シートレールのチューニングで腰痛対策
レカロメディカルショップ「トライアル」
人間工学を基に設計され「腰痛予防シート」の代名詞ともなった「レカロ」。
自動車用シートはもちろん、スタジアムや消防署の中央司令室などにも採用されるほど、高い支持を受けている。
ところが「単純に装着しただけでは、レカロがもつ実力の半分も発揮できない」と日本で唯一の『RECAROメディカルショップ』大阪府堺市の「トライアル」牧原道夫代表は言う。
体型やクルマに合わせ、シート選びはもちろん、シートレール選択&調整までトータルしたチューニングすることで、レカロ本来の「腰痛対策」が実現するそうだ。
そもそも「レカロ」シートを装着するだけで腰痛対策はできる。だが、レカロ純正の車種別シートレールはあらゆるユーザーに対応できる汎用性を持たせているため、ポン付けしただけでは全ての人がピッタリなドライビングポジションを採れるとは限らない。
「シートの取り付けは、レーシングドライバーのシートの位置決めと同じくらいシビアなセッティングが大切です。どこかに無理があるシートポジションは、必ずそこが疲れの原因となります。例えレカロシートでも、シートの長さが合っていなくてヒザ裏を押していると、いずれうっ血して痛くなったりダルくなったりします。弊社では、小柄ユーザーでも最適なポジションを採れるようにするため、シートの座面長を短くするなどの加工を行うこともあります」と牧原代表。数あるレカロシートの中から最適なモデルを選ぶには、まずは体型に合っているモデルを探すことが重要。(詳しくは『匠に聞く!「レカロシート」で自分に最適なモデルを選ぶポイントとは』を参照)。シートのどこかに体重が集中することなく分散されて、面で受け止めるようなイメージのモデルを選ぶことが重要なのである。
高速道路で足首が疲れないポジション
「最適なドライビングポジションとは、ペダルを無理なく踏めるようにすることが基本です。シートの位置を決めるとき、ユーザーが求めるシートの高さなどの要望を聞いて、ペダルの角度や位置に合わせてセットアップしていきます。意外かと思うでしょうが、ペダル操作が楽にできるようにシートの位置決めをすると、グッと運転が楽になるのです。ハンドルの位置は、もともとクルマに付いている調整機能でカバーできます」と牧原代表は言う。
ひと言で「ペダル操作がしやすい」と言ってもピンとこないだろう。具体的には、アクセルを踏み込んだときに足首に負荷が掛かりにくい角度になるポジションにするとのことだ。
乗用車なら100〜110km/hのアクセルの踏み込み量でシートの位置関係を合わせるそうだ。
エンジンのパワーやギヤ比によって多少の差はあるが、この速度域でのアクセル開度は20〜30%くらい。
「そんなにアクセル開度の少ないところでシートを合わせたら、信号待ちからの発進など大丈夫なのだろうか?」と思う人もいるだろう。
「アクセルを深く踏み込むのは、ほんの一瞬です。高速道路で巡航している時間のほうがずっと長いですよね。長い時間、同じ姿勢をしているとき、身体のどこかに無理が掛かると、それが疲れの原因となります。腰痛は、腰に負荷が掛かるポジションになっているからです。ちなみに、レカロが優れているのは、長い時間座っていても、座面が沈み込まないからポジション変化が起きないのです。ノーマルシートは、乗り始めと後ではポジションが変化しているから、徐々に腰に負荷が掛かることもあります」と牧原代表は言う。
オリジナルのシートレールを開発
ユーザーに最適なポジションを確保
トライアルでは、ユーザーが望むシートポジションも含め最適なシートポジションを合わせるためにシートレールを『レカロ純正(写真右)』、『シートレールメーカー品』、『トライアルオリジナル(写真左)』の3タイプから選べるようになっている。もちろん、いずれも保安基準適合なので車検もパスできる。
写真を見れば一目瞭然だが、右側のトライアルオリジナル・シートレールは、左側のレカロ純正よりシート位置をかなり低くセットすることができる。さらにネジ穴にも注目してほしい。トライアルオリジナルは、テーパー状になっているので、位置固定が正確にできる。
これだけでも十分に体格の違いなどを許容できそうだが、ユーザーの要望に合わせ、さらに最適なポジションを実現するために下の写真の調整用ワッシャーなどを用意している。まさにミリ単位のチューニングだ。
このようなミリ単位のチューニングを代表するのが、レカロシートを搭載したトライアルのホンダS660とマツダ・ロードスターのデモカーだ。