通行規制されている道路を
1時間に24台のクルマが走る
大阪府の某所に「自転車歩行者専用道路」がある。
当然のことながら自動車の通行は禁止されているのだが、無作為に約300日間の調査で、10分間に3〜4台の車両が通行しているという結果だった。
じつは、この道路を使うと幹線道路へストレートにアクセスできる。しかも、歩道があり車道(?)との境目もハッキリしているなど、「自転車歩行者専用道路」というイメージはかなり薄い。
とはいえ、「自転車歩行者専用道路」をクルマが通行することが許されるわけではない。この実状を所轄の警察署で取材してみた。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
某コメディアンの名ギャグだ。
今回取り上げる「自転車歩行者専用道路」は、まさにこのギャグと同じような状態で、「みんなが通っているのだから」とばかりに多く車両が通行している。
しかし「自転車歩行者専用道路」の交通標識があるというのは、基本的にクルマが通行するのは道交法上では、れっきとした違反行為と。通行禁止違反となり違反点数は2点、普通車の反則金は7000円だ。
ただし、住宅地などに見られる「通行禁止」「通り抜けはご遠慮ください」といった注意喚起の看板(○○警察署などと書かれていても)には法的な効力はない。
歩道がある歩車分離されている道路を
自転車歩行者専用道路にする理由は
そもそも歩道もある道路が、なぜ「自転車歩行者専用道路」となったのだろうか?
ここは市道で、もともとは普通にクルマが行き来できる住宅街の道路だった。
ところが、先にも書いたように幹線道路に抜けるクルマの交通量が増えるなどの理由から、昭和51年に住民(その地域の自治体)と市が相談して、交通事故から住民を守ることを目的に交通管理者である警察署によって「自転車歩行者専用道路」となった。
このように地域住民の要望によって敷かれた交通規制なのである。
もちろん、当該道路を通らないと自宅に戻れないお宅には、警察署から車両通行許可証が配布されている。また、ゴミ収集車などの公共的な自動車の通行は認められており、さらに介護施設などの送迎車両にも通行許可証が発行されている。
確かに、この道路を通行できるクルマは存在する。
だが、10分間に3〜4台もクルマが通行。1時間換算すれば24台/1時間となる。このような交通量や、そのクルマが規制道路周辺のお宅に立ち寄る気配もなく通り抜けている状況を見ると、通行するクルマの多くは違反車両となり、「自転車歩行者専用道路」としての意義はなしていない。
このような状況は、平成22年以前にも認められていたようで、警察署から道路規制の改定(一方通行に変更するなど)を地元の自治会に何度か申し出たそうだ。
しかし自治会内の決議では、現状通りの「自転車歩行者専用道路」のままにするということになり、規制改定には至らなかったそうだ。
交通規制などの変更は
地元住民の意見が最優先
このように車両通行規制を変えるには、地元住人の意見が非常に重視される。それが誰が見ても実状に即していないとしても、警察としては動けないそうだ。
ここで「警察は取り締まりしないのか!」という声が上がりそうだが、このような通行禁止道路へのクルマの進入などへの取り締まりは、一般的に警察署へ通報があってから現状確認してからとなるそうだ。
ちょっと警察署の対応が頼りないように見えるが、管轄する全道路を管理するほどの人員が用意されていないのが実状だという。
自転車歩行者専用道路は
人は右車両は左が適用される
今回の取材で、もう一つ興味あることが警察署で聞けた。
「自転車歩行者専用道路」の標識がある道路(歩道ではない)は、普通自転車(リヤカーを引いていないなど)以外の車両の通行を禁止している。
ここで驚きだったのが、この道路は自転車という「車両」が通行するので一般道と同じルールが適用されるということだ。
具体的には、歩行者は道路の右側、自転車は車両なので道路の左側を通行することになる。それは道路の幅員など一切関係ないそうだ。
今回取り上げた「自転車歩行者専用道路」では、歩行者は歩道、自転車が車道を通行するのが基本だということ。クルマが通行しないからと、車道を歩行してはいけないという。
ところが、「歩行者専用道路」となると、自転車も通行できないから歩行者はどこを歩いても問題ない。
つまり、上の写真の「自転車歩行者専用道路」と下の写真の「歩行者専用道路」では、道路の幅や環境がほぼ同じだが、交通標識の違いから歩行者の通行方法が異なるということになる。
とりあえず、現実はともかく交通標識を守らないと違反になることは間違いない。とくに、夏休みで街に子どもが増えるこれからの時期、安全運転には気を付けてほしい。