圧倒的に多い「不貞調査」の案件
張り込みに使われる意外なあのクルマ…
元探偵が語る、現役時代に培った経験をもとに赤裸々な内容をお届けするシリーズ「探偵とクルマ」。
登場いただくのは、探偵歴7年のキャリアを持つ『津田氏(仮名)』。現在は編集者として活躍し、その見た目も爽やかな好青年といった感じ。”探偵らしくない”風貌に驚かされたものだが、クルマを利用する機会の多い読者に向けて興味ある内容を語ってくれた。
また、「探偵を見抜く術」や「尾行を撒く」といった実践的な内容も含め、全3回に渡って紹介。特に”嫁や家族に後ろめたい行為”、身に覚えのある人は目を通してみてはいかがだろう。
現代における探偵とは
小説やドラマでは、探偵が名推理をして事件を解決ってのがお決まり。しかし、実際はそんなシチュエーションに遭遇することはないし、基本民事にしか介入できない。ちなみに、探偵には明確な定義や資格はなく「自分は探偵だ!」と宣言したら、その人はその時点で探偵なのだ。
話しが逸れたが、私が所属していた探偵事務所の仕事内容の8割は「不貞調査(浮気調査)」。といっても企業調査しかやらないところもあるし、芸能系に強い会社もあって一概には言えないが、国内の調査会社のほとんどの案件が「不貞調査」であることは間違いない。
調査業務の大半は尾行。使用する車種は!?
探偵は、基本的に徒歩×車の”ツーマンセル体勢(相棒と二人で組む)”で動く。
調査の難易度によってはバイクも利用するが、徒歩には徒歩を、クルマにはクルマで追うのだが、不測の事態に備えて車内には常時折りたたみ自転車を積載している。
そこで、よく聞かれるのが「どんなクルマに乗っているの?」という質問。探偵のクルマ選びでは、以下の4点が重要視されている。
【尾行や調査に有利な条件】
1.どこにでもありそうな車種
2.燃費に優れること
3.機材が積める積載能力
4.それなりの走行性能
これらを踏まえ、業界でもとくに人気があるのはトヨタのプリウスやアクア、ホンダのフィット。
「クラウンやマークXみたいなセダンじゃないの?」と思われる人もいるが、覆面パトカーと間違えられて警戒されてしまう可能性があるので好ましくない。また、ミニバンは小回りが利かないし目立つのでNG。路上駐車して張り込むことが多いのでボディサイズのあるクルマも避けたいところだ(軽自動車は長距離移動にリスクが高いのでNG)。
ちなみにミニバンや軽に関わらず、「ピー」っと音の出るスライド式ドアは最悪。こっそりとクルマに乗り込みたいときや、住宅街ではご近所に警戒されてしまうことも。しかも、開閉が遅いので車両に乗り込みすぐに走り出したいという状況下でも不利な面を持つ。
よって、ベストバランスな大衆コンパクトカーが選ばれることが多いのである。
探偵にとってクルマは基地であり、宿泊施設でもある
追いかけるだけが探偵車両の役目ではない。
常に予定通りの行動を取る人なんてそういないわけで、時には立ち寄り先から出てくるまで待機しなければならないこともある。いわゆる“張り込み”だ。建物の出入り口が見えるところで立って見張る(通称:立ち張り)のもいいが、厄介なのがビルやマンションに常駐する管理人や警備員。
長時間立ち張りしていたら当然怪しまれ、場合によっては通報されてしまう。そうなると張り込みが困難になるので、車内から監視したほうが怪しまれるリスクも減るわけだ。
というのも、自宅に入っただけでは「友人と遊んでいただけ」とシラを切られ、証拠能力としては乏しい。
そのため、出入りの頻度、回数、滞在していた時間が調停では重要な証拠となる。
探偵がいるところにクルマあり。探偵とクルマは切っても切り離せない関係なのだ。
次回は車両尾行についてお送りします。
(リポート:あぷりり哉)