精密な組み上げとパーツのバランス取り
純正以上のスムースな直6エンジンを作る
多くのパーツの集合体であるエンジン。そのほとんどが何らかの回転運動をしている。
もし、その回転運動に僅かな歪みがあったら・・・、気持ちよいエンジンフィールを得ることはできない。
とくに6気筒エンジンともなれば、4気筒に比べパーツ点数が多く各部のバランスはさらに重要となる。
しかも、国産車では絶滅してしまった直列6気筒エンジンは、その長い全長もあり組み上げ精度が回転したときに影響されやすい。
「Kansaiサービス」では、ピストンやピストンピン、コンロッドの重量を一つずつ計測。これら6組みの重量がキッチリと揃うように、駄肉を削るなどの繊細な作業を行っている。
ちなみに上の写真の左はノーマル状態のコンロッド。右が無駄な部分をそぎ落とした加工済みコンロッドだ。いずれも、浅田さんのエンジンに使用されたもの。つまり、46万kmを超えた今、ハイバランス処理を施され、さらなる距離を刻むことになったわけだ。
バリはもちろんだが、製造過程で残るトップやサイドの突起は削り落とされる。これらの作業でコンロッドは1本あたり約12gの軽量化となる。つまり6気筒分で72g。
僅かな重さかもしれないが、1分間に6000回転以上も回るエンジンで数グラムの軽量化は慣性重量の軽減となり、それは良好な回転フィールとなって表れることは間違いない。
ピストンの外径とシリンダーの内径も計測。工業製品ゆえ例え新品でも僅かな誤差はある。それを考慮して精密に組み上げていくのだ。下の写真はピストンリングのバリ取りの様子。切れ目にヤスリを入れて角を丸めているそうだ。
こうすることで、ピストンとの干渉が低くなりフリクション低減になる。バランス取りとフリクションの低減。これこそスムースな回転フィールの要なのである。
46万kmクランクシャフトも継続使用
じつはクランクシャフトも継続使用することができた。
以前にも報告したが、親メタルおよび子メタルともにまだまだ使えるほどの張りが残っていた(ヘタっていなかった)。メタルが摩耗してなかったためクランクもコンロッドも回転運動が行われ、クランクシャフトにはほとんどストレスが掛かっていなかったのだ。
そのため、大きな歪みは発見されず、多少の修正は必要だったが使用できる状態だったわけだ。
クランクシャフトは、修正だけなくバランス取りも行っている。直列6気筒のRB26型エンジンは、クランクシャフトの長さがV型6気筒や直列4気筒より長いので、回転(重量)バランスが悪いとエンジンのフィールが悪くなってしまう。
さらにオイルポンプが装着される先端部は、前期型のRB26型エンジンは細い(左)。そこで、カラーを追加して後期型のように太くすることで強度をアップ。こうした信頼性を高める小さな作業を積み重ねることで、ノーマルではできないスムーズなエンジンフィールを手に入れることができるわけだ。下の写真は、エンジンを開けたときのヘッドまわり。オイルが燃焼室内に浸入してしまったために、ヘッド全体にスラッジが付着している。さらに、エキゾースト側のバルブシート(バルブが接触する部分)の当たりが悪く、ボツボツになっている。
右のバルブに比べ左のバルブのフチがザクザクなのがお分かりになるだろうか?
これは、バルブシートとキチンと密着できていなかった証拠だ。
その結果、高音になったバルブは、その熱をヘッドまわりに伝達して放熱することができず、シムに熱が伝わって焼けただれてしまっている。
さすがにバルブは磨いて再利用するにはコストが掛かりすぎるので(曲がっている可能性もある)、新品に交換することになった。
下の写真は、スラッジを取り除きバルブシートを再度研磨したヘッド。
バルブもシートカットが施され、ヘッドとの密着度を高められている。
このようにシッカリとバルブとヘッドが接することで、燃焼室内の気密性は確保されるのである。このように一つずつのパーツの精度を高め、さらに重量差を無くす繊細な作業を繰り返していたのである。
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(撮影:吉見幸夫)
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