軽量ミッドシップらしい俊敏さ
「アルピーヌ」の新伝説が始まる
ついに復活を果たした「アルピーヌ A110」の新型は、2シーターのスポーツカー。
フルアルミ製のプラットフォームとアンダーボディを採用し、軽量化と俊敏なハンドリング性能を追求した。その性能をじっくりとリポートする。
前後バランスに優れたニュートラルステアが魅力的
伝説のブランド、アルピーヌが復活した。ブランニューモデルの「A110(エー・ワンテン)」が、いよいよデビューしたのである。
見ての通り、そして車名の通り、モチーフとされたのはアルピーヌの代表作“クラシック”A110だ。1977年に生産が終了したA110が、もしもそのまま幾度かのモデルチェンジを経ながら作り続けられていたら、どうなっていたか。それが開発のコンセプトだったという。
ボディは、全長4110mm×全幅1810mm×全高1300mmとコンパクト。アルミボディの車両重量はわずか1080kgに過ぎない。
リアエンジンではなくミッドシップとされた理由のひとつは運動性能。そして、リアがなだらかに下がったスタイリングを実現するためだ。大げさなスポイラーなどの空力付加物が備わらないのも特徴。それを実現できたのは、フラットフロア化、そして巨大なディフューザーによって、十分なダウンフォースを稼ぎ出すことができたからである。有効な面積のディフューザーを確保することも、リアエンジンが避けられた理由という。
エンジンは直列4気筒1.8ℓターボで、最高出力252ps/最大トルク320Nmを発生する。トランスミッションは7速DCTのみ、マニュアルミッションは用意されない。
その走りは、まず何より軽さが鮮烈。動き出しからして抵抗感が一切無く、動きは実際の車重以上に軽やかに感じさせる。ボディの類い希な剛性感や駆動系その他あらゆる部分の精度の高さも、そんな印象を倍加させているのだろう。
しかも乗り心地が抜群に良い。騒音や振動がしっかり抑えられ、サスペンションが想像より遙かにソフトな設定とされている恩恵だ。室内はタイトだが、ロングツーリングにも、あるいはデートにだって使える快適性が実現されているのは、嬉しい想定外と言える。
なお、室内はシート背後にブリーフケースくらいは置ける余裕があり、フロントには110L、リアにも96Lの荷室も確保される。実用性も十分以上だ。
それなのにコーナリングはとても俊敏なのだから、また驚いてしまう。ステアリングを切った通りに、タイムラグ無く自分を中心に向きが変わっていく軽量ミッドシップらしい感覚は、街中でも十分に味わえそうだ。
動力性能も侮れない。ターボらしく低回転域からしっかりパワーの出てくるエンジンは、回していってもタレることなく、爽快な加速感をもたらす。DCTの変速は速く、そしてマナーも洗練されているから、小気味よい加速を楽しめるわけだ。そんなクルマだけに、サーキットでの走りは言うまでもなし。エンジンをトップエンドまで回してコラム固定のパドルでシフトアップしていくと、200km/hを超える領域でも確かに車体が安定していることを実感できる。前後44:56という重量配分のおかげでブレーキング時の安定性も上々。安心して攻められる。
そして何よりファンなのがコーナリング。限界近くまでアンダーステア知らずで軽快に向きが変わり、スタビリティに振りすぎていないので、そうやって攻めていくと適度にリアが出てきて、いかにも前後バランスに優れた、ニュートラルステアのコーナリングを楽しめる。
しかも、ちょっときっかけを作ってやれば、簡単にリアをスライドすることも可能。その先のコントロール性は素晴らしく、まさに自由自在という感じだから、夢中になって走り回ってしまった。
スポーティでエレガントなインテリアもモダンなスタイルを踏襲。軽量バケットシートなど、ライトウェイトスポーツカーならではの装備を備えている。
新生A110には、想像以上の走りの楽しさが備わっていた。それは、新たな伝説の始まりを予感させるほどの…。注目の価格は、最初のロットとなるプルミエールエディションで5万8500ユーロ(約800万円ほど)。日本では、2018年後半にも発売開始となる予定である。
ちなみに、1970年代のアルピーヌA110は1000万円の価格がついているものが市場で出回っているようだ。
アルピーヌならではのフェイスは、進化しても、そのスタイルを変えること無く、現代に継承された。
(リポート:島下泰久/編集:オートファッションimp編集部)