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【チューニングカー今昔物語】レース用パーツからストリート用への対応

パーツメーカーが語る今と20年前の違い

1995年の規制緩和で表舞台に立てるようになったチューニングカー。
しかし、当時のチューニングパーツは、レース用の発展型であり、扱いやすさとは縁遠いものばかりだった。それゆえ、チューニングカーは一般道では扱いにくいクルマで、その乗りにくさを克服するのがオーナーのステイタスでもあった。
しかし、時代とともにパーツそのものも進化し、ナンバー付きで公道を走行するクルマ向けに開発。
トータルバランスを考慮した設計が施されるようになっていったのである。

【クラッチ】エクセディ

使用用途に応じてバリエーション拡大

平成7(1995)年ごろ、エクセディのスポーツクラッチ主力製品は、純正交換タイプの純競技用であり、ペダル踏力が重く、公道で乗りやすいというものではなかった。
ところが、クラッチ専門メーカーとして、純正と同じような感覚で使用できるソフト路線の多板クラッチとして、225φサイズのツインプレートクラッチを開発。
発売当初は、その扱いやすさに物足りなさを感じる人が多く、販売は苦戦しましたようだ。
だが、徐々に市場も扱いやすいクラッチを求めるようになり、受け入れられていったのである。

BNR32型スカイラインGT-R後期より採用されたプルタイプ機構の良いところを生かした業界初の“クッション付きカバー”を開発。半クラッチゾーンを拡大され、大トルクに対応したクラッチでありながら、純正品並みの発進性能を可能とする。

極めつけは、F1へクラッチを供給していた技術を生かしたハイパーカーボンシリーズ。
この20年間、構造・素材ともに進化を続けながら市場トレンドをリードし、発想を製品に還元、一貫して乗りやすさを追求しながらも、モータースポーツで要求される性能を両立。ユーザー満足度の高い製品作りを行っている。

 

エクセディ http://www.exedy.com/

【ブレーキ】エンドレス

制動性能だけでなく環境性能もプラス

1990年代前半までのブレーキパッド材料の主流は「アスベスト」だった。
ところが、1995年ごろよりアスベストが環境や人体に与える影響が問題視されるようになり、エンドレスではいち早くこれを全廃し、ノンアスベスト製の開発に着手したのである。

当初は、多くの問題を抱えていたようだが、数多くの「トライ&エラー」を繰り返すことでバランスのとれた製品の開発に成功し、商品化する。
さらに、1992年にはブレーキダイナモメーターを導入し、開発スピードを飛躍的にアップ。
このように、ブレーキチューニングもここ20年で大きく変化しているのだ。

近年はパッドだけでなく、ローター、キャリパーも含めた三位一体のシステムで、ブレーキ容量を総合的にアップさせることで、性能向上させることを推奨しているという。最近はカーボンローターにも着手し、さまざまな可能性も探求している。

 

エンドレス http://www.endless-sport.co.jp/

【サスペンション】テイン

レース部品直系からカスタマイズ部品へ

1995年に実施された規制緩和まで車高調は一部のマニア向けのハードなチューニングパーツで、一般公道での使用は禁止されていた。
しかし、規制緩和以降は、誰もが気軽に買える、合法的なカスタマイズパーツへと変化したのだ。
これを機にユーザーからの要望も大きく変化し、硬い、乗り心地が悪い、作動音が出る、数年で錆びてしまう…などが一切許されなくなり始める。

このような要望に対応するため、テインは品質、性能の向上を徹底的に追求。
例えば乗り心地ひとつとっても、20年前の製品と比較すると、バルブなど内部構成部品は50%以上が大幅に設計変更され、現在の純正よりも乗り心地の良いセッティングと、作動音のない快適性の実現を可能にしている。

さらにテインでは、車両の加減速G、コーナリングG、車速を瞬時に感知して、常に走行状況に合わせた最適な減衰力に自動調整する、電動減衰力コントローラのEDFC ACTIVE PROを発売。
街中で求められる常に上質な乗り心地から、タイムを削るセッティングまで、多くのジャンルに対応した製品をリリースしている。

 

技術力の進化によってクルマの性能を変えた

チューナー、そしてアフターメーカーの声を総括すると、20年前と今で決定的に違うのは「技術力」。

もちろん、オーナーの趣味嗜好の変化もあるだろうが、20年前と比べて部品の精度、セッティング技術、乗り心地が良くなったのは、製造マシンの性能やセッティングツールの進化などが高まったからだ。
つまり、ツールとそれを扱う技術者の技術レベルが上がったからにほかならない。

いい機械を使って、いい仕事をする。それをベースに、経験というスパイスを加えることで個性が生まれる。それがショップのカラーになる。

さらに数字に表れない感性の部分。走る喜び、いじる喜び、所有する喜びをどう高めていくか。
これらはまだまだ詰める余地がたくさんあり、クルマはもっと楽しめる可能性が残っている。

(本記事は、2015年のGT-Rマガジンをベースに作成しました)

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