試乗してあらためて確認できた
ミニバン専用タイヤの必要性
国産タイヤメーカーの「トーヨー」が、トランパスシリーズに新商品『トランパスML』を追加。その試乗会が、袖ケ浦フォレストレースウエイ(路面のμは一般路と同等)で行われた。
試乗会では、トランパスMLとスタンダードなミニバン用タイヤとして販売されているトランパスmpZ、そしてセダンやワゴンなどの乗用車のナノエナジー3+という3種類のタイヤを同じミニバンに装着。それぞれの特性を正確に比較することができた。
ミニバンにとって重要なのは、4名以上の乗車や荷物を積んだ状態で高速の操縦安定性。その状態で、タイヤがどのような働きをするのかが、チェックすべき重要な項目だと個人的には思う。
今回の試乗会では、1名または2名での乗車と、ほぼ空荷状態でのテストで重荷重状態での走行は実現することはできなかった。
とはいえ、トーヨーが重心高の高いミニバン用のタイヤでサイドウォールのタワミやねじれに着目、対応した点は偉いと思う。
トーヨー社内の「ドラム式抵抗試験機」で抵抗値を測ると、mpZを100とするとMLは92と8%向上。MLは全サイズAAを実現する。
ウエット性能はコンパウンドの進化によりmpZを100とすればMLは102と2%向上している。ウエットはbなので、つまりタイヤラベリングは「AA-b」となる。
加えて構造の変更により横方向の剛性を高めてフラ付きを低減し、コーナリング性能も高く、偏摩耗を抑制している。
高速レーンチェンジのステア操作が超楽ちん
袖ヶ浦フォレストウェイでの走行では、コーナー進入で減速しながら舵角を大きく与え前輪荷重を増大させても、タイヤのタワミはなくノーズがインに引き寄せられる。とくにMLは、その傾向が強い。
重心高の高いミニバンで急転舵の高速レーンチェンジから直進状態に復帰するとき、タワミやねじれで変形したタイヤは元の形状に戻ろうとする。
ステアリング操作のタイミングが合わないと、クルマの挙動は乱れやすくなる。
そのような状況で、mpZやMLは、タイヤのタワミやねじれからの揺り返しが起こらず、ステア操作した通りにクルマが動き、じつに素直に姿勢が戻るのである。
ところが、セダン用タイヤのナノエナジー3+ではタワミやねじれが大きく、直進状態に戻るときロール角の戻りとは別にタイヤ形状の変化に合わせてステアリングをジワッと戻す必要があった。
このような特性が、ミニバン用タイヤならではの優位性を感じさせられる。
旋回ウエット路では、旋回ブレーキングをチェックした。
mpZは前後タイヤがバランス良くスライドしながら軌跡がアウト側に膨らむ。このときの挙動変化は一定で修正舵の必要はない。ブレーキで車速を落とせば元の軌道に戻すことができる。
MLは舵角に対する応答性が優れている分、フロントタイヤの応答がよくリアタイヤが外に出て行くような印象。注意深く観察するとフロントがより曲がる=インに入るため、リアタイヤのグリップ力が薄くなるように感じさせる。
もしかすると、4人以上乗車などのミニバンらしい使用状況でリアタイヤの荷重が高い状態では、前後タイヤのバランスが良好になるのかもしれない。
トータルしたバランス感覚ではmpZの一定の挙動が好ましい。だが、曲がる性能がアップしたMLの進化は明らかだ。
それぞれのタイヤのサイズラインアップや特性からターゲットにしている車種は、mpZは標準グレード、MLはロープロファイルタイヤを採用したスポーティなサスペンションを装着するグレードと感じる。
トーヨータイヤ http://toyotires.jp/
(レポート:桂 伸一 撮影:増田貴広)
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