高齢者ドライバーにも強い味方となりうる、
移動の自由を身近にする福祉車両
大阪府にあるインテックス大阪で開催された「バリアフリー2018」。
多くの自動車メーカーも出展し、さまざまなタイプの福祉車両を展示し、その魅力を積極的にPRしている。福祉車両といえば、デイサービスなどの送迎で使われる大きなクルマをイメージするだろう。これは、助手席や後席のシートが回転して乗り降りをサポートしたり、スロープや乗降機で車いすごと乗車する「介護タイプ」という種類。そして、身体が不自由な人が”自分で運転する”ために補助装置を取り付けた「自操タイプ」と、福祉車両には大きく分けて2種類に分類される。
今回、この「自操タイプ」に注目し、なかでも気になった展示物をピックアップしてみた。
ニーズに寄り添った運転補助装置【Honda】
すでに40年以上の歴史を持つ、Hondaの運転補助技術。片手、もしくは足が不自由な人に向けた「テックマチックシステム」と、両上肢(両手)が不自由な人でも運転操作を可能とする「フランツシステム」など、ニーズに寄り添った技術力を披露していた。
「両足の不自由な人へ」
ここでは、アクセル&ブレーキ操作(引くとアクセル/押すとブレーキ)のほかにヘッドライトスイッチ・ウインカー・ホーンなど、頻繁に使うスイッチ類が集約されている。
「右足の不自由な人へ」
ブレーキペダルの左側に設置したアクセルペダルと、通常のアクセルペダルを結ぶ「アクセルリンク」というシャフトが連動。右のアクセルペダルは、左のアクセルペダルからの入力のみで稼働する仕組みのため、誤操作を防ぐこともできる。
また、左手でウインカー操作を可能としたウインカーレバーも披露。右手が不自由でもラクに操作できるというわけだ。
【両上肢の不自由な人へ】
この「フランツシステム」、最近では「フィットハイブリッド」に適用させている。
ホンダ技研工業
http://www.honda.co.jp/
車いすをルーフ上へ、スムーズな乗降を実現【TOYOTA】
介護タイプをメインとした15台におよぶ福祉車両を並べたのが、「トヨタ&ダイハツ」のブース。
自分で運転する補助装置を取り付けた「自操タイプ」として、『アクア・フレンドマチック取り付け専用車』を披露した。
また、『アクア・フレンドマチック取り付け専用車』の装備として、車いすとシートの乗り降りをサポートする「移乗ボード」や「パワーシート」。車いすに座ったままでもバックドアを閉めやすくできる「バックドアストラップ」、さらにベース車に比べて操作する力を50%軽減した「専用パワーステアリング」など、多岐にわたる。
ちなみに、トヨタでは福祉車両を総称して”ウェルキャブ”と呼ぶ。この「ウェルキャリー」は、アクアのほかにプリウスでも用意されている。
トヨタ自動車
https://toyota.jp/
運転補助装置を自分の乗りたい車へ【ジー・エス・ティー】
少子高齢化の影響もあり、この10年間ほどで大きく重要を伸ばした福祉車両。
しかし、自動車メーカーが販売する「自操タイプ」に限っては伸び悩んでいるそうだ。自動車メーカーの担当者に理由を聞けば、”選択できる車種が少ない”が原因のひとつだという。なるほど、車を単なる移動手段として考えているならばまだしも、クルマ好きや走りを楽しみたい人にとって選択肢が少なすぎるわけだ。
こちらの「ジー・エス・ティー」は、運転補助装置の”後付け”を可能とした『ガイドシンプレックス』の総輸入販売元。本国のイタリアでは50年以上の長い歴史を持ち、アルファロメオ・フィアットなどではメーカーオプションとして採用されるなど、信頼できるメーカーだ(国内でも一部ディーラーでオプション設定)。
その運転補助装置システムがじつに多彩。例えば、純正ステリング裏に取り付けたリングを、指先で回すとアクセルのコントロールが可能。アクセル操作を行なう場合、一般的にはハンドル横に備わるレバーで操作するが、両手でのステアリングおよびアクセル操作が可能となるのが特徴だ。
この『エレクトロニック・アクセルリング』は、リングを引くこと or 押すことでアクセル操作を可能としたタイプも用意。他にハンドル横に設置したレバーを使ってアクセルとブレーキを制御する「ワンハンドコントロールシステム」や、エンジン回転・車速・アクセルのON/OFFといった情報を適切に制御してMT車のクラッチ操作を自動化する「オートマチック・クラッチシステム」など、用途に合わせた後付け補助装置を展開している。
気になる費用は、システムの内容によって異なるが工賃を含めて50万円ほど。取り付け可能な車種については問い合わせてほしい。
ジー・エス・ティー
https://www.gst.co.jp/
(撮影レポート:Auto Messe Web編集部)