GT–RのS20型直6ツインカムを凌駕する
OS技研製TC24-B1Zエンジンの実力は!?
試乗車は400psを超える強力なエンジンに対して、タワーバーなど後付けの補強は奢られているが、基本ボディはロールケージやスポット増しなどといった補強は行われていないストックのまま。完全にパワーに対して車体が負けているので、まずは無理をさせず慎重に走り出す。
交換されたツインプレートのカーボンクラッチはミートに手こずることもなく、拍子抜けするほど扱いやすい。そして、繋がったと同時に、右足とエンジンが連結されたかのように、カンパツを入れずにエンジンが反応。アクセルペダルの動きに合わせて、力がわき出して約1100kgのボディを即前へ前へと引き上げていく。車体の挙動がある程度把握できたところで、アクセルペダルを徐々に踏み込む。
エンジンフィールはじつに滑らかで、高回転に向かってよどみなくシャープに吹き上がっていく。5000rpm以上になると、明らかにサウンドが変わり、タコメーターの針はさらに勢いを増す。8000rpm付近を目処にシフトアップをしたが、そのまま放っておくとどこまでも回り続けていきそうなフィーリング。
許容回転数が1万rpmというもの納得できる。全域どこでも自然吸気エンジンらしい面白さがあり、同時に気持ちを揺さぶる。クルマに乗って鳥肌が立つという体験は今まででも数少ない。
ただ、現状のサスペンションセッテングでは速度を上げていくと、高速道路ではステアリングから伝わる接地感が薄れて、まるで氷の上を走っているような感覚になる。
エンジンはアクセルを踏め、踏めとドライバーの心に訴えかけるが、脆弱なボディがその心にブレーキをかける。今は、エンジンのみが一人歩きしているので、本気でこのエンジンの性能を生かすにはボディ補強やサスペンションの見直し、ブレーキの強化などは必須だ。
気になるTC24-B1Zの価格はコンプリート販売で500万円以上と、目玉が飛び出るくらい高価だが、国内外の旧車ブームで3代目スカイラインGT–R(ハコスカ)が1500万円、4代目のスカイラインGT–R(ケンメリ)は3000万円以上する今、ホンモノを購入できる予算があれば、L型エンジンを搭載する3代目スカイラインのGT(それでも500万円くらいする)にTC24-B1Zを搭載。さらにボディ補強を行って、思う存分踏める楽しいクルマに仕上げることは可能だ。
趣味の世界において、その価値や基準をどこに求めるかは人それぞれである。ただ、いえるのは選択肢が多ければ多いほど、クルマ好きにとっては嬉しいこと。何が高尚で、何が低俗ではなく自分が満足できればそれでいいと思う。
確かに初代スカイラインGT–Rに搭載されるS20型エンジン(2リットル直列6気筒24バルブ)も名機であり、乗る人を虜にする素晴らしいエンジンだが、OS技研謹製のTC24−B1Zエンジンのパフォーマンスと官能性はそれ以上で、乗り終えて笑いと震えが出るくらい楽しかった。
最終的な良し悪しはチューナーの手腕に委ねられると思うが、持てるポテンシャルはまさに”一級品”といって間違いないだろう。