ナットの角がホイールを削ってしまう
ホイールを固定するさまざまなタイプのナットが販売されているが、締め込んでいく際にホイールの座面を傷付けているケースがある。とくに締め付けトルクが大きいインパクトレンチを使用すると、締めすぎてナットがホイールに食い込んでしまうのだ。
さて、下の写真でもっとも優れたナット?そしてもっともダメなナットは?
結論からいうと、もっともダメなナットは左二つ。もっとも優れているのが右端だ。
その理由はというと、先端の形状にある。右端のトヨタ車用は、ワッシャーが付いているとこもホイール用のナットとして優れている点だ。
左がダメなナット。赤い矢印が指している六角レンチを掛ける部分の角が丸くなり、キズが付いている。
一方、先端がキノコのようにエラが張っているナットは、青の矢印が指している部分までしかキズがない。
それぞれホイールにナットを締め込んだときにできるキズで、どこまで深く入っているかがわかる。
左のダメなナットは、締め込んでいくとホイールにドンドン食い込んでいって、六角部分の角でホイールを削ってしまう。一方、先端がキノコのようにエラの張ったナットは、締め込んでも一定のところで停まり、ホイールを削ることもない。
そもそもインパクトレンチを使用すると、ナットの締め込みすぎる傾向にある。ダメなナット+インパクトレンチの組み合わせは、もっともホイールを傷付けてしまうわけだ。
ホイールナットを締めるときは、十字レンチで手締めすることをオススメする。
タイヤホイールのドクター・バランスを謳う京葉サービスの阿部氏によると
「締め付け規定トルクは、新品ナットとスタッドボルトでの話。何度もホイールを取り外ししていると、当然のことながらネジピッチは広がってきます。つまり、規定トルクで締めても緩いこともあります。職人は、そのヘタリ具合を十字レンチのしなり具合で判断して、最適な取り付けをする」と語る。
一般的なテーパーナットを使用している場合、少々価格は高くなるかもしれないが、先端がキノコ状でエラの張ったタイプを選ぶべきだ。
ハードな走行をすると、ブレーキからの熱などがハブからスタッドボルトを通じてナットへと伝わる。スタッドボルトはスチール製で、一般的なスチール製ナットは、材質が同じなので熱膨張率はほとんど変わらない。
しかし、アルミ製ナットは膨張率が異なるから、ナットとスタッドボルトのネジピッチ・クリアランスが異なった変化をする。つまり、ネジの掛かりが緩くなる可能性があり、大きな力(横G)が掛かったときに外れたり破損したりする可能性もあるわけだ。サーキット走行をするユーザーは、スチールナットのほうが良いだろう。
ワッシャーが面でホイールを固定するストレートナット
もっとも優れていた先端がストレートなナットは、締め込んでもホイールに食い込まない。
テーパータイプでも、ワッシャー部がホイールに接触したところから締め込んでもホイールを傷付けにくい。さらに締め込んでいけばワッシャーがつぶれて面接触するので、均一にトルクがかかりホイールを安全に固定できるわけだ。
まさに、たかがナット、されどナット。侮ってはいけないパーツなのである。
(取材協力:京葉サービス TEL03-3698-4733)
【関連記事】