ホンダ初の4輪車は日本初のツインカム搭載
4気筒スカイラインを認知させたFJ20Eも!
神奈川県パシフィコ横浜で開催された「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2017横浜」の「自動車技術会創立70周年特別企画展示」には、自動車史上で重要なエンジンやパーツの単体展示が行われていた。
今やDOHCエンジンは当たり前となっているが、日本初搭載車はホンダの軽トラックだったなど、注目すべき内容だった。
ホンダ初の量産4輪用エンジン(1963年)
ホンダ初の量産4輪車『T360』に搭載されたAK250Eエンジン。昭和38年という時代ながらチェーンドライブのDOHC、アルミブロック、主要な回転部にローラーベアリングを採用した354cc水冷4気筒を市販車に搭載。最高出力30psは8500rpmで発生するというスペックを持っていた。じつは日本初のDOHC車は、このエンジンを搭載したT360だった。
厳しい排ガス規制をクリアした
ホンダCVCCエンジン(1973年)
ホンダは、吸気と燃料噴射を2系統に分け、それぞれで燃調を変える。燃調が濃いめの副燃焼室から着火し、その火炎伝播で薄めの燃調にしている主燃焼室の混合気を燃やすというCVCCエンジンを開発。
燃調が薄い混合気は燃え出しにくいが火力が強い火炎伝播を使うことで解決している。燃焼スピードも理想的になるという効果もあった。この技術で1970年に発令されたアメリカの排ガス規制「マスキー法」に適合。1973年に初代シビックにCVCC搭載車が追加設定された。
昭和53年排ガス規制を三菱はMCA-JETでクリア
(1977年)
排ガス対策のため燃焼室に大量のEGR(排ガス再循環)をおこなっていたので、その状態で燃焼効率を高めるため三菱が開発した技術。
吸気バルブと別にジェットバルブと呼ぶ吸気経路を設け、その吸気の勢いでシリンダー内に渦を作りだし燃焼効率を向上させる仕組み。バルブまわり構造的にSOHCのみのラインナップ。1977年に初代ランサーに搭載。さらに1978年には初代ミラージュ、デボネアと展開を広めていった。
1気筒ツインプラグのZ18E型SOHCンジン
日産910型ブルーバードなどに搭載されていたZ18E型エンジンは、大量のEGRを導入しつつも燃焼効率を高める手段として、1気筒あたりの点火プラグを2本とするツインプラグを採用していた。EGRは当時主流だった吸入行程時にも排気バルブを開けておくバルブタイミングを利用していた。
4気筒のスカイラインを認めさせた
FJ20ET型エンジン(1982年)
今では評価が高い日産のFJ20ET型2リットル直4DOHCエンジンだが、登場した1982年当時はスカイラインは6気筒という固定観念が根付いていた時代だけに、最もスポーティなモデルが4気筒ということで叩かれたこともあった。
FJ20型エンジンはNAで登場し、あとからターボ付きのFJ20ETが登場。展示はターボ付きのFJ20ET型。このあとにターボCに積まれたインタークーラー付きに進化。
シルビア/ガゼール(S110型)にはNAのFJ20E型エンジンを搭載するモデルも設定された。
トルクがあって高回転も伸びる
ホンダ2.2リットルVTEC(1991年)
1989年に登場したホンダ・インテグラ(DA型)に搭載してデビューしたVTEC機構に加え、可変デュアルインマニを組み合わせたH22A型2.2リットル直4DOHCエンジン。
ハイカム側のリフト量はチューニングカム並みの11.5mmの設定。4代目プレリュード(BA型)やアコードユーロRに搭載。ほかのVTECエンジンほど目立たなかったが、エンジンとしてのよさはトップクラスだ。
日野自動車がコモンレール式を国内初採用(1994年)
圧縮比が高いディーゼルエンジンに適切な燃料噴射を行う機構である、コモンレール式電子制御高圧燃料噴射システムを世界で初めて採用した日野自動車のJ08C型エンジン。8リットル直6SOHC4バルブエンジン。ターボとNAをラインアップしていた
これはレールと呼ぶ高圧の燃料室に燃料を蓄え、それをECUからの指示でインジェクターによって噴射するシステムだ。
マツダ・ロータリーエンジン13Bの最終型といえる13B-MSP
マツダRX-8に搭載されたNAの13B-MSP型ロータリーエンジンは、ペリフェラルポートだった13B型エンジンの排気ポートを吸気側同様にサイドポートに変更した。
従来の13Bよりも低速域トルクを稼ぎやすい構造。加えて吸気まわりを回転数ごとに適正な吸入空気量とするシーケンシャル・ダイナミック・システムも採用した新世代のロータリーエンジンだった。
デジタルメーター
1981年に登場したトヨタの初代ソアラに世界初として針のないデジタルメーターが搭載された。
当時の技術水準では各センサーからの信号に対して表示が遅れる傾向だったがそれを克服。同時に明るさの調整やチラつきを抑える技術も盛り込んだものとなった。
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケーター
1981年にホンダが発表した世界初カーナビゲーションシステム。旅客機に搭載されてた「慣性航法装置」と同じ原理だ。
ジャイロセンサーと距離センサーでクルマの移動方向と移動量を検出しマイコンで連続して積分。そのデータを地図シートに映すことで走行軌跡を画面に表示。経路案内や渋滞情報は無く、地図と自車位置を確認するだけのものだ。
トヨタ半自動2速オートマチック
1963年にトヨタ・クラウンに搭載された2速半自動変速機の「トヨグライド」。トルクコンバーター付きなので通常は2速のみで走行。1速は手動でシフトする機構だ。
4速ロックアップ機構付自動変速機
1979年にアイシン精機が国内初の中型トラック用自動変速機を製造。コンバーターの効率を高めるロックアップクラッチも搭載していた。1984年には小型トラック用の油圧制御式4速ロックアップ機構付自動変速機が登場。ランドクルーザーなどに搭載された。
フットセレクター(減衰力切り替え式ダンパー)
減衰力の切り替えを車内のスイッチ操作で大なう機構の最初は日産R30型スカイラインに採用された「フットセレクター」からだった。ソフトとハードの2択式。
セミトレーディングアーム式サスペンション
日産C10型スカイライン(ハコスカ)や510型ブルーバードの時代から日産車のリヤサスペンションに使われていたセミトレーディングアーム構造。スカイラインではR31型(7代目1985年)まで改良を重ねて使われていた。
エアバッグ
エアバッグは1963年に航空機パイロットを守る技術として発明された。1970~1980年代には一部のクルマに実用化されたが世間の感心は薄かったという。1987年にホンダレジェンドに搭載されたのが国産初となる。
カーエアコン
車内の空調はまずヒーターが標準装備となり、クルマが一般化してくるとクーラーが装着されるようになった。以前はこのふたつを季節ごとに別々に操作していたが、エアコンの登場で温風、冷風をミックスして温度調整できるようになった。また、除湿した空気を暖めて空調するので窓の曇りも取れるようになった。
コンパティビリティ対応ボディ
2003年のホンダ車の技術。いまでは当たり前の衝突安全ボディ。衝突時のエネルギーを広範囲に分散して吸収することと、相手車の衝撃吸収材とのすれ違いを防止する前面構造を持っている。
(レポート&撮影:深田昌之)
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