スリップサインが出て残り1.6mm
車検は対応できるがその実状は?
保安基準の上では、車検をパスできるタイヤの残り溝の深さは「1.6mm以上」と規定されており、摩耗の目安として「スリップサイン」が設けられている。
スリップサインと周囲のトレッド面の高さが同じになったときは、残り溝が1.6mmを下回ったと判断できるようになっている。
しかし、残り溝1.6mmでは雨の日のグリップ性能が低下したりするので、摩耗が進んだタイヤは早めに交換した方がいいといわれる。
車検時には実際に溝の深さを計測するよりもスリップサインの状態を見て判断することの方が多い。
ただ、もし機会があれば使用中のタイヤを外して点検してもらえばわかるが、タイヤは完全に均等には摩耗しないので、すべてのスリップサイン(1本のタイヤに10か所以上ある)が同時に現れることはない。
タイヤの内側または外側が極端に減る「片減り」を起こしていることも多い。最近では燃費を向上させるために空気圧を高めに設定しているために、タイヤの中央部だけが摩耗しているパターンも増えている。
また、前輪駆動車では前輪、後輪駆動車では後輪の方が早く摩耗するというように、タイヤごとのバラつきもあるので、スリップサインを見るときは、もっとも摩耗した部分でチェックする。
スリップサインが路面に触れるようになると、スリップサイン自体も摩耗し、それが進行すると見える面積が大きくなるので、もっとも摩耗している場所がどこかはすぐに見つけられる。
タイヤの使用限界ということであれば、スリップサインが出ていても、しばらくの間は実際にはほぼ問題なくそのまま走り続けることができる。いうまでもなくタイヤは物理的な理由で空気が抜けさえしなければ使えるからだ。
ただ、タイヤが摩耗するということは、トレッドのゴムの厚みが減るということなので、異物を拾った際に、パンクする可能性が高まることを意味する。とくに小さなネジや金属片がタイヤの溝に挟まった場合、溝が浅ければ浅いほど、タイヤに刺さりやすくなるのだ。
また、多くのタイヤでは、溝はトレッド面に対して垂直に切られておらず、V字型になっているため、摩耗が進むと溝が細くなり、また溝の容積が極端に少なくなる。そうなると、雨天走行時に、路面の水をうまく排出することができずに、「水に乗る=スリップ」が発生しやすくなる。
やはりタイヤに満足な仕事をさせるためには、スリップサインが完全に出てしまう前には早くタイヤを交換するべきだろう。
(レポート:松本尊重)
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