函館〜富良野〜美瑛へ向かう2台のスポーツカー
「本フェリーは、6時20分に函館港へ到着する予定です」。
FIFAワールドカップ・ブラジル大会の模様を放映していたテレビは、気がつくと消えていた。どうやらほんの少し眠っていたようだ。船窓の外は、薄曇りの函館港。ついに北海道に到着したのだ。6月17日15時、東京都文京区本郷の編集部を出発した取材班は、首都高速から東北自動車道に乗った。目指すは北海道。別の取材も含めると6泊7日の長旅である。
函館港を降り立ったわれわれは、今にも雨が降りそうな中、金森赤レンガ倉庫で上陸最初の撮影を行う。目的地は特に決まっていないが、撮影するなら天候はなるべく晴れたほうがいい。とりあえず、天気予報で「晴れ」と出ている地域に向かうことにする。さあ、雨雲とデッドヒートの始まりだ。編集長の「富良野に行きたい」という一言で函館から道央へ向かう。いきなり400kmのドライブはフェリーでろくに寝ていなかったわれわれにはきつい。フラフラになりながらGT-RとNSXを交互に乗る。
富良野で撮影後は「ケンとメリーの木」で有名な上川郡美瑛町へ立ち寄る。天候は曇りだったものの、雲間に抜けるような青空が見えてきた。
北海道のほぼ中央に位置する美瑛町は、面積が東京23区に匹敵し、その15%を畑地が占めるという。まるでアメリカの片田舎のような風景の中2台を置くと、本当に絵になる。その後さらに東に進み、北見で一泊。途中雨雲に追いつかれ、北見を抜ける峠道では雨に祟られた。
夜、6月だというのにまだ肌寒い北見の繁華街で夕食をとりながら翌日の目的地を決める。
「検索すると、サロベツ原野っていうところがいい景色らしいですよ」
「サロベツ原野ってどこだっけ?」「稚内です」。
皆、無言になる。だが、天気予報を確かめると、旭川より北しか晴れていない。よし、行こう! 北海道に詳しい読者が読んだら呆れるようなジグザグルートで、稚内を目指すことになった。
翌日はオホーツク海を右手に見ながら238号をひた走る。クッチャロ湖でターンし今度は日本海側へ。
のんびりドライブを楽しんでいるうちに、気がつけばサロベツ原野だった。抜けるような青空。前方右手にはちょっぴり雲が被った利尻富士が見える。今走っている道は、水平線まで続いている。本当に日本なのだろうか? ここは。
日本海へ出て、海沿いの道を北上する。ちょうど夕時で、空は群青色。窓を開けると、初夏の気持ちいい風が吹き抜けていく。ドアミラーには宝石のようなNSXと利尻富士が映る。このまま永遠に、この瞬間が続けばいいのに……。稚内で宿泊し「どうせここまで来たのなら」と、日本最北端の地、宗谷岬を目指した。あいにく空は曇天模様。撮影後、別取材のため2泊することになる旭川へ向かった……。
楽しかった北海道ツーリングもあっという間に終ってしまった。結局東京〜北海道往復で7日間、計4000km程走破した。