運転支援システムなど安全装備が充実
エンジン&ミッションも改良された
新型クオンの開発では、テストは92台の試作車を使い、延べ250万時間も費やしたそうだ。
従来型と名称は同じながら、GH11型エンジンはインジェクターやピストン、ウォーターポンプなどを改善し、燃費を大幅に向上させている。先代と見た目はあまり変わらないが、ユニットインジェクターにコモンレールを組み合せた新型の燃料噴射装置や吸排気系の改善などが施されている。ピストンの形状を変更。マルチホールインジェクターの噴射パターンを活用するウェーブ型トップを採用した。
さらにウォーターポンプは切り替え機構が備わり、高回転時の抵抗を軽減する工夫が施されている。
AMTのESCOTも第六世代へと発展。クラッチ板の枚数を増やし、ソフトウェアも改善した。後退は瞬間的にクラッチ板を押し付けて弱いクリープを作り出していると言う。
ノンシンクロのMTをシフトさせるカウンターシャフトブレーキ(写真下の黒い部分)が強化されている。
圧雪路のような滑りやすい状態で凹んだ路面からの発進や脱出時には、車体を前後に揺らして勢いをつけて発進するようなこともできるそうだ。
新型『クオン』では稼働率を高めるため、メンテナンスフリー化も進めている。これがクラッチ板の摩耗を抑える制御につながっているのだ。
GPSで高速道路の起伏を記憶して、次回走行する際には道路の勾配を考慮した加速をすることで燃費を向上させる先読み機能のフォアトラックや、加速を穏やかにするソフトクルーズコントロールなど、燃費性能を高めるための先進装備も充実。
クッキリと見やすい大型のメーターパネル。クルーズコントロールなどのスイッチが組み込まれた4本スポークステアリングを採用する。
レーダーとカメラで前方の状況をチェックする自動ブレーキのトラフィックアイブレーキを始めとした、安全性を高める運転支援システムも豊富だ。
トラフィックアイクルーズと呼ばれるACC(アダプティブ・クルーズコントロール)は30km/h以上で設定できるが、15km/h以下の速度ではキャンセルされてしまう。 ノロノロと走行を続けている状態であれば問題ないが、ゴー・ストップが続く状態では使えない。これは現場の声を尊重し、ドライバーの運転を優先するような仕様にしたためだ。
ナンバープレート上のミリ波レーダーとフロントウインドー中央底部のカメラで前方を監視。自動ブレーキやオートクルーズ、路線逸脱警報などをこれらのセンサーで実現している。
ちなみにトラフィックアイクルーズとECOモードは、AMTだけに装備されている。これを考えれば、MTを選ぶ理由はほとんどなくなってしまうのではないだろうか。
シャシーも高張力鋼により薄肉軽量化されている。プラットフォームに直付けする際の使い勝手を向上させるため、エアサス仕様はリフト量が増やされているそうだ。
これまでディスクブレーキを採用できなかったのは、ブレーキパッドの耐久性に課題があり、ドラムブレーキほどのロングライフを実現できていなかったからだとか。
しかし今回、ディスクブレーキにしたことで大幅な軽量化を実現できた。ブレーキドラムはディスクローターに更に太い輪っかを追加したようなものなので、非常に重いのだ。
長い峠道の下りなどブレーキを多用するシーンでは、ドラムブレーキでは利きが甘くなるフェードなどが起きることもあるというから、ディスク化がこれから進むかもしれない。
ようやく日本の大型トラックも、欧州トラック基準の安全性と快適性、そして走行性能を得たと言えそうだ。
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