エンジンやボディの大幅な軽量化で
環境性能を高め輸送コストを下げる
「三菱ふそう」の大型トラック『スーパーグレート』が21年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。
迫り来る燃費規制や厳しくなる一方の排気ガス規制に対応しながら、大幅な軽量化を達成したのが最大の注目点だろう。
後輪をシングルタイヤ化して軽量化
新型スーパーグレートの軽量化を実現したのは、エンジンの刷新と後輪のスーパーシングル化。従来のダブルタイヤと呼ばれる片側2本構成からタイヤの幅は太いが1本化のほうが軽くできる。スーパーシングルタイヤはオプションで、ミシュランが発明。他のタイヤメーカーも追随している。
排気量が異なる2種類のエンジンを設定
従来モデルより単体重量は最大500kg軽い
エンジンは排気量の異なる2種類を用意することで、幅広い要望に応えられるものとなっている。
どちらも直列6気筒ながら、排気量の7.7リットルの軽量ダウンサイジングエンジンと10.7リットルでは、その目的が大きく異なる。
現場からの要求によって実現した、7.7リットルのダウンサイジングエンジンは(上の写真)、最高出力は354psと380ps仕様を用意。従来の12.8リットルエンジンと比べておよそ500kgも軽量に仕上がっている。
その分、より多くの荷物を運べるので、実質的に燃料や高速代などの輸送コストの削減、ドライバー不足をカバーできることになる。もちろん、ダウンサイジングでも走行性能をしっかりと確保すべく、2ステージターボや高圧コモンレール式燃料噴射装置などの最新技術が投入されている。
10.7リットルエンジン(上の写真)は、とにかくパワーがほしいという事業者向けに用意されたものだが、それでも従来の12.8リットルエンジンより約150kg軽量化されており、その分積載性は向上している。もちろん燃費や排ガス規制への対応も進んだ。最高出力は360psから460ps仕様まで4種類が設定されている。
トランスミッションはAMT(自動変速MT)のみ
さらに大英断を下したのが駆動系の内容だ。今回から用意される変速機(トランスミッション)は12段のAMT(自動変速式MT)『シフトパイロット』のみという設定。
通常のMT(マニュアルトランスミッション)のほうが燃費性能に優れるというイメージをもっている事業者もまだ根強いが、実際の燃費性能やドライバーの疲労軽減効果に優れたAMTの良さを説明して、理解してもらう方針だと言う。
AMTの変速段数は従来モデルと同じ12段だが、多くの乗用車に搭載されているトルコンバーター式ATのようなクリープを発生させて低速時のアクセルコントロール性を向上させている。セレクタースイッチを左コラムレバーに備えるあたり、メルセデス・ベンツの乗用車みたいだ。
ミリ波レーダーを使った安全装備を充実化
以前から搭載されているふらつき警報に加え、ドライバーの目の動きを監視する脇見運転やいねむりの警報も新装備。オートクルーズも前走車に一定の車間距離で追従していくようになった。
このところ、大型トラックに対する安全装備については法律面、税制面、世論、ドライバー側、運輸業界や企業側からと、あらゆる方向から要求が高まっている。この新型スーパーグレートでは、一気に高級乗用車並みの運転支援システムが備わったのだ。
ダッシュボードは、見やすく運転のしやすさを第一にデザイン。フロアはフラット化されて、車内の移動もしやすくなった。シフトレバーはコラム左側だ。
ヘッドライトは2種類用意。プロジェクターランプ(写真右)と、省電力で配光特性や色温度なども改善された明るいLEDランプ(写真左)を設定した。スモールランプを印象的なものとしたシグネチャーランプも組み込まれる。
発表前の量産試作車をテストコースで試乗!
取材は3月下旬。新型スーパーグレートの発売前だったが試乗することができた。様々な新機能を試せたテストコースでの走りは、これまでより快適で高い安全性を感じさせるものだ。
栃木県さくら市にある「三菱ふそう」の木連川研究所のテストコースで、まだ発表前の新型スーパーグレートに試乗した。開発テストに使った車輌のため、キャブには偽装のラッピングが施されているし、内装も市販版より素っ気ない。
まずは登坂路で坂道での使い勝手をチェックする。上り坂ではヒルホールドとクリープの作動を体感。
上り坂の途中で軽くブレーキをかけて止まり、そのままブレーキペダルを離すとクリープでわずかに進み続ける。強くブレーキを踏むとヒルホールドが作動して、その場で停止状態をキープ。アクセルペダルを踏むだけで坂道発進ができるようになる。
クリープとヒルホールドの使い分けはブレーキペダルの踏み込み具合だけなので、ブレーキ操作が微妙だが、慣れたトラッカーなら難なくこなすだろう。
前走車に追従するクルーズコントロール
続いてアクティブサイドガードアシストと、前走車に追従していくプロキシミティコントロールアシストを体感した。これは伴走車との連携が必要なため、説明員が運転して助手席で試乗。ゴー・ストップを伴う渋滞でも自動的に追従してくれそうだ。
シフトショックは少なめ
12段を使い切る自動変速
お次はいよいよ高速周回路での試乗だ。発進し、加速しながら自動的にシフトアップしていく。
シフトはショックの低減をさせるためゆっくりと繋がる感じ。
今回からAMT(自動変速式MT)のみの設定としたことで、7.7リットルの超軽量ダウンサイジングエンジンの搭載が可能になったそうだ。従来モデルは12速MTを実現していたが、負荷が大きい状況ではシフト操作が忙しすぎて実用的ではなかったらしい。
25tのウエイトを積んでも余裕に走り90km/hでクルージング。
シートベルトがシートと一体になっているから、エアサスシートが揺すられても快適。高速周回路ならではのバンクへと突入していく新型『スーパーグレード』。試乗車は開発車輌なので、スピードリミッターは作動せず120km/hでの走行も可能だった。
同乗してくれた説明員の話によれば、入社以来実験部で働いているが、入社当時はこのテストコースの路面も非常に滑らかでキレイだったそうだ。
しかし、現在は長年の使用でツギハギだらけ、路面の凹凸もかなり感じる。その分、エアサスシートの快適ぶりをシッカリと体感できることになったそうだ。
試乗していて気付いたのが、目覚ましい静粛性の向上だ。前述のように助手席の乗員と普通に会話ができるのだ。
排気ブレーキにシフトダウン制御も組み合わされたのもAMTならでは。最強の4段目を選べば、かなり強力なエンジンブレーキが体感できた。10.7リットルエンジンは「ガリュリュリュー」と重厚感あるエンジン音が特徴で、加速も一際頼もしい。
(レポート:トラック魂編集部)