匠の走りで決勝レースを制した青木選手
ランキングもトップに躍り出る!!
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceにとって、ホームコースと呼んでいいのが富士スピードウェイだ。今シーズンは、10戦中3レースが開催。その最初のレースが第3戦であり、 多くのドライバーにとって良く知っているコースだけに、シビアな争いが展開された。
第3戦のプロフェッショナルシリーズ(プロドライバーが参戦できる)のエントリーは35台。これは昨年の富士スピードウェイの開催レースよりも少ないが、マシンが後期型に限定されたことで、プライベーターの参加が減少した。
ただしクラブマンシリーズ(アマチュアクラス)では増加し、トータルでは参加台数は増えている。
開幕戦(ツインリンクもてぎ)と第2戦(オートポリス)では、表彰台のメンバーは同じだったプロフェッショナルシリーズ。
#1佐々木雅弘選手(BS)は優勝と2位、#31青木孝行選手(BS)は3位と優勝、そして#97近藤翼選手(BS)が2位と3位。3人のパフォーマンスが高いことは間違いないが、圧倒的な性能を誇るブリヂストンの優位は変わらない。
しかし、不確定な要素が明らかとなる。同時開催された”ポルシェカップ”が使用するミシュランタイヤ(タイヤカス)の影響で、グリップ感が弱いという声があがる。
ポルシェカップのマシンが走行した後のセッションでそれは強くなり、しかも、ブリヂストン勢が最も大きい影響を受けることになる。
マシンの性能差は拮抗に!?
予選は激しいバトルへ
予選、早めにトップタイムをマークしたのは#47蒲生尚弥選手(BS)。2分05秒876というタイムは、佐々木雅弘選手が想定したポールポジションタイム「2分5秒台半ば」には届かなかったものの、簡単に届くものではなかった。
#60服部尚貴選手(DL)は2分06秒000と、非ブリヂストンユーザーのトップ。金曜日の占有走行で圧倒的な速さを見せつけた#500坪井翔選手(BS)もコンディションの変化に対応できず、2分06秒092に留まる。
そして後半、#1佐々木雅弘選手がアタックに入り、2分05秒848でトップタイム。直後に#31青木孝行選手がポールポジションを奪ったが、ミスにより予選6位へと沈んでしまう。
「ミスがなければ、ポールは取れていた」という予選後のコメントは、青木孝行選手の速さと富士スピードウェイとの相性の良さから考えても、全く違和感はなかった。結果としてポールポジションは#1佐々木雅弘選手、2位に47蒲生尚弥選手、3位が#97近藤翼選手という予選となった。トップ10のうちブリヂストン勢が8台。そういう状況の中で、ダンロップユーザーの#60服部尚貴選手が5位、ヨコハマユーザーの#82谷口信輝選手(YH)が9位と健闘。
ダンロップ/グッドイヤーはレギュレーションに合わせてスペック変更を受けるが、ヨコハマは同じ。それで予選9位という結果には、谷口信輝選手の意地を感じた。リザルトをみれば、ポールポジションから1秒以内に26台が入ると大混戦。
開幕戦では2位との差が1秒以上あったことを考えると、マシンの性能差は拮抗したといっていい。そういう意味では、この第3戦からが本当の意味でのシーズンインなのかもしれない。
予選でのミスを挽回して怒濤の追い上げ
青木選手の速さが際立った決勝レース
決勝レースのスタートは、ポールポジションの#1佐々木雅弘選手が決め、上位3人はそのままの順位。
しかし、青木孝行選手はオープニングラップで4位にまで順位を上げ、トップグループに追い付く。
先頭の佐々木雅弘選手はブレーキトラブルが発生。ABSがキャンセルされた症状で、いとも簡単にブレーキがロックしてしまう。レースウィークにすでに出ていた症状で、キャリパーなどを交換して解消されていたはずだった。繊細なブレーキングが求められた佐々木雅弘選手。序盤はかろうじて1位をキープするが…。 青木孝行選手が近藤翼選手を4周目にオーバーテイク。それに刺激されたのか、蒲生尚弥選手が5周目の1コーナーでトップを奪う。
そして、次の6周目には青木孝行選手も佐々木雅弘選手を1コーナーでパスし、2位へポジションアップ。その時点で2台のギャップは1秒013あり、差はジワジワと少しずつしか縮まっていかない。
しかし8周目の1コーナー、蒲生尚弥選手がブレーキングをミスし、タイムロス。2台の差は一気に縮まってしまう。最終コーナーでは2台が並んで立ち上がり、そのままファイナルラップへ。1コーナーでも再び並んだ2台だったが、青木孝行選手がコカコーラ・コーナーでトップに。
前戦に続く2連勝で、青木孝行選手が表彰台の頂点に立った。2位は蒲生尚弥選手、3位には手負いのマシンを必死でコントロールした佐々木雅弘選手が入った。
予選9位からスタートした谷口信輝選手は、一時8位にポジションを上げたものの、最終的に9位でフィニッシュ。
今シーズンの初ポイントだが、だからといって進化のないヨコハマでは今後を期待するのは酷というもの。対照的に開幕戦と第2戦で上位に居た#88井口卓人選手(BS)は、予選19位、決勝14位と精彩を欠いた。レースラップは悪くはなかったが、予選順位が悪すぎた。チームメイトの#87久保凜太郎選手(BS)も予選20位であり、十分なテストを行えないがゆえに、相対的に地盤沈下した印象だ。
マシンの性能差が極めて少ないワンメイクだけに、コース上のオーバーテイクは難しい。
しかし、少なくともこのレースで上位陣が見せたバトルとオーバーテイクシーンは、とてもフェアでクリーンなもの。オーバーテイクでもつねに相手のスペースを用意し、強引なブロックも無理矢理のオーバーテイクもなかった。
この第3戦は、まさにプロフェッショナルなレースの戦いとなったのである。
RESULT
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 2017 第3戦・プロフェッショナルシリーズ
静岡県富士スピードウェイ ナショナルレーシングコース(4.563km)6月4日 天候:晴れ 路面:DRY
Pos. | No. | Driver | Time(Delay) | Car | BEST TIME | Tyre |
1位 | 31 | 青木孝行 | 21’11.446 | ケーエムエスフェニックス86 | 2’06.422 | BS |
2位 | 47 | 蒲生尚弥 | 0.430 | トミカネッツ兵庫BS86B | 2’06.618 | BS |
3位 | 1 | 佐々木雅弘 | 1.885 | 小倉クラッチ REVO86BS | 2’06.698 | BS |
4位 | 97 | 近藤 翼 | 2.355 | 神奈川トヨタ☆DTEC86R | 2’06.768 | BS |
5位 | 770 | 山田英二 | 3.181 | CUSCO BS 86 | 2’06.394 | BS |
6位 | 60 | 服部尚貴 | 3.422 | OTG DL 86 | 2’06.086 | DL |
Fastest Lap:#60 服部尚貴 2’06.086 (3/10)
ポイントランキング
Pos. | No. | Driver | Point |
1 | 31 | 青木孝行 | 63 |
2 | 34 | 佐々木雅弘 | 58 |
3 | 97 | 近藤 翼 | 43 |
4 | 770 | 山田英二 | 30 |
5 | 88 | 井口卓人 | 23 |
6 | 47 | 蒲生尚弥 | 15 |
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