デザイン性と高強度&軽量は
製造方法でかなり異なる
走りにこだわる人からドレスアップ派まで、ひときわ高い関心度を集めているのがアルミホイール。
軽くて、きれいで、加工性に優れ、耐腐食性の強いアルミは、ホイールの素材にピッタリだ。
アルミのような金属を成形するには、鍛造、鋳造、プレス加工など、いくつかの方法があるが、クルマのホイールの製造は基本的に「鍛造」と「鋳造」に分けられる。
製品となった状態では同じように見えるが、じつはそれぞれの製造方法で異なる特徴を持っている。
溶かしたアルミを形に流し込む「鋳造」
アルミホイールの一般的な成形方法は鋳造だ。
鋳造とは、アルミを高温で熱し、ドロドロに溶かして、型(=鋳型)の中に流し込み、それを冷まして固めて成型する方法。
アルミの融点は660℃。ここまで熱すれば、金属とはいえ個体ではなく流体になるので、デザインの自由度が高く、精密で複雑な成形も可能。
鋳型さえ作っておけば短時間で成形可能。安く大量生産できるのがメリットだ。
強度と軽さを両立する「鍛造」
一方、鍛造はアルミを加圧して潰すようにして成形する方法。
金属には外から力を加えていくと、やがて元に戻らなくなる可塑性(かそせい)という性質がある。
鍛造では、この可塑性を利用して、アルミのビレット(塊)を約450℃に熱し、そこに1平方センチメートルあたり4〜8トンほどの圧力をかけて、ホイールの形に仕上げていく。
高い圧力がかかり金属の分子密度が高くなるので、同じアルミでも強度が高く変形しにくいホイールができる。また強度と耐久性に余裕がある分、より軽いホイールが作れるのも長所だが、高圧のプレスマシンなど大きな設備が必要で、工程数も多く、大量生産には不向きでもある。
精密で複雑なデザインは苦手で、コストが高くなる傾向にある。
下のイラストは、左が鋳造、右が鍛造の製作イメージ。それぞれ金型でホイールデザインが成形される。
しかし、最近は一般的な金型鍛造と言われる形でホイールデザイン成形する方法のほか、切削鍛造という削りだしによるマシニング処理でホイールを成形する手法も登場。
具体的には、まずは鍛造成型したアルミの塊(インゴット)を下の写真のようにホイール状に成形。
そしてエンドミル(超硬ドリル)でマシニング(削り)ディスク面を成形していく。
その他、アルミを半分溶けた状態にして、型に入れて加圧成型する半溶融鍛造や、鋳造ホイールのリム部を加圧して伸ばすMAT PROCESSなど、鋳造と鍛造、それぞれの特徴を併せ持つような成形法も考案されている。
このように、デザイン性、寸法精度、コストの面で利点があるのが「鋳造」。
材料の均一性、強度、耐久性、軽さでいえば「鍛造」といえるだろう。
ふたつの製法には、それぞれの持ち味があり、すべてのメリットを備えることは難しいのが現実。
なお、インセットやリム幅の自由度が高いのは2ピースといったマルチピースのモデルだ。
リムとディスクを分割させた構造のため、ディスクを共有化して、リム幅を変更することでサイズラインアップを増やせることができる。ディスクにはバリエは必要だが、モノブロックのような大掛かりな金型も必要ないということだ。
最近は、ディスク面やリムをそれぞれを鍛造で製造し、優れた強度を実現したマルチピースホイールも登場している。
ホイールは消耗品
歪みやキズをチェック!
これも大事なことだが、アルミホイールは永久保証品ではなく、消耗品のひとつ。
レースの世界では、ホイールは完全に消耗品と割り切っている。
レース用ホイールは軽さが最優先。
強度はあるが、クラックが入りやすかったり、耐久性は二の次だったりと、ストリート用とは設計指向がまったく異なっている。
とはいえ、ストリート用ホイールでも長期にわたって使えば、クラックが入ったり、ゆがんだり、曲がったり、ナット座が傷だらけになったりするので、いつまでも使い続けることはできない。
軽量ホイールにこだわる人は、鋳造・鍛造かかわらず、タイヤ交換の度にクラックや変形などを定期的にチェックすることを忘れずに(中古ホイールはとくに要チェック!)。
その点、純正のアルミホイールは、重さやデザインは……でも、タフネスさは抜群。
こうしたいろいろな要素がからんでくるから、ホイール選びは奥深い!?
(レポート:藤田竜太)
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