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2000本におよぶピレリタイヤを消費した、過酷な24時間レースの世界

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クラスやスティントで異なる作戦&交換作業、
使わなかったタイヤはどうなる?

今シーズンのスーパー耐久シリーズで、24時間レースの復活とともに、大きなトピックとなっているのがタイヤの変更。コントロールタイヤがF1でもおなじみのイタリア「PIRELLI(ピレリ)」社のものに変更された。
高性能ブランドとして知られる”P ZEROシリーズ”のスリックタイヤと雨天用のタイヤが供給され、4月の開幕戦を迎えていた。当初は「様々なクルマが出走するスーパー耐久だけに、総ての参加車両にタイヤを用意するのは難しいのでは?」と危惧する声も聞かれたが、実はピレリは世界中で”P ZERO”のレーシングスペックを市販しており、エントリーリストから必要なサイズと本数を割り出して用意してきたことが分かった。
ワールドワイドでタイヤを供給している「PIRELLI」ならではのエピソードだ。

ちなみに、スーパー耐久シリーズといえば基本が3〜5時間のレース。
ところが今回の第3戦「富士SUPER TEC 24時間レース」は、通常の5〜8倍の距離(時間)を走ることになる。当然、タイヤの使用総本数も、単純に言えば5〜8倍。実際には約5000本がトラック15台によって富士スピードウェイに運び込まれていたのだ。もちろんタイヤの本数が増えれば、フィッティングと呼ばれるホイールへの組み付け作業も増加。これに呼応するようにサービス体制も強化される。
五木田健・ピレリ モータースポーツビジネスデベロップメント マネージャーによると「エンジニアからフィッターまでスタッフは65人。それだけのスペシャリストを(国内だけで)集めるのは大変で、8か国から集めています。レースは24時間で、常にサービス体制が稼働している必要があるので、スタッフを3班に分けて2班が稼働し1班が休憩するというシフト。食事はケータリングサービスを利用し、仮眠はバスの中で、とハードでタフなスケジュールになってしまいました。もっとも私はその3班には入ってないのでいつ休めるか見当もつきませんが(苦笑)」とのこと。
そしてレースの作戦的には「GT3などは基本的にルーティンのピットインごとに4本交換になると思いますが、小さなツーリングカーでは2スティントや3スティント連続して使用する作戦もありかな、と考えています」と話してくれた。

優勝した「No.99 Y’s distraction GTNET GT-R」はもちろん、各スティントごとにガソリンを補給するとともにタイヤを4本交換。いわゆる”フルサービス”を基本としていた。毎度毎度のピットワークを、ミスなくこなして素早くマシンをレースに送り出したことも、レースの大きな勝因となったことは言うまでもない。
そして、コントロールタイヤが変わったことから、例えば”セッティングやドライビングがどう変わった?”が気になるところ。優勝チームの中心ドライバーとして活躍した星野一樹選手によれば「去年まで(のコントロールタイヤ)とは、確かにタイヤのキャラクターが違う。最大のグリップが高くなった半面、その分グリップダウンも大きいような気がします。ただ、これは全チームが同じタイヤを使用しているから、全くのイコールコンディション。いかに早く、ピレリのコントロールタイヤにあったセッティングを見つけ出し、またドライビングを合わせ込んで行くか、が重要になってきます」とのこと。

ただし、星野選手はNISSAN GT-R NISMO GT3のマシンで「SUPER GT」にも参戦し、GT3マシンの開発をも担当。さらに海外のレースにも数多く参戦していることから「実はピレリのレーシングタイヤは、これまでに装着して走ったことはありました。でもカスタマー(市販)タイヤは今年が初めてで、テストからクルマのセットやドライビングを合わせこむことをやってきました。(ライバルに比べて)早めに合わせこめたことが、開幕戦や今回の優勝に繋がったのかな、と思います」と、嬉しげにコメントしていた。

 

一方、参加台数も多く、コンペティションが激しいとされるST5クラスでは、車種のバラエティが豊富な分だけタイヤの戦略も様々。多くの前輪駆動車は、フロントを早めに換えてリアはより長く使用するのが鉄則であり、クラス2位の「No.37 DXLワコーズNOPROデミオSKY-D」はフロントはピットインのたびに交換し、リアは5〜6回に1度の割合で交換したとしている。一方でクラス3位の「No. 69 J’S RACING Moty’s 制動屋 FIT」はフロントを2スティントずつ使い、リアはなんと8時間ごとの交換だったようだ。
リアの交換頻度はほぼ似たようなものだが、フロントに関してはデミオの毎回交換に対してフィットは2スティントずつ走った、という違いが気になるところ。恐らくはディーゼルターボ・エンジン搭載による強大なトルクにくわえ、フロントが重いデミオならではの作戦だったと考えられる。
ただ、24時間レースとなると、タイヤの戦略に加えて燃費によるレースの組み立ても重要になってくるが、そのあたりは“企業秘密”のようで口の堅いチームが多かった。ST5クラスに関しては、優勝した「No.88 村上モータースMAZDAロードスター」も含めてトップ3は燃費の順位、との分析が聞かれ、タイヤに関しては結果を左右することはなかったようだ。

ちなみに、「SUPER GT」のように複数のタイヤメーカーが参戦するカテゴリーでは、コントロールタイヤに対してコンペティションタイヤと呼ぶのが一般的だ。
その1戦に対してタイヤを開発してきており、使用しなかったタイヤは、単純に次回に持ち越し、とはならないのだが、スーパー耐久のコントロールタイヤはあくまでもカスタマータイヤ。五木田マネージャーは「今回持ち込んだ5000本のうち約半分はレイン用で、これは丸々次回に持ち越しとなります。またスリックも8割がたはチームにお渡ししましたが、残った分は次回に持ち越しになります」と話してくれた。

 

(レポート:原田 了)

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