走行性能を極めながら
プレミアム化への胎動が見られる
後期F〜G型(2005年6月〜2007年5月)
「見た目も乗り味も全域で甘美さを増した最終の鷹目」
F型の鷹目がデビューした当時を振り返ると、インプレッサの全ラインアップにおいてデザインとともに乗り味の面でも洗練度が高まった印象が強い。ボディはただ剛性を上げたというより、まるで素材の金属密度を増したことで堅牢感が高まったというような感覚があり、欧州車の乗り味に近づいた気がした。
サスペンションは、引き締まりながらも路面からの入力の角が明らかにソフト。初代『WRX』から続いた”STI=鬼のように硬い足”のイメージが覆された分岐点となった。翌年の最終G型で新設定される大人スポーツ色の強い”A-Line”。足まわりのセッティングは標準のSTIと変わらず同じということから、開発陣としてもF型になった時点で狙いどおりのコンフォート性を達成できたとの手応えがあったはず。
そして鷹目インプといえば、究極のGDBである『S204』と『RA-R』の二大巨頭が圧倒的な存在として語り継がれている。今回、「中津スバル」で取材できたのはまさにその『S204』だ。さすがにSTIコンプリートカーの”Sシリーズ”は別世界感が強烈。発進した瞬間から代田社長とふたりして悶絶の嵐となった。
いわゆる手組みバランス取りエンジンの回転フィールは神々しいまでに緻密で、アクセルを踏もうと思った瞬間から吹け上がるかのような鋭敏レスポンスなど、これぞ珠玉のユニットと評するに相応しい。走行距離は9万kmと貴重な限定車のわりには伸びており、一般的なクルマならぼちぼち消耗品の劣化による味落ちが見られるものだが、前オーナーさんの扱い方が良かったのだろう。
街乗りや軽く峠を流す程度では微塵も劣化の気配がなく、当時の開発陣の入魂ぶりがひしひしと伝わってきた。
特別仕様車など性能の高さが目立つ後期
【当時の共通デザインモチーフでイメージを統一】
当時のスバル共通モチーフとなるスプレットウイングスグリルに、4代目レガシィで人気の高かったホークアイ(鷹目)形状のヘッドライトを組み合わせたエクステリアが特徴。空力性能を徹底的に追求しルーフベーンやリアディフューザーが追加されたほか、パワーユニットはSTIの最大トルクが43kg-mへ進化した。
そして、駆動系もDCCDの仕様変更などギリギリまで進化。インテリアは涙目E型登場時に新デザインとなったものが継承された。
[性能トピック]
【DCCD制御をさらに緻密に】
センターデフに機械式を取り入れたほか、ステアリング舵角センサーを追加。ドライバーの思うラインを読み取りコントロールし、トルク配分も35:65から41:59へと変更。
回頭性と旋回中のトラクションを高次元でバランスさせている。
【新型エンジンEL15を投入】
ベーシックな1.5ℓに新開発エンジンを投入。EJ15のSOHCからDOHC化されただけでなく、ロングストローク化や吸気側のAVCS(可変バルブタイミング)採用のほか、等長等爆エキゾーストを搭載した新世代エンジンと期待された。
【最大トルクは43㎏-mへ】
『WRX STI』の最大トルクは43㎏-mへ進化。過給圧制御をファインチューンすることでトルクを向上させたほか、エキゾーストチャンバーの最適化で最大トルク発生回転数を従来と同じにしながらトルクアップが図られている。
【超高速域での安定感が高まる】
WRCを戦うために、空力性能を大幅に向上。床下の空気の流れを整流するリアディフューザーと、大型リアスポイラーの効果を高めるルーフベーンが新採用された。
[主な競技戦績]
新井選手が2度目のPWRCチャンピオン獲得&スーパーGTで表彰台に!
COMPLETE CAR 『RA-R』
究極のGDBが伝説に
究極のGDB型としてリリースされた最後の特別仕様車が『specC TYPE RA-R』。すでに『S204』がコンプリートカーとして完成されていたが、『RA-R』はピュアに走りを愉しむユーザー向け。どちらかというと『S202』のコンセプトへ回帰した印象だ。ステンメッシュホース、リアデフカバーなど競技パーツもオプションとして設定。
[リポート:マリオ高野]