BP/BL世代に3度も設定された
STIのベストセラーコンプリート
WRCラリージャパンの開催を記念した特別仕様車として誕生。
「レガシィが培った走りを、より気持ちよく味わえる。そういうクルマにしたかった」という当時のSTI社長・桂田勝さんの願いを受け、STIの高橋保夫さんが入魂チューニングしたモデル『Tuned by STI』に迫る。
このクルマの「神ポイント」
●BP/BL1世代に1800台も販売
●STIコンプリートカーの裾野を拡大
●低価格ながら他の限定車に劣らぬ高品質
毎回予想を大幅に上回るペースで完売したモデル
4代目レガシィに設定された「Tuned by STI」は、STIのコンプリートカー人気の裾野を劇的に広げた大きな功績を残した名シリーズだ。「S」のような超絶系のハイパフォーマンスカーではないが、同社の専用パーツを各部に装着してレガシィ本来の運動性能を高めつつ、大人っぽい上質感もアップ。玄人好みする甘美な乗り味やスペシャル感は、後付けパーツを装着しただけのチューニングカーでは得られない魅力にあふれ、STIコンプリートカーの人気を不動のものにした。
徐々に値上がったとはいえ、コンプリートカーとしては比較的低価格だったこともあり、設定された600台は毎回予想を上回るペースで完売。BP/BLの1世代に3度も設定され(3度とも600台)、のちの「tS」シリーズの礎を築いた。
全車とも当時のトップスポーツグレードである2.0GTスペックBをベースにSTI製のスポイラーや18インチアルミ、専用スプリングやタワーバー、スポーツマフラーやブレンボブレーキなどで武装したほか、大量生産車では難しい「チューニングの隠し味」が施されることで、特別感の強い甘美な乗り味を実現。
たとえば、ブレンボのブレーキは絶対的な制動力や耐久性を上げるためだけではなく、踏み始めはもちろん、踏み込んだ後のコントロール性の高さにより、減速時に身体に感じる前後Gの変化が穏やかになるように、運転がしやすくなることを追求。一般的なチューニングカーとは明確な一線を画すフィーリングが人気を押し上げたのであった。
「STI偉人列伝④」元STI車体技術部高橋保夫さん
元全日本ラリードライバーだった経験を活かし、富士重工業時代は実験部に所属。レガシィやインプレッサなどの開発車両の走行実験を担当後、2003年からSTIに出向。
常に栃木のテストコースを走り込み、インプレッサS203から2回目のレガシィtuned by STIまで、STIのトップガンとして活躍した。その後は富士重工業に復帰。
[リポート:マリオ高野]