「歴代モデルの魅力と狙い目」を
中津スバル代表が本音を暴露
6世代28年の歴史を持つSUBARUの基幹車種「レガシィ・シリーズ」。
歴代それぞれに独自の魅力があるが、中古車として狙い目なのはどのモデルなのか? 創業から60年目を超える老舗のSUBARU車販売店、岐阜県中津スバルの代田社長に中古レガシィを購入するにあたってのポイントについて語ってもらった。
初代と2代目は優良車が少なく5〜6代目は高値、ゆえに3〜4代目の在庫が増加
中津スバルの在庫を見ると圧倒的に多いのは3〜4代目モデル。
どの世代からも好まれる初代と2代目モデルも多数揃えたいところだが、優良物件が少ないのが現実だ。中古車検索サイトを見ても流通台数が激減しており、あっても程度の良くなさそうな物件が目立つ。中津スバルでさえ滅多に入庫しないほどだから、選ぶ際には慎重な検討が求められると認識したい。リスクを避けるためには、真性のマニアがいる販売店に相談するのが近道となる。
そして、高年式の5〜6代目モデルは流通台数は豊富ながら相場が高いのが難点。マニアの間では不人気の5代目モデルも値下がっておらず、レガシィの評価に関しては中古車市場とマニア界隈は完全に乖離しているとみていいだろう。しかし相場が高い分、手放す時も高値が期待できるので、高額物件に手を出しても損はしない可能性が高い。
“代田社長”推薦レガシィ・その1
【ブリッツェン(3代目ベース)】今回の特集でも取材した個体。2002年モデルほどの甘美さはないが、程度は十二分に優良。コーティングを施して特別な赤を維持したい。
クルマ好きにオススメは軽量モデル。理想は1.4トン以下
代田社長は5〜6代目モデルを高く評価するが、それよりも3〜4代目モデルを数多く在庫する理由は「軽さ」。
特にクルマ好き、走り好きの人に対しては、車格的にフラッグシップにあるレガシィでも1.5トン以下のモデルを強くススメる場合が多い。もっといえば1.4トン以下が理想。たとえば4代目モデルのNA2.0ℓ車は1370〜1390kgと軽量で、ある程度の消耗品をリフレッシュすれば自分の手足のように自在に操る喜びが得られるという。
オシの4代目「2.0R」は、NAエンジンながらハイオク仕様だが、繊細かつ痛快なエンジンフィールからはプレミアムなレガシィを作りたいという当時のエンジニアたちの熱い思いがヒシヒシと伝わって来る。DOHCを根本から見直した入魂エンジンを搭載する味の濃いグレードだ。
しかし、新車当時も一定の人気を博すも、原油高騰でハイオク仕様は避けられる時代に。やがて消滅してしまったのが今も悔やまれる。BRZのFA20はその後継モデルにあたるという。
“代田社長”推薦レガシィ・その2
【2.0R(4代目)】本編でも紹介したDOHCのNA2リッター。一般的には地味な存在なので、悶絶マシンの割に相場は比較的安めに推移しているのもオススメの理由。
多少くたびれている個体もしっかりしていれば問題なし
中古車選びの基本は、教科書通りにいえばなるべく走行距離が少なく、ノーマルに近い物件を選ぶべしということになる。が、そういう良物件は当然ながら値段が高い。誰が見てもすぐに良いクルマだと判断できるもの、誰もが安心してすぐに売れるようなものは高値になるので、間違いはないが決していい買い物とはいえない面もある。
たとえ趣味に合わない怪しげなパーツが付いていたり、多少ボロに見えたとしても、乱暴に扱われた形跡さえなければ僅かなリフレッシュで想像以上に素敵なクルマに蘇るケースが多いという。
劣化したり傷ついてしまっているものでも、それが「味」と呼べる範囲なのか、あるいは本当にダメなのか。味として生かせるか欠陥商品にしかならないのか。そういうモノの見方をすると、走行距離の多さや年式の古さはあまり関係がなくなる。また、事故歴があっても、どんな事故でどんな修理をしたのかで評価は全然違ってくる。鼻の利く販売店スタッフがいれば安心だが、インターネットではなかなか見極められない領域なので、実際に足を運んで会って話をしてみないとわからない。
“代田社長”推薦レガシィ・その3
【2.5GT(5代目の6速MT)】レガシィ最後のMTが味わえる前期型。6速MTはTY75ベースながら上質さを追求し、操作フィールも味わい深いものになっている。
熟成の後期も良いが、初期型には性能や耐久性に余裕が与えられる
代田社長に「歴代レガシィでもっとも好きな一台は?」と尋ねると、「初代のRS」との答えが返ってきた。あそこまでのモノを作るエンジニアの執念に敬意を表してやまないという。やはり、誕生して最初に投入するクルマは作り手の入魂度合いが大きいもの。残念ながら初代RSは希少車にて入手困難だが、じつは各世代とも初期モデル”A型”は狙い目にあるといえる。SUBARUは1年ごとにアプライドが新しくなって性能も装備も良くなるイメージが強いが、代わりに失うモノがないわけではない。基本的にどんなクルマでもまずは余裕を与え、そこから不要と思える部分を削いでいくのだ。
年次改良が進んで熟成する良さも捨てがたく、スペック的には前期型よりも魅力に思えるが、A型は目に見えない部分に余裕が与えられている場合が多いので、低年式車ならば特にA型狙いがオススメ。5代目モデルではMT仕様があるなど、二度と出なくなる貴重な仕様があったりする。センターコンソールまわりなど、本来はAT向けの室内設計を無理やりMT向けにしている努力が感じられるのも、また一興なのだ。
“代田社長”推薦レガシィ・その4
【RS(初代)】レガシィの原点が感じられる名車。中津スバルでは永久保存用の2台のほか、稀に売り物として在庫していることも。
真のプレミアム性を味わう6気筒という選択
日本市場での復活を待望してやまないマニア諸兄が多いSUBARUの6気筒。
6気筒エンジン搭載モデルは特別な存在であり、黎明期からの歴代エンジニアの悲願でもあったので、作り手の思い入れの強さもまた別格だ。
SUBARUでは20世紀最後になって投入された新エンジンが6気筒だったことも、偶然とは思えない特別感が感じられる。3代目に設定されたクロスオーバー車、ランカスターから搭載が始まったEZ30型・水平対向6気筒エンジンは、21世紀を迎える日本であらゆるメーカーの先陣を切って誕生したエンジンだ。
今回の取材でも4代目の3.0Rを最後に試乗させていただいたが、他のエンジンからは得られない繊細な回転フィールに陶然とさせられた。フラッグシップユニットとするならば、世界的に見ても無駄に大きいわけではないが、いまの時代はダウンサイジング。環境性能面でも時代に適合させるのは難しいとなれば、このまま消滅する可能性も。
限定車ほど高値でもない。いまのうちに味わっておきたい1台といえそうだ。
“代田社長”推薦レガシィ・その5
【3.0R(4代目)】
珠玉の6気筒も然り、それに相応しい格調の高さを追求したシャーシも絶品。相場は意外と安いがオーナーが手放さないのが難点
下は、先代のアウトバック3.6もオススメ。
トライベッカ用に開発されたエンジンだけあってトルクは潤沢。繊細な3.0に対し、3.6はコクのある濃厚さが魅力でクリーミーな味わい。台数はそれほど多くはないが相場はリーズナブルなうえ、贅沢感でもFB25を圧倒する。
SPECIAL THANKS 中津スバル
走行テストでクルマの良し悪しを正確に見極めるため、ニュルブルクリンクに通って死に物狂いで運転スキルを高める。「中津スバル」が多くの顧客から信頼される理由のひとつだ。
中古車で仕入れたすべての物件を徹底的に整備し、さらに代田社長みずからの運転による高速走行テストも実施。低年式車や過走行車でも自信を持って販売できる体制を整えている。
取材協力:中津スバル
(レポート:スバルマガジン編集部、まとめ:マリオ高野)