最大4GBを用意する新型フラッシュメモリは
パーテンションによって相反する要素を両立
現代の自動車における最重要事項は安全性だ。
衝突被害軽減ブレーキや追従クルーズコントロールといったADAS(エーダス=先進運転支援システム)も広く普及している。こうしてヒューマンエラーを機械がカバーしていく延長として自動運転・自律走行への期待も向上。未来の自動運転が天文学的なプログラムコードになるのは容易に想像できるだろうが、すでに現時点でも制御プログラムは大きくなっている。初期のインジェクションエンジンが使っていたプログラムのサイズはKB(キロバイト)単位だったが、いまやMB(メガバイト)を超え、GB(ギガバイト)に達しているほどだ。
当然、プログラムを格納しておく記憶装置についても大容量化、そして読み込み速度の速さが求められる。そうしたニーズに応えてきているのが、車載用NORフラッシュメモリでは65%とトップシェアを誇る「サイプレス セミコンダクタ社(以下、サイプレス社)」。
今回、世界のIT産業における中心地であるシリコンバレー、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼに本社を置く同社から、次世代のNORフラッシュメモリが発表された。
NOR(ノア)フラッシュメモリとは、書き込まれたデータにランダムアクセスすることが得意なタイプのメモリで、スマートフォンや車載プログラムの格納場所として広く利用されているタイプのフラッシュメモリのカテゴリー。そのトップ企業として知られる「サイプレス」社の新型NORフラッシュメモリは、本来は相反する機能性と耐久性といった要素を両立させただけでなく、さらに安全性も高めることに成功した。
2019年第一四半期のローンチに先立ち日本においても発表会を開催。登壇したのは、「日本サイプレス」の代表取締役社長である長谷川夕也 氏と、「サイプレス」社でメモリ製品事業部のエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるサム ジャハ氏の二人だ。
新型NORフラッシュメモリ『センパー』の進化ポイントは、100万回以上の書き込み(512MBで最大128万回)を保証すると同時に、25年のデータ保存を可能にしている点。さらにデータの改ざんがないよう確認する各種機能も搭載されている。
つまり、複雑なプログラムを長期間保持できるというわけで、自動運転時代には必須といえる進化を遂げたといえる。こうした相反する要素の両立には様々なテクノロジーが用いられている。たとえば、パーテンションごとに書き込みへの耐久性やプログラムの長期保存性に最適化することは、そうしたテクノロジーのひとつだ。
「サイプレス」社のビジネスモデルは、自動車メーカーやサプライヤーを対象としたB to Bのため一般ユーザーには関係のない話と思いがちだが、NORフラッシュメモリの高性能化とデータ保持性の向上はもちろんエンドユーザーのメリットにもつながる。
複雑な制御により高機能化したクルマを、長期間使うようになってもプログラムのエラーが起きづらいというのは、なによりも安全につながる要素なのだから。
なお『センパー』のラインナップは512MB、1GB、2GB、4GBの4タイプ。まずは512MBと1GBからローンチされるということだ。
(レポート:山本晋也)