所有者を尾行してスマートキーの電波を傍受
電波を転送して盗難する「リレーアタック」
最近、新聞や一部のWEBメディアで取り上げられている「リレーアタック」という車両盗難。
カンタンに言えば、スマートキーから発信されている電波を傍受し、クルマを解錠・エンジン始動して盗難してしまうというもの。
キャッチした電波を車両のそばにいる仲間へ転送して車両盗難をするということから「リレーアタック」という名が付いたようだ。
スマートキーを持ってクルマに近づけば施錠解錠が可能で、さらにエンジン始動なども行えるのはご存じのとおり。もちろん、クルマごとに電波は暗号化されているので、クルマが異なれば反応しない。その電波は微弱で、スマートキーから約1〜2mくらいしか届かない。
ところが、この電波は常に発信されているので、クルマの所有者を窃盗団が尾行して電波を傍受。その電波をクルマのそばにいる仲間へ電波を転送すれば、クルマは所有者と勘違いして盗難されてしまうわけだ。
ちなみに従来のリモコンキーは、電波や赤外線で施錠解錠を行う。スイッチを押したときだけ電波や赤外線が飛ぶ仕組みなので、リレーアタックの心配はない。そもそもエンジンスタートはキーを使用するので、車内に入れても、クルマを動かすにはイモビライザーをカットするなどが必要だ。
減少していた車両盗難件数が再び増加する
京都府でウインドウフィルムやカーセキュリティの施工を営む「ビーパックス(B-PACS)」の井上代表は、この「リレーアタック」という車両盗に警鐘を鳴らす。
「イモビライザーの装着率が高まり、10年前に比べ車両盗難件数は半分くらいになっています。それは、カギを壊して車内に入れても、エンジンを始動するには技術が必要でした。つまりその道のプロでなければクルマを盗めなくなってきたのです」
イモビライザーは、キーに埋め込まれた電子チップがもつコードを車両側が認証しないとエンジンは始動できない電気的な防犯装置だ。
昔の映画のように、ステアリングの下に潜り込んで配線を引っ張り出して、エンジンをスタートさせるなんていうのは、イモビライザー装着車には通用しないわけだ。
「ところが、スマートキーの電波にはイモビライザーの認証まで含まれていますから、解錠ができたらエンジンは始動できてしまうのです。しかも、リレーアタックで使用する傍受機とクルマのそばにいる窃盗団の受信器(発信もする)は、カンタンに入手できるようです。つまり、とくに技術も必要なく車両盗難ができるわけです。言い方は悪いですが素人窃盗団が増えるかもしれません」と井上代表。
スマートキーの電波漏れを遮断して盗難予防
「リレーアタック」から愛車を守るには、今のところ電波を傍受されないようにするしかない。
カンタンに言えばスマートキーの電波を遮断すればいい。
例えば、スマートキーの電波は金属を通らないので、クルマを降りて施錠したらすぐに写真のような空き缶の中に入れてフタをすればいい。これだけで多少なりとも電波の漏洩は防止できる。ただ、ブリキの缶の電波遮断能力は決して高くない。
もう少しお洒落に電波を遮断したいなら、病院など携帯電話の電波を漏らさないようにするポーチなども有効(スマホ・電波・遮断で検索)。調理用のアルミホイルでスマートキーを覆うだけで電波が遮断され盗難防止策になる。
クルマを降りようとしたとき(降りた後も)、妙に近づく不審者がいるときは要注意だ。電波を遮断するまでに傍受されないようにしてほしい。
ちなみにポリカーボネートのバッグでは、電波が漏れているようで通常通り施錠解錠ができた。つまり、硬いケースのバッグでもスマートキーの電波は通ってしまうというわけ。
さらに言えば、ニュースの映像などから玄関など道路など外部に近いところにスマートキーを置いていると、その電波をキャッチされやすようだ。自衛策として、建物の奥にスマートキーを保管するのが望ましいと思われる。
車両盗難されにくい駐車場とは
リレーアタックとは直接関係ないかもしれないが、外出したときに車両盗難に遭いにくい駐車場を選ぶことも重要だ。
とくに難しいことではないが、無料の出入り自由という郊外のスーパーの駐車場は非常に危険。
エンジンを始動できれば、なんのハードルもなく駐車場から持ち出すことができる。
一方で、チケットを受け取る駐車場は有人・無人を問わず、チケットを持っていないと出庫できない。
チケットの発行は、基本的に発券機を通過しないといけないので車両盗難をするためには何らかのクルマで入庫しなければならない。つまり、フラッと駐車場に入っても、クルマを盗むことができないわけだ。
言うまでもなく、車内にチケットを残しておくのは厳禁だ。
ただし、ナンバー読み取りシステムのある駐車場は、不正出庫ができるケースがあるのであまりオススメできない。もっとも安全な駐車場は、やはりパレットに一台ずつ入れるタワーパーキングだ。
2016年の盗難されたワースト5車は、1位からプリウス、ハイエース、ランドクルーザー、アクア、レクサスとトヨタ系で占められている。これらの盗難車は、海外で人気が高いのが件数が多い要因らしい。
ちなみに盗難される場所は、自宅または契約の駐車場が約60%とダントツ。窃盗団はクルマの稼働状態を調べて、盗難できるチャンスを狙いやすいのだろう。
現在、リレーアタックによる車両盗難に対して自動車メーカーは対応できていないようだ。つまり、前述したようにスマートキーの電波を傍受されないようにするか、後付けのカーセキュリティーを装着も一考しても良いかもしれない。
社外のセキュリティシステムは、施錠解錠はもちろん、エンジン始動関係の電気系統も守っている。もちろんリレーアタックの対象となる電波も発していないので安心だ。
スマートキーは便利だが、今後はいろいろな盗難防止策が求められそうだ。
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