万が一のトラブルでも安心感は高いのに、
燃費、環境、スペースの問題がネックに
最近のクルマはスペアタイヤの代わりに、パンク修理キットを積んでいることが多い。
このキットは釘などによって空いた穴を埋める液剤と空気入れなどがセットになったものだ。ちなみに弾けて裂けるような、いわゆるバーストを修理することはできないので悪しからず。
ご存知のように以前はスペアタイヤや、テンパータイヤ(走行距離や速度を制限した応急用)を積んでいたのだが、なぜパンク修理剤に移り変わってしまったのだろうか?
理由はいろいろとあるが、まずは燃費向上のための軽量化。グラム単位で削るのが昨今の軽量化だけに、スペアタイヤやそれに伴う工具は大きなハンディとなる。パンク修理キットにすればムダな贅肉を排除することが可能なうえ、車室内のスペースを確保できるわけだ。輸入車での普及が進むランフラットタイヤ(空気圧がゼロになっても一定距離を走行できるタイヤ)の採用も同様の理由といえよう。
さらに、道路の状況がよくなった影響によりパンクしにくく、スペアの出番が減ったというのもある。使われることなく、破棄されてしまうスペアタイヤがほとんどなのだが、タイヤは天然ゴムを使用しているだけに資源問題にも関わってくる。
つまり、スペアタイヤを採用しないことは省資源化に繋がるわけだ。
また、最近ではスペアタイヤを積んでいても、交換できないユーザーが増加。事実、タイヤの性能は向上しているものの、パンクやバーストによる救援依頼の割合は、この15年間で倍増している(JAF調べ)。
また、レッカー車を呼んでディーラーやカー用品店でタイヤ交換することが増えるなど、スペアタイヤを積む意味がなくなっているという理由だ。
ちなみに、かつては4輪に装着されているのと同サイズのスペアタイヤを積んでいたのだが、さすがにスペースを取るので、テンパータイヤに取って代わられてきた。
“テンパー”と、扁平率”10%”だからという人もいるが、正しくは”テンポラリータイヤ(応急タイヤ)”の略。負荷が大きいSUVでは、今でもテンパータイヤを積んでいるが、いざ使おうとしたら空気が抜けていることもあるので、半年に1回ぐらいは点検&補充しておきたい。
そして、外品ホイールにインチアップしたクルマで外径が変わっている場合。
テンパータイヤを履かねばならない状況になった際は、ネットオークションやタイヤ店で購入可能なので同等サイズのものに交換しておくといいだろう。
同様にパンク修理キットも市販品や、ディーラーで部品扱いとして購入可能。こちらを積んでおくのも手だ。
パンク修理剤では修復できないパンクやバースト。スペアー&テンパータイヤには、このようなトラブルに遭遇してもレッカーを呼ぶ必要はなく、自車で帰ることができる(自分で交換できる場合)。
一長一短とはいえ、スペアタイヤが勝るケースがあることも付け加えておきたい。
(リポート:近藤曉史)