進化するプラグインハイブリッドの実燃費は?
三菱のプラグインハイブリッド『アウトランダーPHEV』で様々な走行パターンで燃費を計測。その合計走行距離は約1750km。80〜90km/hで巡航すると燃費はカタログ値を上回る19.2km/L以上(ハイブリッド燃料消費率)を記録。もちろん、この数値は200km以上での平均燃費だ。
『アウトランダーPHEV』は、充電もできるプラグインハイブリッドカー。基本はモーター駆動ではあるが、高速走行や高負荷が掛かったときにエンジンとモーターで効率の良い方を使うということで低燃費性能を実現している。さらに他の電気自動車と同じように、駆動用の電気を家庭に供給することも可能だ。
2013年の登場以来、進化を続けている『アウトランダーPHEV』は、今年3月6日よりスイスで開催されている第88回ジュネーブ国際モーターショーでは2019年モデルが発表された。エンジンは現行モデルの2リットルから2.4リットルへと拡大。
2019年モデル(上の写真)が400ccの排気量アップしたのは、より効率良く発電することでモーター走行のパフォーマンスを高めようとしているのと同時に、高速走行時にエンジンを使ったときにパワフルな走りを実現できるようにするためだ。
つまり、今回のモデルチェンジは、燃費よりも走りのパフォーマンスアップを目的にしているという。
さて、今回試乗テストをしたのは、ビルシュタイン製ショックアブソーバーやダーククローム調塗装を施した18インチアルミホイールなどを装備するSエディション。搭載エンジンは、118ps/19kg-mを発揮する2リットル直4(上の写真)で、フロントとリヤに82psのモーターを搭載する。モーターは、前後輪をそれぞれを駆動し、最大トルクはフロント用モーターが14kg-m、リヤ用は19.9kg-mだ。燃費はカタログ値でハイブリッド燃費消費率が19.2km/L。充電した電気だけのモーター走行では60.2km(Sエディション)となっている。
ここで気になるのが、モーター走行で電気を使い果たした後の燃費だ。カタログ値では60.2km電気だけで走行できるとなっているが、実際には40〜50kmというのが一般的。
シティコミューターとして、買い物などで使うなど近距離移動であれば、ほぼモーター走行のみで済んでしまうことになる。
しかし、アウトランダーは三菱ならではの精密な制御を実現するS-AWC(Super All Wheel Control)という4WDシステムを採用するSUV。街中ばかりをチマチマ動き回るより、遠くまで走ってアクティブなライフスタイルを楽しめるクルマだ。
ところが、インターネットでアウトランダーPHEVの長距離燃費について調べてみると意外にも情報が少ない。中には、高速道路のサービスエリア毎で充電を繰り返して走れば燃費が良いといった記述もある。
つまり、約50km毎に30分間の充電ストップをするということなのだ。
今回は、関東から関西への移動ということもあり、その距離は片道500km強。50km毎に充電すると仮定すれば10回×30分=300分(5時間)も必要。ガソリンの消費は最小限にできるが、とてもじゃないが現実的ではない。
長距離はSAVEモードで電池を残す
そこで、様々な走行パターンを試して燃費を計測してみることにした。走行状況(コース)は異なるので直接比較はできないが、できるだけ燃費の正確度を高めるために計測区間は基本的に200km以上とした。
まずは三菱自動車に長距離走行で燃費を良くするコツを聞いてみた。
「高速道路の燃費を良くするにはは80〜90km/hの走行がベストです。ポイントはSAVEモードで走行して電気を使い果たさないようにすることです。
アウトランダーPHEVは、走行状況に応じてモーターとエンジンを使い分けます(高速走行ではエンジンが介入する頻度は高い)。電池を使い果たしてしまうとモーターを使うと燃費効率が高まる状況を十分に活かせなくなってしまいます。省エネ走行をするときはECOモード(任意でカットすることができる)は必須ですね」という。まずは満充電状態でスタート。あくまでも一般的な走行ということでエアコンは25度でオートに設定した。
SAVEモードで走行を始めると、モーターだけで走行できるような環境でも電気が減るとエンジンが始動して充電を開始する。
神奈川県の川崎インターから東名高速に入り、御殿場(静岡県)から新東名へ。浜松サービスエリア(静岡県)までの220kmを走行。
この区間はアップダウンが多いため、モニターを見ているとエンジンとモーターの両方で走っているケースが多かった。
SAVEモードは、電池量を減らさないようにする設定なので、モーター走行で電気を消費すると発電のためにエンジンが始動。スタート当初からエンジンが動く頻度が高いため燃費は16km/L台あたりを記録していた。しかし、走行距離が長くなるにつれて徐々に燃費を伸ばし19.3km/Lという結果だった。
スタートから50kmで電気は空っぽ
しかし驚愕の平均燃費を記録した
浜松から大阪までは、とくに特別なことはせずに通常モードで走行してみた。
まずは、浜松サービスエリアで30分かけて急速充電。メーター上での電池残量は約80%となった(100%までは充電できない)。巡航速度は、浜松サービスエリアまでの220kmと同じように80〜90km/h。
新東名の浜松(静岡県)から岡崎(愛知県)までの区間は、アップダウンはあるものの下りが多くモーターだけで走行できるシーンが多かった。そのため、電気が残っているときは平均燃費が200km/Lを超えることもしばしば(走り方によっては、瞬間的に700km/Lを超える燃費を示すこともある)。しかしスタートから50kmあたりで電気をほぼ使い切り、下の写真のようにメーター上では電気で走れる距離は表示されない。この状態では、高速道路での走行はエンジンが主体で駆動し、エンジンは同時に充電も行う。そして電気が貯まるとハイブリッド走行となるのだが、長い上りなどでは途中で電気が足りなくなってか、1.9tのボディを2リットルエンジンで走らせることになる。
80km/h巡航なら、さほどパワー不足は感じられないが、別の計測区間を走行した印象としては電気は残しておいた方が力強い加速を期待できるだろう。
途中、降雪があったり風が強かったりなど決して条件は良くなかったが、浜松サービスエリアから大阪までの240kmを走行した平均燃費は、19.5km/hとSAVEモードを上回る数値を記録。ちなみに、カタログのJC08モード燃費19.2kmも上回った。
このような好燃費を記録できたのは、計測開始地点となった新東名の浜松サービスエリアから岡崎(愛知県)は下りのセクションが多く、走り始めて最初の約50kmはほぼモーター走行(約100km/hまでEV走行ができる)。ガソリンの消費はゼロに等しかった。
この燃費の貯金があるため、その後のハイブリッド走行(14〜16km/L)で燃費が落ちても、平均すれば19.5km/Lという結果になったようだ。
さらに新名神の土山(滋賀県)から京滋バイパスの宇治(京都府)までも、川崎〜浜松より下りのセクションが多かったことも平均燃費を押し上げた原因だろう。
アウトランダーPHEVには回生レベル(充電できる)をコントロールするパドルシフトが装着されている。
回生レベルはB0からB5まで選べ、数値が大きいほうが回生率が高い(エンジンブレーキが強くなっていくような感覚)。
SAVEモードで電池量が残されているときは、下り坂では減速しにくいB0を選んで転がすように走らせると平均燃費は好転する。
逆に通常モードで走行しているときは、減速時にはB3〜B5を積極的に選び電気を蓄えるようにするといいだろう。