キャロッセの代表を務める長瀬努氏に聞く
「なぜ、いまハコスカGT-Rなのか?」
東京オートサロン2018の「横浜ゴム」ブースに展示されたハコスカGT-R(KPGC10型スカイラインGT-R)。
所有者は、『クスコ』ブランドで知られる競技用自動車パーツを主体にリリースする「キャロッセ」の代表、長瀬努氏。この話を聞かされたときは驚いた。
というのも、全日本ジムカーナで活躍した長瀬代表と、ハコスカGT-Rとのイメージが合致しなかったからだ。
「高校生のころからレースで速かったハコスカに憧れて、最初に手に入れた愛車が昭和47年式の2000GT。 これがカーライフの原点です。ただし、全然速くなくてガッカリしたことを覚えています」。
長瀬代表のカーライフは基本2台持ち。1台は普段使いのクルマで、もう1台は旧車だそうだ。
若かった頃は、前者はパーツを組んでテスト、後者は文化とか人の想いを楽しむものと区別してきた。現在は2台という枠を越えて、旧車は複数台所有。2台のハコスカにくわえてR32型とR34型のスカイラインも所有と、無類のGT-R好きなようだ。
「ハコスカは5台乗り継いできました。そのうち3台がGT-Rです。もう1台は20年前にレストアし、倉庫に置きっぱなし。入手時は価格が高騰しておらず、AE86と交換して手に入れました」と長瀬代表。
現在、写真のハコスカGT-Rは排気量を2.5リッターに拡大し、ダイレクトイグニッション&12ホールインジェクターを装着。フルチューンのエンジンを電子制御化し、「モーテック」でコントロールしている。
「わたしの考えるチューニングは速さを誇示するものではなく、現代の道路環境でトラブルを起こさず、余裕のある走りを楽しむためのもの。休日の早朝は、妻と一緒に山頂ドライブに出掛けるのですが、キャブ仕様だとグズりますし、低速トルクの薄いS20型エンジンは回転を上げないと思いどおりに走ってくれません。仮に止まってしまった日には妻に怒られちゃいますよ。だったら、現代風にアップグレードしたほうが、安心して乗れると判断しました(笑)」。
なんと、ハコスカのチューニングは奥さまとの快適ドライブが基準だったとは。
そして、現代化を行なうもう一つの理由は乗り手の問題も。大好きな愛車に長く乗り続けるため、老化に合わせたチューングが必要になると語る。長瀬代表のハコスカは、今後のカーライフの楽しみ方を提案しているように思えた。
飾りでなく気軽に走らせるためにモダナイズ
車両は’71年式。この年式に白は存在しないので、レストア時にオールペンされている。車庫保管され、車検間で1000㎞も乗らないからピカピカな状態だ。リヤフェンダーの風切りモールはワックス掛けしにくい理由で取り外し、リアのエンブレムは両面テープで装着。
内装はステアリングが「ダットサン コンペ」を装着する以外は、オリジナルをキープ。
ステアリングコンソール下には軽自動車の電動アシストユニットが装着され、パワステ化を果たす。
心臓部はフルコンで現代風に進化
ダイレクトイグニッションはトヨタ・ヴィッツ用で、インジェクターは「SARD」の12穴だ。また、カムとクランクの信号を拾うカムポジションセンサーは、トヨタの1Gエンジン用とS20デスビとのミックス。「モーテック」はm84を選択。データの吸い上げで故障箇所がひと目でわかるそうだ。
そして、クラッチは「OS技研」のS20型用ツインプレート。LSDはR180&R192用を自社で製作した。
足まわりや補強パーツは市販化を予定
「オリジナルにこだわるのも旧車の楽しみ方の一つですが、パーツ単体の性能で言えば、現在の技術で作られている方が優れているのは間違いありません。好きな愛車に気持ちよく、快適に乗り続けるためにモディファイは必要だと考えております」。