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「VIPセダン=ワイド&ロー」という概念、不変なり【Y32シーマ】

理想のVIPセダン像を実現するY32シーマ
流行に影響されずに己の感性で作り上げたフォルム

 セダンをイジる上で、昔も今も変わらぬキーワードがある。

 それは「ワイド&ロー」。VIPスタイル1月号(2017年)に輝いた日産Y32型シーマも創生期からの伝統を受け継ぐかの如く、重厚なフォルムに鍛えられている。
また技術が向上した今だからこそ、実現できたワザも数多い。この佇まい、必ず未来のVIP乗りに大きな影響を与えるだろう。

 誰が最初に言い始めたのかは定かではないが、VIPセダンといえば昔からワイド&ローが王道のスタイルであった。ローダウンは基本中の基本。さらにエアロも組み、もっと上を狙うならフェンダーにまで手を加える。するとノーマルでも大柄なセダンにイカツい雰囲気が備わり、近寄りがたいオーラを放つVIPセダンへと進化を遂げる。

 そのスタイルは時代によってアプローチの違いはあれど、多くの世代に浸透し、今の若いオーナーにも「VIPセダンはワイド&ローがカッコいい」というイメージを定着させた。

 そんなわけで、今でも迫力のある姿を求めてドレスアップするオーナーが非常に多いのだが、Y32型シーマに乗るKクンもその一人。

 走れる限界まで攻めた低車高。アーチを思いっきり上げているのに、自然な仕上がりを見せるワンオフのブリスターフェンダー。流行りを一切無視し、自分がやりたいことをすべて詰め込んで、1年半かけて作り込んだその姿は、まさに絵に描いたかのようなワイド&ロー。

「今はハデな仕様が流行っていますが、昔の雑誌を読んでVIPの原点を辿ると、すべてはワイド&ローから始まっていると思う。僕がその姿を目指したのは過去の有名オーナーさんの影響が強いですが、今はショップの技術が向上し、パーツも充実している。今回は僕が憧れたクルマの12段階上のクオリティで、自分なりの『ワイド&ロー』を作ったつもりです」とKクンは語る。

その迫力溢れるスタイルはまだ見ぬこれからのセダンオーナーにも受け継がれ、そして間違いなくこのシーマは彼らの話題に上がるはずだ。

超弩級の低車高×滑らかなブリスター
今の時代だからカタチにできた怒濤の重厚感

 まずこの仕様の要である、車高に注目したい。Y32型シーマは低車高にこだわるオーナーが多く、今はあえてエアロを組まずに極限まで低さを追い求める「純ベタ」スタイルも人気。

  Kクン自身も、低さにおいては一番を狙いたかった。

 そこでこの仕様を作る前にそれまで組んでいたエアロを脱ぎ、1年ほど純ベタ仕様で乗っていた。

「まずは純正バンパーの状態で落とせるだけ落として、走りながら腹下などを徹底的に加工していきました」。

 前後のメンバーは短縮、エンジンやデフなど上げられるものはすべて上げた。オイルパンは15mm短縮し、フレーム自体も一度切って再製作。これで不安要素はほぼ解消できた。

「純ベタで頑張っている方の気持ちが、良く分かった1年でしたね」。 セッションのフロントは56cm詰め、Y32型シーマ用KブレイクVラグの開口部を天地逆にして移植。
フォグはトヨタ・アルテッツァ ジータ用の純正。「木村サン(青森県)の15系マジェスタの影響です」。ライトはクリスタル加工。さらに他車種のマルチリフレクター&シェードを移植した。

 もうひとつのウリであるフェンダー加工を決意したのは、本国のOZMAEホイールを手に入れたことが大きい。この太いサイズは本当に稀少で、もちろんリバレル(リム組み替え)なし。

 キャップはミレニアム限定モデルに入れ替え。見えにくいが、ブレーキはブレンボを奢る。

「ディッシュは今の旬ではないですが、MAEは他にはない独特の雰囲気がある。このホイールの良さを知っている年上の方にはかなり好評です」。

 ホイールの魅力を最大限に引き出すならツライチ。ただこの低さ故にアーチをかなり上げないとならず、クッキリとしたオバフェンだといびつな形状になってしまう。だからナチュラルなブリスターを選択。スマートな雰囲気を出すためにドアノブ下のプレスラインを消し、代わりに鉄板のワンオフドアパネルでバランスを補整。かつて流行ったアイテムに目を付け、説得力のあるワイド&ローを作る。

 ニゾローのワンオフ車高調、Tディメンドのフルアームで前後共にリムでツライチ。フロントのキャンバーは「見え方がキレイだった」13度に決め、リヤはバランスを考えて15度にセット。ブリスターの美しさを優先して、給油口のフタはスムージングした。

高品質で居心地の良い空間を作る
シックな色調と表皮の使い分け

 外装だけにひたすら情熱を注いだのかと思いきや、車内を見ると徹底的に総張り替えというさらなるサプライズ。実は内装も、1年半に及ぶリメイクのメニューに入れていた。

「周りにはフェンダー加工はもちろん、内装までやっている人が多く、負けたくない思いがあったんです」。

 ハデな色使いだと長時間の運転が辛くなるので、メインカラーに白と茶色の2色を採用して落ち着いた雰囲気を演出。白は高級感の代名詞であるレザーを使い、ポイントでパンチングレザーも取り入れて質感を向上。すべてレザーだと逆に安っぽさを感じ、茶色の生地はアルカンターラをセレクトした。

 さらにシートベルトやマット、アルカンターラ部のステッチなど、アクセント的に赤もプラス。ステッチのデザインにもこだわり、縦に長い斜めのダイヤキルトで違いを出している。フロントのシートには、内装を手がけた「ワンメイク」のロゴを刺しゅうする。「(日産R35型)GT-Rの上級モデル、エゴイストの内装を参考にしました。このステッチで車内に動きを与えています」。天井も張り替え、LEDスポットライトを埋め込む。妥協は一切なし。時間をかけて作り込んだだけあり、内・外装共に満足度は非常に高い。製作中に味わった苦労は、今では大きな自信に変わった。小振りなハネはワンオフ。絶妙な立ち上がり角と自然に消えていくラインがウリだ。

兵庫県
加藤 智裕(24)
VIP歴5年
兵庫県はセダンの激戦区。「周りに凄い人たちがいたのが大きい。だから今の僕があります」。今後はキレイさを保ったまま、長く乗ることが目標だ。

VIP STYLE 1月号(2017年)
交通タイムス社

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