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46万kmスカイラインGT-R・ボディのヤレと錆との闘い【BNR32不定期連載6】

経年劣化したボディに
スポット増しと錆対策を敢行

クルマの買い換えサイクルが伸びているとはいえ、営業車ではなく自家用車で46万kmを走行している個体は希といえるだろう。しかも、それが日産R32型スカイラインGT-Rとなればなおさら。

すでにオートメッセWEB上で報告しているように、ここで取り上げる平成3年式BNR32型スカイラインGT-Rはエンジンのオーバーホールを行い、さらに距離を重ねることができるようになった。
しかし、当然のことながらボディは、46万kmという距離と26年という歳月が経年劣化によるヘタリと錆に犯されていたのである。

平成元年の発表から間もなく28年を経過しようとしているR32型スカイラインGT-R。
ここで紹介する平成3年式モデルは、新車で購入してから1人のオーナーが約26年の歳月をかけて46万kmを積み上げてきたわけだ。
ざっくりと計算しても年間1万8000kmを走っている。ここ数年はオーナーの仕事の都合で年間走行距離が減っているというが、それでも軽く1万kmは走っている。
保存モードに入ってR32型スカイラインGT-Rをガレージで眠らせているオーナーが増えているが、このオーナーは一般的なドライバーと比較してもかなり多く走らせている。エンジン系やパワートレインのオーバーホールについては別記事をご覧いただくとして、今回はボディまわりのプチリフレッシュについてレポートする。
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錆が発生した場所はスポット溶接ができない

下の写真はフロアの様子だ。スチーム洗浄で汚れは落とされているが、鉄板の表面には薄らと錆が出ている。しかもサイドシルには赤錆が発生している。

施工を行った田中オートサービスの田中健一代表は
「ボディ補強といえばシャーシのスポット増しですね。このクルマは、すでにもっとも効果のあるドアまわりのスポット増しを施していましたし、フロントウインドウまわりもガラス交換のときに施工済でした。ウインドウまわりは、ガラスを外すときについでに施工しないと工賃はかなり高くなります。今回はフロアまわりのスポット溶接を行うことにしたのでが、とにかく錆が施工できる個所はかなり限られてきます。ボディ補強以外にフェンダー内などフロア全体の錆対策が必要です(下の写真)」という。

ボディ下まわりのスポット増しとというと、左右ステップ下(サイドシル)が一般的なのだが、このR32型スカイラインGT-Rは錆が多くて施せないのだ。
それは錆が発生した部分は電気を通しにくいため、スポット溶接機しようとしても密着しないだけなく火花が飛び散るなど危険なのだ。

そこで、シールなどを大きく剥がさずにボディ補強の効果を感じやすいサイドメンバーとフロントバルクヘッドのスポット増しを行うことになった。とくに今回はエンジンをオーバーホールで降ろしている状態だったので、この部分のスポット増しをするには好都合だった。

サイドメンバーはエンジンルームとフェンダーを挟み込むように溶接をする。まずは、それぞれの溶接する部分の塗装をベルトサンダーで剥がす。

下の写真がスポット溶接機。U字の治具で挟み電気を通して鉄板を溶接する。

適度に間隔を開けながら溶接。スポット溶接はノーマルでも行われているが、溶接点数を増やすことで鉄板の密着度が高まりボディの剛性がアップするのだ。内部に錆があると通電状態が悪くなり火花が飛ぶ。

さらにサブメンバーとフロントバルクヘッドの接合部も溶接。ただし、ここはスポット溶接機のU字型治具で挟むことができない。車内からメンバーに向けてドリルで穴を開ける。

穴を開けた部分に半自動アーク溶接機を使って、サイドメンバーとバルクヘッドの密着度を高める。

下の写真は溶接後。打点が増やすことで強度が高まる。サイドメンバーの取り付け強度まると、フロントまわりの剛性がアップする。
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錆を元から絶つのではなく
転換剤で黒錆化して進行を抑制

そもそも錆とは、空気中の酸素と触れて酸化すること。クルマのボディなどに発生するのは赤錆で、腐食して空気に触れる面積が増えると一気に錆びてしまうのだ。

しかし、錆転換剤という液体を錆びた部分に付けると化学変化で赤錆が黒錆へと変化する。
もちろん、ある程度の錆落とし処理は必要となるが、黒錆化することで鉄の表面に膜を形成して酸素と触れにくくなるわけだ。

もちろん、鉄板の奥底に潜んでいる赤錆を完全除去できるわけではないが、少なくともその進行は抑制できる。もし、錆を完全除去するには、鉄板そのものを交換するしかない。例えばリヤフェンダーなら、Cピラーの表の鉄板を切断してフェンダー交換となる。それだけでも何十万円も必要だ。

走行46万kmのGT-Rは、フロア全体に錆が発生していたので、目立つ部分のみベルトサンダーなどを使って除去。その状態で錆転換剤を噴霧して、さらに塩害ガードでコーティングを施した。
田中オートサービスでは、このフロアコーティングを約10万円で行うという(車種によって工賃は異なる)。もちろん、パワートレインが搭載された状態でも施工可能。今回はパワートレインが着いていない状態だったため、より奥まで(ミッションの上など)施工することができた。
シャーシブラックやタール系のコーティングでも良いかもしれないが、クリア系なら錆が再発したときに目視で確認できるのが最大のメリットだ。

純正パーツの製造中止されて
錆びても劣化しても交換できない

ちなみに目に見えない部分のR32型スカイラインGT-R劣化としてリヤウイングのステーもある。
じつは、このステーは製廃されているため、どこかに在庫がなければ純正品は購入できない。
写真は緑整備センターのオリジナル。ステンレス製で錆びにくくなっている(純正はスチール製)。
また、ハーネス類も劣化して電装系トラブルを元となる。
こちらも純正パーツが製造中止となっている。そのようなユーザーのために緑整備センターでは、オリジナルのR32スカイラインGT-R用のハーネスもリリースしている。
今後は、このような社外製パーツを上手に使っていくこともネオクラシックになりつつある第二世代スカイラインGT-R(R32〜R34型)を維持しているポイントだろう。
ただ、ニスモがこのような製廃パーツを再販すると発表しているので、今後はこのようなパーツ問題は改善されていくことだろう。

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