トラックの速度超過による死亡事故が多発
平成15年より90km/hリミッター装着が義務化
高速道路でよく見かける、数珠つなぎになった大型トラックの列・・・。
ときには追い越し車線と走行車線にトラックが並んでイライラ。
なぜあのようなことが起きてしまうかというと、高速道路における大型トラックの事故防止を目的として、2003(平成15)年9月より速度抑制装置(スピードリミッター)の装着が義務付けられたからだ。
スピードリミッターによってトラックは90km/h以上は出せなくなっている。トラックに速度抑制装置が装着されるようになったというのは、当時(平成10年)高速道路で起こる死亡事故の約23%は大型トラックが原因で、死亡事故の約51%が大型トラックによる追突事故だった。
その約85%は法定制限速度80km/hを超えた速度で発生していた。
現在、最大積載量5t以上または車両総重量8t以上の大型トラックは、90kh/mでリミッターが働くようになっていて、それ以上は速度が出せない仕組みになっている(実際にはメーター読みで95km/h前後でリミッターが作動しているトラックが多い)。
そのため高速道路では、大型トラックが数台固まるとそこがダンゴ状態になり、なおかつ、89km/h、90km/h、91km/hとわずかなトップスピードの差でのバトル(?)もあり、その追い越し中に乗用車が追いつくと減速を余儀なくされてストレスを感じたり、道路の流れが悪くなることも……。
ただ、このスピードリミッターは、5t未満の中型・小型トラック、大型バスには装着義務がない(大型バスは、大型トラックに比べ高速道路での事故が少ないというのがその理由)。
そのため、大型トラックの運転手も、乗用車や中型トラック、大型バスに追いつかれたり、抜かれたりするたびに、ストレスを感じているだろうと推察できる。
トラックの死亡事故は40%低減
ドライバーへの負担は増えている!?
こうした問題について、役所はどう考えているのか?
国土交通省では、ちょうど10年前の2007(平成19)年に、大型トラックのスピードリミッターの効果・影響評価について調査を行い、その結果を発表している(以下の通り)。
(1)事故低減効果
大型トラックの交通事故への影響変化を見ると、高速道路での事故発生件数は全体的に減少傾向にあり、平成17年の大型トラックの死亡事故件数は、平成9年から平成14年の平均件数より約40%低減している。
(2)二酸化炭素の排出量低減効果
スピードリミッターを装着して走行速度が低下することにより、燃費向上の効果があることが認められる。今後大型トラック全車にスピードリミッターが装着された場合には、高速道路を走行する全体の自動車から年間55.5~118.5万トンのCO2排出量※が削減されると推計される。
※これは、京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日閣議決定)で定められた運輸部門における削減量(2450万トン)の約3%に相当するもの。(3)交通流等に与える影響
スピードリミッター装着車の混入率が高くなると、平均車速が低下する傾向にあるが、渋滞の増減や高速道路の走りやすさに与える影響について明確な傾向はみられなかった。
また、輸送の長時間化などの影響が一部に見られたが、物流体系や大型トラックドライバーの勤務体系に大きな変化は認められなかった。
このうち(3)の「交通流に与える影響」に関しては、実際のところかなり疑問。
大型トラックの運転手のストレスや、平均車速の低下を考えると、いまの高速道路事情で、最高速90km/hというのはマイナス面も多い気がする。せめて、追い抜き時のみ、数分間だけでも100㎞/hぐらいまで加速できる、オーバーテイクボタン付きの速度リミッターに進化してもいいと思うのだが、どうだろうか?
といってもお役所(警察)では、スピード違反を認めるする行為と絶対に実現しないだろう。
なかには、四軸低床の大型のトラックに装着されている扁平タイヤを、よりタイヤ径の大きい標準タイヤに履き替えて、メーター上90km/hでも、実測95km/hぐらいまでリミッターが働かないようにしているトラックもあるらしい……(車検上は問題ない)。