約40年ぶりに搭載された4気筒エンジン
ダウンサイジングターボを採用する
VIPカーのベース車両として人気の高いクラウン。
210系と呼ばれる現行モデルは、2種類の排気量のV6エンジンと2.5リットルハイブリッド、そして2リットルと4タイプのエンジンを搭載する。
じつはクラウンにとっての4気筒モデル、しかも2リットルエンジン搭載は、ディーゼルやタクシー仕様を除くと1967年に登場した3代目モデル以来のことなのだ。
そんな末っ子モデルは、軽量なダウンサイジングターボエンジンということあり、1630kgのボディを難なく走らせる駿足ぶりを見せてくれた。
今回試乗したのは、「クラウン・アスリートG-T・ジャパンカラーセレクションパッケージ」という2リットルターボエンジンを搭載するアスリートのなかでもっとも上級なモデルだ。
ジャパンカラーセレクションとは、「紅(くれない)」、「仄(ほのか)」と漢字のネーミングを持つ全12色のボディカラーのこと。試乗車のボディカラーは、そのなかの一色「茜色(あかねいろ)」というオレンジメタリック。30万2400円と高価なメーカーオプションだ。
ここまで個性と存在感を放つボディカラーは珍しい。純正ならではの色の深みやクオリティなどオールペンしたと考えればむしろお買い得な感じ。
ちなみにクラウン・アスリートG-Tの車両本体価格は533万円。これに前述のボディカラーや19インチホイール、予防衝突安全装備などのオプションを加えると価格は601万1480円となる。
現行モデルである210系クラウン・アスリートが搭載するエンジンは、3.5リットルと2.5リットルのV6、2.5リットル直4のハイブリッド、そして2リットル直4ターボの4種類だ。
当然のことながら排気量が大きいほど、パワーやトルクの余裕はある。しかし、今回試乗したアスリートG-Tが搭載する2リットルターボこそ、今流行のダウンサイジングターボ。小排気量エンジンをターボで強化しているだけに最高出力は235ps、最大トルクが35.7kg。
クラウン・アスリートG-Tには、ナビと協調するなどしてコンピュータが自動的にサスペンションのダンパー減衰力を制御する機能が付いている。
その効果はじつに自然で、運転しているときにダンパーの設定が変更されたことはまったく気が付かない。
クラウンといえば、ソフトな乗り心地が信条のように思われがちがだが、2世代前の18系ゼロクラウン以来、ドライバーズカートして着実に進化していることがわかる。
東京の首都高速のようなカーブの多いところでは、じつに軽快なフットワークを示す。とくにステアリングを操舵したときのノーズの軽さは、4気筒エンジンの恩恵だろう。
トランスミッションは、3.5リットルV6エンジン搭載車と同じ8速AT。ミッションのギヤ比もファイナルギヤ比もまったく同じだ。
このように大排気量モデルと小排気量モデルが同じギヤ比のパワートレーンを使っている場合、小排気量モデルでは加速が鈍く感じたりするのが一般的な傾向だ。
ちなみに、100km/h時のエンジン回転数は8速が約1700rpm、7速で2000rpm、6速では2500rpm。80km/hあたりから追い越しをしようとすると、シフトショックはないが普通にアクセルペダルを踏み込むと6速までシフトダウン。
そこからの加速感は、さすがに大排気量エンジンのような力感(トルク感)はないが、スルスルっと車速は増していき、そのままの速度レンジを維持することもまったく苦にならない。
低燃費を求めるならエコモードだが
センタークラスターのメインモニターの下には、エアコンや走行モードを変更するモニター式操作パネルがある。ワンタッチで「エコ」、「ノーマル」、「スポーツ」といった走行モードを選ぶことができる。
エコモードは、ハッキリ言って市街地走行または高速道路をゆったりと流すなど、アクセルを一定にして走行するときは最適だ。
ところが、少し速く走ろうとするなどアクセルコントロールを必要とするシーンでは、エコモードではアクセルの反応が緩慢すぎて逆に扱いにくい。
今回は、高速道路を中心にゆっくり走ったり、ちょっと急いだりなどさまざまな走行パターンで1500kmを移動した。
高速道路で追い越しなどが必要とする走りをするときは「ノーマルモード」が良い。「スポーツモード」は、ステアリングの操舵感を重めにするなど安定感は増すのだが、エンジンの回転数を高めに保とうとするので高速道路では燃費低下などを考慮すると、ちょっと選択するのは躊躇してしまう。
スポーツモードは、ワインディングロードなどを走るとき限定という感じだろう。
ノーマルモードは、パワーステアリングの設定が軽く、市街地走行ではスルスルとハンドルが回せて女性でも扱いやすいだろうが、高速道路で速度が高まったときはもう少し手応えがほしい。
高速道路の車線変更などでは、軽い操作でハンドルが動かせるので、丁寧にステアリングを動かさないとドライバーによっては意図した以上に舵角を与えてしまうケースもありそうだ。
ただ、速度に応じてパワーステアリングの設定が変化するため、高い速度域で巡航しているときのほうがステアリングフィールは良好。
個人的には、スポーツモードのステアリングの重さやサスペンションの減衰力で、エンジンの制御はノーマルモードといった設定があると嬉しいところだ。
ハイオク仕様だがゆっくり走れば余裕で15km/L
燃費は、ゆったりと高速道路を流すと15km/L台を余裕でキープできる。
しかし、少しペースをアップすると12km/L以下になってしまうこともあった。このあたりは、ダウンサイジングターボの辛いところ。しかも、プレミアムガソリン仕様なのでちょっとガソリン代が気になるところだ。
とはいえ、速度域が高くなると8速でもエンジンの回転数が高くなるため、追い越しなどでは1速落としてもパワーバンドに入っているため非常に快適だ。
そのようなときは、ダウンサイジングターボの2リットル直4ということを感じさせない。このような味付けは、ちょっとヨーロッパ車のような感覚だ。
日本専用車らしいおもてなしとサイズ感
クラウン・アスリートの上級仕様である「G-T」の装備についても考察したい。
本革シートは、サイドサポートがシッカリしていて身体が動きにくい。しかし、見た目よりも座面はソフトでお尻を包み込むような感じでサポートしてくれる。
メーカーオプションのナビゲーションは8インチワイドモニターを採用。アフターのナビでは10インチ、11インチモニターが登場しているが、文字の大きさやシンプルな操作パネルなど非常に使いやすい。
さらに前述したように、エアコンや走行モードの選択ができる「トヨタマルチオペレーションタッチ」がメインパネルとは別になっているため、メインのモニターはナビとオーディオに集中しているところも操作性を高めているところだ。
これは、ルームミラー裏のカメラが対向車のヘッドライト、前走車のテールランプの光を感知して、ハイビームの照射内にクルマがいると自動的に遮光シェードを制御して適切な配光をする。
するとメーター内にはAHS(AUTO)とハイビームのインジケータが両方点灯し、前走車がいないときはヘッドライトはハイビームとなり、遠くを照らしている。
ハイビームの照射範囲に前走車が入ったとき、遮光シェードが光りを遮ってくれているのだろう。が、ドライバーズシートからの景色は大きく変わらない。市街地で対向車と遭遇したときも同じだ。
つまり、ハイビームで遠くを照らす広い視界が常に確保されているようなイメージだ。
これは長距離移動をする際には、疲労度を減らすことになること間違いない。
トランクは、写真のように十分な奥行きが確保されている。当然のことながら、ヒンジがトランク内に侵入しないので、ギリギリまで荷物を積んでもリッドを閉めることはできる。
ちなみにクラウンのボディサイズは、全長×全幅×全高が4895×1800×1450mm。
大人4人が乗っても十分な居住性を持ちながらも、全幅が1800mmを超えるクルマが増えているなか、じつはクラウンは意外とスリムなのだ。
じつは1800mmという全幅は、一般的な機械式立体駐車場に入れるか否かのボーダーラインとなっているケースも多い。
仮に1850mmまで入れるという機械式立体駐車場でも、じつはパレットの幅(トレッド部)が狭くてホイールを擦ってしまうケースも少なくない。
そのようなことを考えると、さすが日本専用車として作られているクラウンは、じつに日本の道路(駐車場)事情にもピッタリなクルマといえるだろう。
トヨタ公式ホームページ>>クラウン・アスリート
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