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「ATFは2万キロ毎の交換、過走行車はトラブルが多い」はホントなのか

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フルードの選び方もポイントとなる、
ATFに関する疑問のアレコレ

いまやCVTも含めて、ATが主流となっているが、内部に使われているのがATFだ。
“F”はフルードの略なのだが、MTに使われるミッションオイルとは役割的に異なる。潤滑をメインとしたものがオイルなのに対して、フルードは”作動油”を指す。作動油とは、潤滑もするものの、動力伝達や制御システムの作動などの役割を果たすもの。つまりオイルよりも求められる機能は多岐に渡り、負荷も高いのが特徴だ。
しかし、ATFの純正交換指示を見てみると、これが意外にもバラバラ。トヨタでは10万km毎、ホンダは8万kmごと。日産やスバルは4万km毎と、短めではある。もちろん車種によっても異なるし、ATFとCVTFでも異なってくる。
ちなみに10年以上前の4速ATが主流だった時代は、無交換という指示がけっこうあったし、輸入車は交換できないようになっているケースも数多い。

基本はやはり、メーカーの指示を守るというのが一番なのだが、ガソリンスタンドなどで言われるのが「2万kmもしくは2年ごと」という謳い文句。マメな交換が悪いとは言わないが、さすがに早すぎるうえ、万が一のリスクも高い(知識の乏しいショップで交換することによるトラブルが起きやすい)。
ATFも資源のひとつだけに、無駄に替えることはないし、そもそも費用的な負担も大きいのだ。

 

「長距離無交換は”交換”しない方がいい」は?

逆にATF交換でよく耳にするのが、「長い間換えていない場合は交換しない方がいい」というもの。
理由はATの内部は細かい経路やバルブがあり、新油にすると内部に溜まった汚れが取れて、詰まってしまうリスクがあるためだ。そうならないためにも、古いのは逆に換えないほうがいい、という説まである。
では、実際のところはどうなのか? 長年にわたって整備の現場やATのオーバーホール専門店を取材してきた経験からすると、長期間交換していない場合、新油にするとトラブルが起こる可能性は高まるが、結局そこまでいっているATはいずれトラブルが発生することがほとんど。
つまり、「換えなきゃ良かった」ではなく、換えても換えなくても同じリスクを背負うということになる。換えていないATFというのは真っ黒なだけでなく、焦げたニオイもするので、そのまま使い続けていいのかというと、そうでもないだろう。

要は交換の仕方。多くのプロが行なっているのは、いっきに全量(一度にすべて入れ替えるのはほぼ無理)を交換するのではなく、1/2とか1/3ずつ交換して、なじませていくというもの。
場合によっては専用のフラッシング剤を使って、内部の汚れを溶かす場合もあるようだ(溶かしてしまうので詰まることはない)。もちろんフィルター交換は必須。そうすれば交換によるトラブルは少なからず防げるし、新油になったことで内部の摩耗や劣化を防ぐことが可能になる。

 

また、最近のATやCVTで守らないといけないのは、「フルードはメーカー純正」を使うということ。
燃費向上のため、各自動車メーカーやミッションメーカーは緻密な制御を行なっているのだが、フルードも含めてのこと。つまりフルードもパーツの一部として考えないといけない時代になってきているわけだ。ATFは規格があるのでまだいいが、CVTは規格がないのでとくに注意。もちろん、社外の汎用ATFを使うと必ずしも不具合が出るワケではないが、本来の性能が発揮されない可能性も捨てきれない。
ちなみに、社外の高性能フルードに換えたらシフトのショックが減ったという声を聞くが、ショックが減ったということはそれだけ滑っていたというケースもあるようだ。ATやCVTは精密なものであると考えると、一概に喜べないようにも思える。

結論としては、古いフルードを交換していいか悪いかなどと考える前に、定期的な交換を心がけるようにしてほしい。
そして、知識を持ったプロショップで作業をしてもらうことも重要である。

 

(リポート:近藤曉史)

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