構造や設計が全く異なるボディキットを
1年がかりでマイカーへ移植手術
“SUPER GT”に参戦しているマシンかのような大胆フォルム。しかもナンバー付きという、とんでもないユーザーカーをカスタムイベント「クロスファイブ」で発見した。
このマツダRX-7(FD3S型)に乗る中北 諭サンは、かつて日産R34型スカイラインでサーキット走行を楽しんでいたが、皮肉にも盗難に遭ってしまう。現愛車との運命的な出逢いを果たしたのが、大阪のチューニングショップ「フィアスレーシング」。
ひと目惚れして購入したあと、エアロパーツはRE雨宮の”GT300レプリカ”と決めていたが、すでに絶版。泣く泣くネットオークションで探す日々が続くなか、ふと見つけたのがSUPER GTで使われていた”ホンモノ”のボディキットだった。
“SUPER GT”のGT300クラスで実際に使われていた正真正銘のエアロ。
フロントバンパー、ボンネット、前後フェンダー、リヤバンパーというフルキットで、しかもドライカーボン製。マニア垂涎とも言うべき内容は、かなりの高額を予想していたが意外にも安価に落札できたという。
“GTマシンのエアロを愛車へ付けよう!!”と考える人は、彼以外には存在しなかったのは納得だ。
しかし、そもそもボディだけでなく、エンジンの搭載位置や足まわりの構造など、あらゆる設計がレースカーと市販車では全く別物。
当然ながら取り付けには、予想以上の困難が立ちはだかることになる。
この大規模な異色手術を担当したのは、前出の「フィアスレーシング」。
ポン付けできるワケがなく、例えば搭載位置が異なるエンジンルームまわりは、ボンネットとパイピングの干渉、ヘッドライト位置が異なるなど、さまざまな問題が山積み。
ボディキットの一部分をカットしたり、逆にカーボンで成型し直したり、ステーをワンオフ製作するなど、あらゆる試行錯誤が繰り返されたという。
ちなみにエンジンは、片面ブリッジポートとHKS・T04-Rタービンで500psを発揮。正真正銘の「狼の皮を被った狼」なのだ。
フェンダーとディフューザーの間が開いてしまったため、固定するための仕切り版もカーボンでワンオフ製作。強度を確保するためのアンダーパネルは、基本の骨組みを車体とパネルに合わせて溶接するなど、見えない部分にも大きなメスが入った。
また、外径の大きいタイヤを履くワイドなフェンダーアーチは、カーボンを使って追加成型。市販タイヤサイズがハマルようにアーチ部を延長した。
ボルクレーシング「TE37」の鍛造ホイールにアドバン「A050」の組み合わせ。
ちなみに全幅は、ランボルギーニ・アヴェンタドールよりもデカい約2,100mm。フロント40mm/リヤ60mmのワイドトレッドスペーサーでツライチとした。
エアコン装備、ロールバー非装着の4名乗車をキープ。
アグレッシブな外装とは異なり、快適な街乗りができるよう実用性を確保している。
「製作には約1年ほどかかりました。ドライカーボンを削ったり延長したり、取り付けるためのステーやプレート、ディフューザーをワンオフ製作してもらったり…、フィアスレーシングさんには相当の苦労をかけたと思います。そのため、運転はかなり慎重になりましたね。エアロの修復は不可能に近いので、絶対にブツけたくありません(笑)」。
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