メーカー推奨のオイル交換サイクルは
ターボ車でも1万5000km毎になっている
ひと昔前は、エンジンオイルの交換サイクルは「5000km毎もしくは半年毎」というのが定番だった。
ところが、オイルの世界は日進月歩で、いろいろ事情が変わってきている。
その証拠に、オイルへの負担が大きい、高出力のターボ車である日産GT-R(R35)ですら、交換サイクルは15000km毎、もしくは1年毎(走行時、エンジン油温が110℃を超えなかったとき)がメーカーの基準。
じつは、エンジンオイルの交換サイクルが延びたポイントは、「SM」や「SN」グレードのオイルの登場にある。
クルマのメンテナンスフリー化が進む当今でも、オイル交換はメンテナンスの主役のひとつ。
エンジンオイルは、エンジンのストレスを吸収できる唯一の消耗品なので、エンジンを長持ちさせるためには、定期的なオイル交換が欠かせない。
そんなオイル交換だが、どのぐらいのサイクルで、どんなオイルを選んでいけばよいのだろうか?
京都議定書の制定で環境性能が求められた
まず、どうしてここへきて、オイルの交換サイクルが3倍に延ばせるほど、進化が加速したのか?
ターニングポイントは、2001年。前年の京都議定書の制定を受け、自動車業界全体として、環境問題に本気で取り組む流れができた。
オイルに関しては、低フリクションで省燃費性能の向上。さらに、触媒に優しく、硫黄やリンなどの含有量を減らす。
また、オイルの蒸発性を抑え、酸化安定性を高め、オイルの交換サイクルそのものを長期化することが求められるようになった。
その結果、API(アメリカ石油協会)のガソリンエンジン用のオイル規格にも、新たな最上級グレードとして「SL」規格が設けられた。
「SL」は、2001年以降のガソリン車に適用され、それまでの最上規格「SJ」の最低性能基準を上回る性能を有しているのはもちろん、高温時におけるオイルの耐久性能・清浄性能・酸化安定性を向上する。
同時に、厳しいオイル揮発試験に合格することを義務付けられた環境対策規格となっている。
「SM」グレードから交換サイクルが一気に延びた
2003年には、その「SL」規格よりも、省燃費性能の向上した環境対応オイル「SM」規格が登場。
有害な排気ガスの低減、エンジンオイルの耐久性を向上させた。
この「SM」には、新たに劣化油の低温粘度を計る試験が追加され、低温流動性、酸化劣化に優れたベースオイルが求められるようになった。
2010年には、最新・最上の規格として、「SN」が制定。
「SM」規格を上回る、省燃費性能、オイル耐久性、触媒システム保護性能が要求された。
具体的には、
・省燃費性能はSM規格対比0.5%以上の改善。
・オイル耐久性はデポジット(すすなど)の発生をSM規格対比14%以上改善。
・触媒システム保護性能の改善は触媒に悪影響を与えるリンの蒸発を20%までに抑制
というかなり厳しい規格となっている。
こうしたオイルの進化でとくに重要なのは、
・低フリクションで、環境に優しい低燃費性能
・長期にわたりオイルの性能をキープし、ロングライフ化
といった2点だ。
このような性能を与えた「SM」や「SN」グレードのオイルは、かつてのオイルよりも、ずっと交換サイクルを延ばせたわけだ。
ちなみに、例として取り上げた日産GT-R(R35)のメーカー指定オイルは、SNグレードの0W-40(銘柄はMobil 1)。
メーカー指定のオイルが「SM」「SN」であれば
交換サイクルは1年に1度または15,000km毎
というわけで、ここ10年以内=2006年以降に生産されたクルマで、メーカーの推奨純正オイルが「SN」や「SM」グレードというクルマは、そうしたグレードのオイルを選んでさえいれば、1年に1度の交換サイクルで十分(詳細は、各車の取扱説明書を確認してほしい)。
一方、2000年以前のやや古いモデルには、オイルの油膜でクリアランスを調整しているケースもあるので、そうしたクルマには、低フリクション(低粘度)のオイルは不向きというケースもある。そのような場合は、粘度の高いオイルをチョイスした方が安心だ。
ただし、エンジンオイルが長持ちするようになったとはいえ、量のチェックだけは、定期的に!
どんな高性能オイルでも、オイル漏れなどで量が減っていては、エンジントラブルは避けられない。2~3カ月に一度は点検しよう。
その際、オイルの汚れは無視しても構わない。
エンジン内部の清浄分散作用も、エンジンオイルの大事な仕事なので、オイルが黒くなるのはその仕事をしている証拠。規定量さえ入っていれば、走行距離(15000km)もしくは時間(1年)を目安に、交換してやればOKだ。
(レポート:藤田竜太)
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