駆動系の抵抗が少ないパワーを食っている
機械式LSDといったら走りの必需品。グリップでもドリフトでも、直線だけのドラッグでも有効な武器だ。しかしNAの軽自動車に代表される、パワー少ないクルマでは機械式LSDではない通常のデフ、通称『デフなし』が有利な状況もある。
LSDを使うメリットはトラクション性能の向上だ。細かいメカニズムは割愛するが、エンジンのパワーを確実に路面へ伝え、クルマを前に進ませるパーツと理解してほしい。
理屈からいえばLSDがデメリットになることはないはず。一般的にはLSDは、サーキットではタイムアップに有効なパーツといえるだろう。
ところが唯一の例外となるのが、NAの軽自動車のようなローパワー車だ。
LSDが効けば効くほど抵抗が増えて、いわゆる『パワーが食われた』状態になってしまう。結果的に長いストレートで車速が伸びず、タイムが上がらないケースも少なくないという。
富士スピードウェイやスポーツランドSUGOでは特に顕著で、LSDがコーナーで稼いだマージンを直線で相殺される、といった話は軽自動車レース界では常識となっている。
LSDの効きをあえて弱めると速くなる
もう少し排気量が大きいクルマ、ヴィッツなどのコンパクトカーでも、その傾向は変わらない。パワー差がなくチューニングもできないワンメイクレースでは、「デフなし」のほうがいいとまではいわないが、LSDを搭載するときは効きを弱める設定に調整することは日常茶飯事だ。
もちろん、直線の短いミニサーキットや、タイトターンが多いジムカーナとなれば話は変わる。トップスピードが抵抗で抑えられてしまっても、コーナーからの立ち上がりでタイムを稼いだほうが、結果的にタイムアップに結びつくだろう。
つまり、デフなしよりLSD付き、FFより4WDとトラクション性能が高いと駆動系の抵抗も大きくなる。
では、このようなケースを日常ユースのクルマ選びに当てはめると、燃費性能とトラクション性能は相反する要件といえるだろう。
市街地などフラットな地形に住んでいる人なら特別トラクションの高いクルマは必要ない。となると駆動系の抵抗が少ないFFやデフなしがオススメとなる。
その一方で、山間部など坂道の多い、さらに小さなカーブが多い地域に住んでいるユーザーは4WDやLSD付きを選ぶと良いということになるだろう。
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