地味な見た目とは裏腹に感激を覚えた、
300台限定の神ハンドリング
STI創立20周年を記念するスペシャルモデル「インプレッサWRX STI 20th ANNIVERSARY」。
次なる30周年モデルがどうなるのか興味深いものがあるが、10年前に発売されたインプレッサWRX STIは、その走りの良さなど記憶に残る名車だ。特にフロントの外観は”オプション装着車”程度で控え目な仕様ゆえに、希少車と気付かれにくいところがマニア心をくすぐるものである。
「インプレッサWRX STI 20th ANNIVERSARY」
2018年4月を迎え、SUBARUファンの間ではSTIの30周年記念関連の話題が過熱している。
かつて”SUBARUマガジン誌”に掲載された、平川良夫社長インタビュー記事でもほのめかす発言が見られたが、30周年記念限定車の中身は? そして限定車だけでなく記念イベントも開催されるのだろうか、など非常に興味深い。
では、10年前の20周年の時はどうだったかというと、インプレッサWRX(GRB系)初のSTIコンプリートカーとして発売された「20thアニバーサリー」を思い出さずにはいられない。
チューンド・バイ・STIレガシィの2007年モデルとS402に続く、辰己英治さんが開発をまとめたコンプリートカーの3作目で、パワーアップなどの飛び道具はなく、外装の加飾も控えめでコンプリートカーとしては地味なもの。しかし、S402で完成の域に達した”強くてしなやか”なシャーシ作りが、完熟の域へ移行したことを実感した。
GRB系のA型で感じていたステアリングフィールの希薄さが解消され、旋回中に得られる路面インフォメーションの濃さに筑波山のパープルラインで酩酊したことが思い出される。
100万円以上費やして復活させ、足まわりの消耗品をすべてリフレッシュ。「アイバッハ」のスプリングと「オーリンズ」のダンパーで、悲願の硬派な仕様へのモディファイを果たした筆者のGC8も連れ出して比較試乗の動画を撮影したが、「20thアニバーサリー」の洗練度の高さを前にすると、リフレッシュしたばかりの愛車がすでに古くさく思えてしまいショックを受けた。
そんな衝撃のなかで追い打ちをかけるように、辰己さんの口から「操縦性とコンフォート性は相反するものではなく現代のクルマなら十分に両立できる。教科書を疑え」と聞かされた時に抱いたある種の絶望感は生涯忘れないだろう。
なお、このクルマが発売された2008年は4月に軽自動車自社開発・生産からの撤退、12月にはWRXからも撤退するなど重大、かつ暗いニュースを相次いで発表した年。せっかくの20周年は「20thアニバーサリー」を発売しただけで終わってしまったのが惜しまれる。
そんな20周年の心残りを取り戻す意味でも、30周年は記念イベントでも盛り上がりたいものだ。
自分の手で路面を撫でるかのような感触が得られるほど情報量が濃いステアリング。GRB初期型否定派からも好評だった。
不可解な服装で取材に臨む当時の筆者に対しても真摯に対応してくれた辰己英治さん。
30周年でも何らかの形で招待されることに期待!
(TEXT/マリオ高野)
(レポート:SUBARUマガジン編集部)