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スカイラインGT-R×NSX 東京〜北海道ロングツーリング

日本を代表する2台のスポーツカーが見せたもの

日産BNR34型GT-RとホンダNSXの2台で、北海道まで4000kmのロングドライブを敢行。そこから見えてきた、2台の魅力、違いは何か?
『日産自動車』を代表するスポーツカー、スカイラインGT-Rといかにも『ホンダ』らしいミッドシップスポーツカー、NSX。名実ともに、日本車を象徴する2台である。
その成り立ちは全く異なる。スカイラインGT-Rはレースに勝つためにこの世に生を受けた。一方、NSXは戦後の高度成長を突っ走ったホンダの「若々しい」フラッグシップモデルとして登場した。

そして奇しくも、スカイラインGT-R中興の祖といえるBNR32型スカイラインGT-Rが発売された平成元(1989)年、NSXはプロトタイプを発表(発売は翌年)。両車に共通していたのは、ともに世界の技術水準を凌駕する性能を持っていたこと。このため日本のみならず、両車は世界から注目を浴びたのだ。

乗用車ベース4WDのスカイラインGT-Rに対し、アルミボディ+ミッドシップのNSX。全くコンセプトが異なる2台だが、サーキットでは好敵手となり得た。
他メーカーも両車に触発された。国産メーカーでは、スバルや三菱は乗用車ベースの高性能車を発売した。またフェラーリはNSXに大きな影響を受けたといわれている。スポーツカーの技術水準を大きく引き上げたきっかけが、スカイラインGT-RとNSXともいえるのだ。

両車はまた、常にアップデートを重ね、その時代最強のスポーツカーであることを求め続けた。スカイラインGT-RはBCNR33型、BNR34型とモデルチェンジを重ね、旧型の持っていた弱点を潰し続けた。
一方NSXはモデルチェンジという手法をとらずマイナーチェンジやサーキット走行に特化した「タイプR」を投入することで、常に時代をリードしてきた。

異なるアプローチでともに国産最速を目指した

気がつけばスカイラインGT-RとNSXは、いつもそばにいた。スカイラインGT-Rの好敵手はNSXであり、ライバルを知ることでスカイラインGT-Rのことをより深く理解できるはずだ。そこで、改めてこの2台のカリスマを再検証することにした。

用意したのはBNR34型スカイラインGT-RVスペⅡニュル。対してNSXは平成15(2003)年式。どちらも最終進化モデルをチョイスした。エポックメイキングだった両車は、10年以上におよぶ進化の中で、どこまで到達したのか。両車について一番よく知ることができるモデルだと考える。目的地は北海道。走行距離は片道2000kmを超えることになるだろう。ここで、スカイラインGT-Rサイドから見たホンダNSX進化の歴史を振り返ってみよう。
BNR32型スカイラインGT-R発売から遅れること1年、NSXは平成2(1990)年9月に国内で発売された。当時世間をアッといわせたオールアルミ・モノコックボディの採用や、自然吸気で280psを絞り出す3リットルV6VTECエンジンの採用が話題を呼んだ。CARトップ誌が当時行った筑波サーキットテストでは1分7秒77(5速MT)をマークしている。ちなみにBNR32型スカイラインGT-Rは同テストで1分6秒72を記録している。

その後NSXは15年の長きにわたり進化を続けた。スカイラインGT-RがR32からR33にスイッチした平成7(1995)年には、いち早くドライブバイワイヤ(電子制御スロットル制御システム)を採用。平成9(1997)年にはスカイラインGT-Rより2年先行して6速MTを搭載している。

一方スカイラインGT-RがBNR34型で空力性能を追求すれば、NSXは平成14(2002)年のタイプRでエアロダイナミクスを進化させた。
最終的にNSXは件のタイプRで筑波サーキットにおいて1分4秒20を叩き出すことに成功した(一方スカイラインGT-Rは第2世代のGT-RではBCNR33の1分3秒58がベスト)。
車両の成り立ち、コンセプトこそ180度異なる2台だが、独自のアプローチで国産最速の座を目指していたのである。

燃費ではNAエンジンのNSXに軍配

ツーリングに連れ出したNSXは最終モデルのタイプS。快適装備はそのままに、40kg以上の軽量化を施しスポーツドライビングに特化した仕様である。
カーボンフルバケットシートやチタン削り出しシフトノブ、メンテナンスリッドやサイドインテークに軽量メッシュグリルを採用している。
この個体はノーマル状態をキープした平成14(2002)年式で、走行距離は約3万km。12年前からタイムスリップしてきたかのような、コンディションを維持していた。

ドライビングポジションはスカイラインGT-Rより低く、スポーツカーそのもの。スカイラインGT-RからNSXへ乗り換えると、車重をまったく感じさせない走りっぷりに驚く。1.3t強しかないボディを高回転まで回るV6エンジンと6速MTを駆使してワインディングロードを駆け上がると本当に楽しい。サスペンションも標準より固められているというが、不快ではない。これでエンジンサウンドがスカイラインGT-Rが搭載するRB26DETTエンジン並みに官能的であれば、文句なしだ。

ツーリングを通して、BNR34型スカイラインGT-RVスペⅡニュルとNSXで、一部区間での燃費を計測してみたところ、R34VスペⅡニュルが7.88km/L(2231km走行で283.1L消費)に対して、NSXは10.33km/L(2167.8km走行で209.84L消費)だった。BNR34型スカイラインGT-RVスペⅡニュルは、エンジンはノーマルではないので一概には比べられないものの、NSXの燃費性能は驚くべきものだ。

函館〜富良野〜美瑛へ向かう2台のスポーツカー

「本フェリーは、6時20分に函館港へ到着する予定です」。
FIFAワールドカップ・ブラジル大会の模様を放映していたテレビは、気がつくと消えていた。どうやらほんの少し眠っていたようだ。船窓の外は、薄曇りの函館港。ついに北海道に到着したのだ。6月17日15時、東京都文京区本郷の編集部を出発した取材班は、首都高速から東北自動車道に乗った。目指すは北海道。別の取材も含めると6泊7日の長旅である。
函館港を降り立ったわれわれは、今にも雨が降りそうな中、金森赤レンガ倉庫で上陸最初の撮影を行う。目的地は特に決まっていないが、撮影するなら天候はなるべく晴れたほうがいい。とりあえず、天気予報で「晴れ」と出ている地域に向かうことにする。さあ、雨雲とデッドヒートの始まりだ。編集長の「富良野に行きたい」という一言で函館から道央へ向かう。いきなり400kmのドライブはフェリーでろくに寝ていなかったわれわれにはきつい。フラフラになりながらGT-RとNSXを交互に乗る。
富良野で撮影後は「ケンとメリーの木」で有名な上川郡美瑛町へ立ち寄る。天候は曇りだったものの、雲間に抜けるような青空が見えてきた。

北海道のほぼ中央に位置する美瑛町は、面積が東京23区に匹敵し、その15%を畑地が占めるという。まるでアメリカの片田舎のような風景の中2台を置くと、本当に絵になる。その後さらに東に進み、北見で一泊。途中雨雲に追いつかれ、北見を抜ける峠道では雨に祟られた。

夜、6月だというのにまだ肌寒い北見の繁華街で夕食をとりながら翌日の目的地を決める。
「検索すると、サロベツ原野っていうところがいい景色らしいですよ」
「サロベツ原野ってどこだっけ?」「稚内です」。
皆、無言になる。だが、天気予報を確かめると、旭川より北しか晴れていない。よし、行こう! 北海道に詳しい読者が読んだら呆れるようなジグザグルートで、稚内を目指すことになった。

翌日はオホーツク海を右手に見ながら238号をひた走る。クッチャロ湖でターンし今度は日本海側へ。
のんびりドライブを楽しんでいるうちに、気がつけばサロベツ原野だった。抜けるような青空。前方右手にはちょっぴり雲が被った利尻富士が見える。今走っている道は、水平線まで続いている。本当に日本なのだろうか? ここは。
日本海へ出て、海沿いの道を北上する。ちょうど夕時で、空は群青色。窓を開けると、初夏の気持ちいい風が吹き抜けていく。ドアミラーには宝石のようなNSXと利尻富士が映る。このまま永遠に、この瞬間が続けばいいのに……。稚内で宿泊し「どうせここまで来たのなら」と、日本最北端の地、宗谷岬を目指した。あいにく空は曇天模様。撮影後、別取材のため2泊することになる旭川へ向かった……。
楽しかった北海道ツーリングもあっという間に終ってしまった。結局東京〜北海道往復で7日間、計4000km程走破した。

ドライバーが対等に対話できるR34&NSX

BNR34型スカイラインGT-RとNSXは、アプローチこそ異なれど、「ドライビングプレジャー」を追求しているという点において、志は共通している。
スカイラインGT-Rにロングツアラーとしての資質があることは、今さら説明するまでもないだろう。
第2世代GT-R の集大成ともいえるBNR34型スカイラインGT-Rは、強靱なボディ剛性とゲトラグ6速MTのおかげで、快適な高速クルージングを楽しむことができる。
一方のNSXも、これほどまでに長旅が心地よいとは予想していなかった。一週間分の荷物をトランクルームに収め、リヤから聞こえてくる乾いたV6サウンドをBGMにしながら、このままどこまででも走り続けたいと思わせる。そんな味わい深さがあった。

稚内へ向かう道中、荒れた路面が延々と続くワインディングに出くわした。2台は水を得た魚のごとく、高いスタビリティを維持しながら次々と華麗にコーナーを駆け抜ける。ともに開発過程において「ニュル」で徹底的に鍛え抜かれたという史実が、ステアリングやシートを通じてドライバーに伝わってくる。
絶対的なパフォーマンスに関しては、現代のスーパースポーツに分がある。しかし、BNR34型スカイラインGT-RとNSXには、ドライバーを置き去りにしてしまうようなやり過ぎ感がない。両車、3ペダルのMTであるということも大事な要素だと感じた。クルマと人、どちらかが主導権を握るのではない。あくまで、対等に対話ができる。
憧れの存在であると同時に、等身大で付き合える。だからこそ、多くのファンに愛され続けている。今回の旅で、そう確信した。

(レポート:GT-Rマガジン編集部)

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