ったこともあり13km/L。往路よりハイペースだったことも考慮すれば十分な数値だろう。
走るほどに感じるツアラーとしての高い資質
伊勢湾岸道などの海沿いは、吹き流しが真横にたなびくほど横風が強かった。が、吹き流しを見ない限り横風が強いとは感じない。ハンドリングカーではあるが、やはりドイツ車らしい高速ツアラーとしての直進安定性が確保されていた。これはxDrive(4WDシステム)による最適な前後駆動配分の恩恵だろう。
シートに関しては、ホールド性は適度だが、サポート性はバツグン。座面の先端は伸縮するから、伸ばせば腿の裏をシッカリとサポート。シート前後の好みの高さに合わせると、じつに理想的なドライビングポジションを確保できる。さらにステアリングはチルト&テレスコピック機能が付いている。
長い距離を走る時こそ、クルマに身体を合わせるのではなく、自分に合わせられるシートのありがたさを実感するところだ。
今回の試乗車はBMW320i xDrive ツーリングスポーツの車両本体価格は559万円。4WDのxDriveシリーズ(2リットル4気筒ターボのみ)ではもっとも安いが、2リットルガソリンエンジンを搭載する3シリーズ・ツーリングでは中位クラスだ。
ちなみに3シリーズ・ツーリングは、2タイプの2リットル4気筒ターボ、2リットル4気筒ディーゼルターボ、3リットル6気筒ターボといった3種類4タイプのエンジンを設定。車両本体価格は449万円〜798万円となっている。駆動方式はFR(後輪駆動)を基本に、xDriveもFRをベースした4WDだ。
さらに、3シリーズには4ドアセダン、5ドアをラインアップ。エンジンや駆動を組み合わせるとじつに豊富なバリエーションを設定する。今回はBMW320i xDrive ツーリングスポーツの試乗ではあったが、今後また異なるグレードの試乗記を紹介したいと思う。
意外にオーナーも知らないスマートキーの裏技
スマートキーのリモコンの施錠ボタンを長押しすれば、同様にすべての窓を閉められ、解錠ボタンを長押しするとすべての窓が開きます。サンルーフも連動しています。
また、リモコンキーでも同様の動作ができるばかりか、リモコンがない年式でもキーを鍵穴に差し込み施錠/解錠それぞれの方向に回転させた後、反戻しすると同様にすべての窓を閉めたり開けたりできるのです。
BMW ジャパン 0120-269-437 http://www.bmw.co.jp
【関連記事】