さまざまな条件に合わせてタイヤ特性を
最適な状態に変化する”未来系タイヤ”
「コンチネンタルタイヤ」が東京モーターショー2017に持ち込んだ『コンチセンス』と『コンチアダプト』は来る自動運転の時代に向け、タイヤの空気圧管理を目的として開発された新技術。
『コンチセンス』は、自社開発のホイールに組み込まれたマイクロコンプレッサーと油圧システムにより、路面の状況変化に合わせて4つのパターンに空気圧を調整し、それぞれの場面で最適な状態に変化させるシステムだ。タイヤのトレッドパターンは中央がコンフォート用で、左右の最初の縦溝が切られた部分からドライ用、一番外がスノー用のパターンが施され、空気圧とリム幅の変化の組み合わせにより、1本でオールシーズン性能を発揮するという仕組みである。
変形モードは、エコ/ウェット/コンフォート/エマージェンシーで、エコモードが通常モード。”エコモード”はリム幅が広め、空気圧はやや高めで、路面抵抗を減らして、燃費にも貢献する。
また、雨天時に使用する”ウェットモード”はリム幅を狭くして、空気圧をさらに向上。接地面を減らし、トレッドパターンを広くして排水性を高めるように変化する。ただし、接地面積が減るので、制動距離が伸びるというデメリットも。そのため管理システムがしっかり確立することが一番の課題。あくまでも皆が同じ巡航速度で走る将来の自動運転を見越したモードだといえよう。
“コンフォートモード”は、エコモードからやや空気圧を落として、乗り心地とドライ用パターンを生かしたグリップ力を高めて、走行安定性を向上。最後の”エマージェンシーモード”は空気圧を法規制以下まで落とし、深雪や凍結路面、ぬかるんだ道など滑りやすい路面での接地性を上げて抜け出すときに対応するモードだ。
タイヤの温度、摩耗状況をセンサーで監視し、
異常があればベストに強制復帰させる
ただ、接地面積が少なすぎるウェットモードや、空気圧が著しく低いエマージェンシーモードでそのまま走行すると危険が伴う。そんな不安定な状況を感知し、強制的にエコモードに戻すためにタイヤ内に取り付けられるTMPS(タイヤ監視システム)が「コンチアダプト」だ。
ゴム内部にセンサーが取り付けられ、温度と摩耗(抵抗値)を管理。異常が発生するとTMPSに信号が送られ、自動的にマイクロコンプレッサーと油圧システムを作動させて、タイヤを最適な状況に復帰させるというシステムである。もちろん、異物が刺さった場合も同様。その情報はインパネやナビゲーション、スマートフォンに通知され、ドライバーに警告する予定だそうだ。
今後、クルマの自動運転化が進むと、電車と同じようにタイヤの状態を気にしない人が増えると予想される。そのような時代に対応するようにタイヤ側が自主的に状態、状況を管理する必要があるとコンチネンタルタイヤは考えている。
東洋ゴム工業に続き、ダンロップタイヤが
業界の夢である”エアレスタイヤ”を発表
一方『ダンロップタイヤ』は、空気充填のいらないエアレスタイヤ「GYROBLADE」を公開。
これは現在のタイヤでは防ぐことができない、タイヤ業界の夢ともいえる”パンク故障ゼロ”、摩耗以外のメンテナンスを不要にする画期的なものだ。構造は金属ホイールとタイヤの内芯の間に、高剛性の樹脂を採用したスポークを張り巡らせて荷重を支えるものだ。
タイヤは誕生から約120年間、「自動車の自重を支える」「駆動力・制動力を路面に伝える」「路面からの衝撃を和らげる」「操縦性を安定させる」の4つの機能を充填された空気で賄っていたが、エアレスタイヤが市販されれば歴史を覆す快挙となる。ブースでは、転がり抵抗の低減、制動距離の短縮、走行フィーリングの向上などが既存タイヤに対するメリットとして上げられていた。ただし、
「GYROBLADE」
しかし、ダンロップタイヤに先駆けて、東洋ゴム工業でもエアレスタイヤ「noair(ノアイア)」を発表したことを考えると、軽量なクルマであれば近い将来にタイヤに求められる4つの機能を満たすことができる目処がついたということなのだろうか。
いずれにせよ、夢のある商品が誕生することに期待せずにはいられない。
コンチネンタルタイヤとダンロップのブースで話を聞いて感じたのはやはり、近未来のスマートモビリティをターゲットにしている点。
クルマ好きをターゲットとした新たな提案も見てみたいところだ。