シリンダー内の摩耗は軽微
暖機運転がエンジンを守る
ヘッドが外され、いよいよピストン上部が見えてきた。1度だけ行ったオーバーホールから27万km。このシリンダーの中では、R32スカイラインGT-Rを走らせるためのエネルギーを、数え切れないほどの燃焼を繰り返して創出してきたわけだ。
ごらんのようにピストンの上部は見事にすすけている。しかし、意外にも均等な焼け方をしているようにも見える。しかも、どこかにオイルが回ってカーボンだらけというシリンダーは存在してない。
シリンダーには新車時に刻まれたクロスハッチと呼ばれる傷のような表面処理はしっかりと残されている。このクロスハッチとは、シリンダー内のオイルを溜めるスジ。ピストンとの直接接触を抑える役目をしている。
クロスハッチは10〜20万kmくらいでも消えないそうだが、一度もボーリングを施してないこのブロックは46万km走行してきた現在も残っていたわけだ。
ここまで来て、カムカバーに付着していたカーボンの原因がまだつかめない。
ヘッド裏側のバルブ面を見ると、4〜5シリンダーのエキゾースト側がやや焼け気味になっている。
ちなみにカムの軸受けなどは、これが46万kmかと思えないほど摩耗は少ない。
シリンダー内のクロスハッチも含め、これは日常的に油温管理がしっかりと行われ、特に暖機運転をして油温・水温が適温(油温は70度以上、水温はメーターの針が中央を指したくらい)になるまで負荷をかけた走行をしていなかった証拠だ。
どんなに大切に扱ってきても摩耗する部分は摩耗する。
もちろん、扱い方でその摩耗の進行が早いか遅いかは大きく異なるが。
ピストンリングがカーボンで固着
大切に扱っても避けられない劣化なのか
コンロッドとクランクシャフトが切り離され、ピストンをシリンダーから引き出す。
するとピストンのサイド面には、カーボンがベッタリと付着していた。
これが27万km(前回のオーバーホールからの距離)の痕跡なのだ。
27万kmを走行してきたピストンは、3本あるピストンリングの下までカーボンが付着。
さらに検証を続けると、ピストンリングのすき間にあるカーボンがその動きを阻害していたようだ。
これでは、燃焼室内にオイルが回ってしまう。燃えたオイルは、ブローバイガスをカムカバーへと送るパイプから混入していたようだ。
ピストンが摺動するとき、ピストンリングが新しいときは張りがあるのでシリンダーと密着。しかし、徐々にピストンリング自体の摩耗とヘタりからシリンダーとの密着度は下がってくる。
そうなると、シリンダーに付着しているオイルを拭いきれなくなり、燃焼時に一緒に燃えていまうわけだ。燃えたオイルはカーボンなどになり、エンジン内に蓄積していく。
こう考えると、エンジンの寿命を延ばすには定期的なオーバーホールが必要なことがわかるだろう。
クランクシャフトとコンロッドを結ぶ
メタルは予想外に良好なコンディション
ちなみにクランクシャフトとコンロッドの間にあるメタルは、以下の写真のように摩耗はしているが、27万kmとは思えないほど軽微。しかも、メタルには張りがしっかりと残っていて、その機能を失っていない(ヘタったメタルは、簡単に外れてしまう)。
ばらばらになった走行46万kmRB26DETT型エンジン。
これまで、ピストン以外はすべて新車時からのパーツを使い続けてきた。
懸案はブロック。RB26エンジンは、一般的に13〜18万kmくらいでクラックが入るという。
そう考えると、このエンジンのブロックは完全に消費期限切れ。
オーナーとしては、パーツ一つひとつに愛着がある。
特にエンジンは、自分の心臓のような気持ちがあるので、当然のことながら継続使用を望んでいるのだ。
継続使用できたときは、0.5mm拡大のボーリングをする予定。まずはチェックすることになった。
果たして、ブロックは使い続けられるのだろうか?
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(撮影:吉見幸夫)
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