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三菱「燃費不正問題」で日産が得たものとは

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ユーザーや日産へと支払う三菱自の膨大な補償金

ひとたび不正が表沙汰になれば、三菱の企業価値はどん底に落ちるのは必至。国としても大きなピラミッド構造を持つ自動車産業の一角が崩れることは避けたい。
できるだけ早くこの問題を終結させ、水島工場周辺を正常な稼働状態に戻したいはずであった。そうした追い風を受け、日産は一気に連休中に交渉を進めたに違いない。

三菱自動車・水島工場

三菱自動車・水島工場

それだけではない、5月12日の提携発表でも日産のしたたかな戦略が見える。ポイントは提携“妥結”ではなく、“覚書”というスタイルを取ったことである。
現段階では、今回の件に関するユーザーへの補償問題、税金に関する諸問題、そして日産の売上損失に関する補償問題が残っている。これらをすべて綺麗に清算してから三菱自を引き取るというメッセージではないだろうか。

5月12日の発表で、額面上は2370億円で日産が三菱自を買い取ったようなものだが、前述の日産への補償問題等を含めれば、事実上、タダ同然で三菱自を引き取ったようなものではないだろうか。その結果が、ゴーンの満面の笑みに現れているように思えてならない。

繰り返すが、日産は軽自動車部門を欲しがっていた。
実際、ゴールデンウイーク中に日産ディーラーの営業マンに聞けば、
「軽自動車は商談から納車までの流れが早い。普通自動車と違って、軽自動車はもろもろの手続きが簡単なのです。だから年度末や月末の駆け込み登録でポイントを稼ぎやすい。その軽自動車が売れないのは本当にツライですよ」という。
そして、早期の軽自動車販売再開を望む立場である営業マンは「日産が三菱自動車を吸収するのが近道ではないでしょうか」と語っていたから、日産側の現場としても大歓迎であることは間違いない。

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もうひとつ、日産は今回の提携劇で大きなオプションも手に入れた。
国内市場では低迷する三菱車だが、中国大陸では大きな存在感を示している。3月6日付のレコードチャイナの記事によれば、中国国内の自動車メーカーの大半が三菱のエンジンとトランスミッションがないとクルマを作れないのだという。MMTh_2_Line_L
信頼性が高いというのが、その理由だそうだが、一説にはその数500万台という。これは日産にとって、中国大陸への本格的進出を目指す上で、軽自動車部門以上に魅力的だったに違いない。

今回の提携劇。筆者は見事な詰将棋を見た思いである。戦国時代の名将のごとく、戦わかわずして勝つ。旧領主陣の切腹と引き換えに、その家臣と領民の生活を保障するというのが今回のあらすじではないか。

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5月12日の記者会見場に、まるで敗戦の将を従えるようにやって来たカルロス・ゴーン。まさに戦国時代の斉藤道三のように見えた。「マムシの道三」ならぬ、「マムシのゴーン」である。

そして日産の本格的リカバリーショットはこれからである。周囲の想像を超えるスピードで軽自動車の販売を再開し、次期型軽自動車を投入してくるはずだ。
(文中敬称略)

(文:酒呑童子)

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